最近のネットニュースでは、テレビ・ラジオでの発言、ツイッターでの芸能人のつぶやきなどをそのままコピー&ペースト、「コピペ」するだけの記事が散見される。いわゆる「コピペ記者」の問題だ。

 一応はコピペ記者に代わってエクスキューズする。ネットはとにかく即時性が大事である。だから、発言内容をただ文字に起こす仕事にも、あきらかにニーズが存在している。実際、あまりテレビを視聴する時間はない、しかし影響力のあるタレントのコメントはとりあえずおさえておきたい、というなら、コピペ記事は重宝する。情報があふれかえっている現代では、これも一つの手段である。

 だが番組の送り手はおもしろくないだろう。苦労して作った内容のイイトコドリをされている。それに必ずしも宣伝として視聴率に結びつくわけではないのだ。ラクをして儲けるなんて、という気持ちにもなる。ただ、おそらく、こうした記事の原稿料は安い。コピペ記者に依頼する側にも「時間のかかる仕事ではない」という意識がある。この件でそれなりの利益を得ているのは、記者ではなく情報の配信側だけだ。この点はおさえておきたい。

 何よりいちばんの問題は、コピペ記事では発言の前後のトークの流れが「無視」されるということだ。ネタ元の番組とコピペ記事とを見くらべると、あきらかにニュアンスが違って読めるものが多すぎる。記事づくりが性急すぎて、「この部分だけ取り出したら誤解を生むのではないか」という配慮が足りないのだ。勇気ある立派なコメントが、ネット上では乱暴な発言としてひとり歩きすることもある。

 さらに、番組の中でタレントは、明らかに「ボケ」として、番組の中の「キャラ」としてしゃべる場合も多い、という点が理解されていない。ネットユーザーは、このあたりのリテラシーを身につける必要があるのではないだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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