4月14日、16日未明に発生した熊本地震に対して、国は4月25日の閣議で「激甚災害」の指定を行ない、翌26日に交付・施行した。

 激甚災害は、被災地域に著しい被害を出した大地震や台風などで、復興や復旧のための国による財政支援が必要だと判断された災害のことを指す。「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)」(1962年施行)に基づいて、政令で指定されることになっている。

 国の中央防災会議の答申を受けて、首相が指定し、予算などの適用措置をとることで、被災地の早期の復旧や生活再建を支援する。激甚災害に指定されると、特別措置として、道路や河川、学校などの公共土木施設の復旧、仮設住宅の建設などを行なう際に国の補助率が嵩上げされ、新たな補助なども受けられる。また、地元の中小企業への貸付制度が設けられ、雇用保険の給付にも特別の措置がとられる。

 今回の激甚災害指定に伴う災害復旧事業の見込額は、4月20日時点で、公共土木施設が2811億円、農地は50億円、中小企業関係が1600億円。28年度の補正予算に組み込む予定で、国は被災地の生活再建や仮設住宅の確保を支援する。

 このように、激甚災害に指定されると、被災自治体は少ない負担で復旧事業を行なえるようになる。熊本地震でも、発災直後から蒲島郁夫(かばしま・いくお)県知事が早期の激甚災害指定を要請したのは、国による支援の約束を取り付けたかったからだ。

 今回の震災では、激甚災害指定までに時間がかかったことを非難する声も出た。これに対して、河野太郎防災担当大臣は「災害救助法と激甚災害指定を間違えるような、ルールを知らない議員が言っている」と取り合わなかった。

 たしかに、大災害が起きたときの避難所や仮設住宅の設置、被災者の救出や医療、食料品や衣類の配布などの緊急的な救助は、「災害救助法」のもとで行なわれる。今回の熊本地震でも、発災翌日には熊本県全域に災害救助法の適用が決定しており、その点では政府の対応が後手に回っているとはいいがたい。

 だが、被災地域では、一日も早い復旧・復興を願うものだ。予算の裏付けがなければ復旧工事の青写真も描けない。道筋をつけるために、地元自治体が激甚災害の早期指定を願うのは当然のことで、国はその思いを汲んで対応する必要があるだろう。

(編集部注)熊本地震は大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定、5月13日に施行。これにより地方自治体が管理する道路などの復旧工事を国が肩代わりすることが可能になり、自治体が被災者支援などに専念できることが期待される。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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