ブラジルのリオデジャネイロ五輪の開幕まで、約2週間となった。

 だが、中南米で感染が広がるジカ熱への不安から、男子ゴルフの松山英樹選手など出場を取りやめる選手も出てきている。

 ジカ熱は、ジカウイルスをもった蚊に刺されることで感染する病気で、最近ブラジルをはじめとした中南米での流行が確認されている。
 感染すると、軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などの症状が現れるが、全員が発症するわけではなく、かかっても症状が軽くて気がつかないこともある。

 ただし、妊娠中の母親がジカウイルスをもった蚊に刺されると、お腹のなかの胎児が先天性ジカウイルス感染症になり、小頭症などの先天性障害を患う可能性がある。

 小頭症は、脳の成長が阻害されて、頭蓋や大脳半球が極端に小さい状態になるもので、多くのケースで運動機能や知能に障害が現れる。実際、流行地のブラジルでは、妊娠中にジカウイルスに感染したことが原因と見られる小頭症の赤ちゃんが多く確認されている。

 現時点では、ジカウイルス感染症を予防するワクチンはないので、日本の厚生労働省は妊婦や妊娠の可能性のある人に対しては、流行地域への渡航を控えるように注意を促している。

 やむをえずに渡航する場合は、長袖、長ズボンで肌を露出しないようにしたうえで、虫除けスプレーなどを利用して、蚊に刺されないような対策をとる必要がある。また、性行為によって、男性から女性パートナーへの感染事例も報告されているので、性行為を控えるか、コンドームの使用を呼びかけている。

 ブラジルは、リオ五輪の開催期間中は冬なので蚊の媒介による感染率は低くなると、選手や観光客に対して冷静な対応と訪問を呼びかけており、世界保健機構(WHO)も五輪開催による国をまたいだ感染拡大のリスクは非常に低いと報告している。

 だが、今年2月、ブラジルに滞在していた10代の日本人男性が、帰国後にジカ熱に感染していることが確認されており、渡航による感染リスクはゼロではない。人の行き来もグローバル化している今、なにかのきっかけで感染症が爆発的に広がる可能性は否定できない。

 4年に一度のオリンピックが、ジカ熱騒動で終わらないことを願いたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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