東京都には他の道府県に類を見ない「慣例」がある。政党復活予算である。創設はなんと、東龍太郎(あずま・りょうたろう)都政(1959~67年)にまでさかのぼるとされる。

 その概要はこうだ。

 都は例年、1月に新年度の予算原案を発表する。しかし、この中には後に、上乗せする約200億円分が含まれていない。200億円分は、都議会各会派の復活要望を受け、予算案に積み増しされ、そこで予算案は確定するのだ。東京都の一般会計予算は約7兆円。それと比べれば「200億円は少ない」との指摘がある。しかし、都議1人(都議会定員127)あたり約1億5750万円。業界団体に「でかい顔」ができる。ちなみに2016年度は、商店街活性化事業や特別養護老人ホームの経営支援事業、私立学校への補助金などが復活した。政党復活予算の狙いは、都政で都議会の存在感を業界団体に示すことにある。ひいては、都議たちの集票、選挙対策にも通じるとされる。

 政党復活予算について、小池百合子都知事が、2017年度予算編成での廃止を打ち出した。小池知事は記者団に対し、廃止の理由について「復活予算は(都議会にとって)白紙小切手で使える予算だ」と指摘、廃止することで予算編成作業の透明化を強調する。

 これに対し、都議会最大会派の都議会自民党からは、反発の声があがった。

 対抗する形で小池知事は予算編成に際し、自ら業界団体にヒアリング。しかもオープンな形で行ない、「都政の見える化」をアピールした。

 都民からすれば、政党復活予算は、見えにくい。都議会自民党側には「われわれ都議会も民意を代表している」との理屈もあるだろうが、「見える化」の小池知事の主張に理があるのではないか。

 ただ、政党復活予算の廃止は、小池都知事の天敵、都議会自民党を弱体化させるという政治的思惑があることも確かだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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