大雑把な直訳をすれば「アブ(abs)=腹筋」「クラックス(cracks)=割れ目」という意味で、本来は「腹直筋と腹斜筋を鍛えることによって、縦に走る3本の腹部ライン」のことを指すらしい。

 例によって(?)欧米のセレブやモデルあたりからもてはやされた新しい腹筋スタイルで、「シックスパックのようなバキバキの筋肉ではなく、しなやかさを重視する」という観点から、おもに女性のあいだで話題になっているのだそう。

 たしかに、この3本線が自然に入る女子の腹部は見た目もセクシーで、男子からすれば「ゼヒどんどん露出してください!」といった感じだが、いつの間にか“意訳”され、最近は「中央部の1本ライン」だけがフィーチャーされて、コレのみを浮き出させるよう躍起になって筋トレを行なう女性が急増中なんだとか……?

 ちなみに、この“中央線”は、解剖学的には「腹白線」と呼ばれ「内臓や背中を守るために腹部をホールドしている結合組織。真ん中に大きな割れがあると、ある種の生物力学的な機能不全を引き起こしかねません」「多くの場合、遺伝によるものなので、努力して手に入れるものではないのです」(ロンドンのフィットネスクラブ『Bodyism』の創設者、ジェームズ・ダイガン氏)といった警告的な意見もある。妙な拡大解釈から、無茶なトレーニングやダイエットをみずからに課し、「張りのある肌」や「楽しい食事のひととき」……などを犠牲にする真似だけはくれぐれも慎んでもらいたい、と男子サイドは切実に願っている。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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