家電業界の景気は決してよろしくない。一方では新興のメーカーの商品、たとえば以前に紹介したバルミューダのトースターなど、着実にヒットはある。決して安くない価格帯にもかかわらずだ。大手もこの時流を察知し、保守性を脱しようとしている。家電のニーズが変わってきたといえるかもしれない。

 いま、持っているだけで人に自慢できる、ステータスの高い家電が人気を集めている。これらドヤ顔が出てしまうような家電は、俗に「ドヤ家電」と呼ばれる。日経MJが発表した2016年上半期ヒット商品番付にもランクインした。彼氏・彼女をはじめて部屋に入れたとき、相手にアピールできる側面(ちょっと自意識過剰っぽいが)から、「モテ家電」ともいうそうだ。

 エスプレッソマシンや赤外線ロースター、蚊取り機能付き空気清浄機……。ドヤ家電自体、あるいはその機能性は、生活に絶対的に必要なものではない。だがオシャレで、ふだんの暮らしのステージを高める。かつてクルマを持っていることが「ファッション」として重要だったように、いまは家電が「ファッション」なのだといえるだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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