「中央最低賃金審議会」(厚生労働相の諮問機関)は2016年7月28日、都道府県別の最低賃金(時給)について全国平均の引き上げ額の目安を24円(3%)とする答申を厚労相に提出した。24円という数字は、目安を時給で示すようになった2002年以降で、最大の上げ幅である。この目安を参考に各都道府県の「地方最低賃金審議会」が、それぞれ都道府県ごとの最終的な引き上げ額を決定する。目安通り決まれば、全国平均の最低賃金はそれまでの798円から822円にアップし、すべての都道府県で700円超となる。

 最低賃金は、労働者の生活安定をはかるために定められた賃金の最低額。最低賃金法に基づく。労働市場における、いわばセーフティーネットとの位置づけだ。

 使用者(雇用主、会社、企業)には最低賃金以上の支払いが義務付けられている。産業や職種に関わらず、すべての労働者に適用される。毎月、実際に支払われる賃金から一部賃金(通勤手当、家族手当など)を除いたものが対象である。

 アベノミクスを旗印に掲げる安倍政権は2020年頃に、名目国内総生産(GDP)について、現在の約500兆円を600兆円に増やすことを目標に掲げている。600兆円の目標達成のためには、消費の底上げが必要。そのためには、最低賃金を年ごとに3%引き上げようとの判断がある。

 ただ、賃金を支払う側、とりわけ経営が苦しい地方の中小企業には3%の引き上げ幅に波紋が広がっている。

 そもそも3%には実際の経済成長率と大きなかい離があるからだ(編集部注:日本の実質経済成長率は2016年1-3月期0.5%、内閣府発表)。そのため、「慢性的な人手不足も加わって、とても経営が成り立たない」「最低賃金は、市場の動向を反映して決めるべき。政府が介入してやるものではない」との声も出ている。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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