近年、日本でも「フットパス」と呼ばれる人が歩くための小径(こみち)の整備が進んでいる。

 フットパスは、田園地帯や森林、伝統的な町並みなどを楽しみながら歩くことを目的とした歩行用の道路。発祥はイギリスのマンチェスター地方で、自由に散策する権利を求める市民が、狩猟用の私有地に侵入した「キンダースカウト集団侵入事件」に端を発したものだ。この出来事を機に、フットパスの原型である歩行用の道路が作られるようになり、現在では総延長22.5万キロメートルものフットパスがある。

 1990年には、優先通行権法が制定され、指定された地域では私的所有地や森林組合などの管理する道路でも、一定のマナーを守れば誰でも自由に通行できるようになった。

 日本でも、1990年代から、北海道、山形、茨城、東京、山梨、熊本などでフットパスが作られるようになったが、こちらは町づくりの一環としての意味合いが強い。地域に根付く産業によって作られた景観、住民たちが大切に育んできた自然を楽しみ、身近に感じられる道路をフットパスとして整備してルートマップや道標を作っている。

 フットパスには、それぞれの地域の文化や歴史を知るスポットが盛り込まれていることが多いため、観光客には新鮮さを与え、地域住民も自らが暮らす土地の魅力を再発見できる。

 フットパスのルートには、私有地のほか、地域の人々が共同で守り続けてきた伝統的な場所もある。そのため、決められたルートを守り、ゴミは必ず持ち帰るのがマナーだ。その土地と景観を守り続けてきた人々への敬意を忘れず、フットパスを楽しみたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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