4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行された。法律の柱は次の3つ。

(1)障害を理由に差別的扱いや権利侵害をしてはならない。
(2)社会的障壁を取り除くための合理的配慮をする。
(3)国は差別や権利侵害を防止するための啓発や知識を広める取り組みを行わなければならない。

 障がい者というだけで、正当な理由もなく、民間事業者がサービスの提供を渋ったり、学校への入学を拒否するといった差別的な扱いをすることを禁じた法律だ。ハンディキャップを埋めるために、車椅子での移動をしやすくするような配慮、筆談や点字などコミュニケーションの手段を確保するなどについても触れられており、行政機関には義務化、民間事業者には努力義務が課されることになった。

 ただし、事業者に対して過度な負担を義務化しているわけではなく、障がい者と事業者がお互いによく話し合って解決策を探していくことを求めている。つまり、障害のある人も、そうでない人も、同じ社会で暮らす一員として、一緒に働き、勉強し、文化活動に参加できる社会をつくっていくことが、この法律の目指すところだ。

 今は、若く健康な人でも、いずれは誰もが老いて、身体のどこかに「障害」を抱えながら生きていくことになる。

 「障害者」を差別しない、暮らしやすい社会は、体力の弱い高齢者や子どもにも優しい社会のはずだ。そうした社会をみんなでつくり上げておくことは、いざ自分が「障害」を抱えたときに、自分を守る手段にもなる。

 現在は、車椅子の手助けなどの合理的配慮は、行政だけにしか義務付けられていない。だが、障害のある人が本当に暮らしやすい社会をつくるためには、民間の店舗、交通機関などあらゆる場面での配慮が必要だ。そして、それは個人の意識においても問われることになる。障害者差別解消法が目指す社会の実現は、私たちひとりひとりの行動にかかっているのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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