ノロウイルスの感染が全国的に広がっている。

 国立感染症研究所の発表によると、2016年12月12~18日の1週間のノロウイルスによる感染性胃腸炎の感染者数は全国で6万6015人(定点医療機関からの報告)。直近5年間でノロウイルスが大流行した2012年のピーク時に迫る水準となっているため、この年末年始は保健所の指導によって餅つき大会を自粛する地域も出たようだ。

 ノロウイルスに感染すると、24~48時間の潜伏期間を経て、急性胃腸炎を発症する。おもな症状は、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などで、まれに発熱することもある。発熱は軽度で、通常は嘔吐や下痢の症状も2~3日で回復する。

 ただし、感染後2週間程度は便からウイルスが排出されており、それが感染を広げる原因のひとつとされている。

 現状では、ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬やワクチンはなく、治療は対症療法が中心になる。体力があり、ふだん健康な人であれば、時間の経過とともに治っていくので心配はないが、乳幼児や高齢者、障害のある人などは脱水症状を起こしたり、吐瀉物を喉に詰まらせたりして窒息することもある。

 乳幼児や高齢者などが感染した場合は、水分と栄養の補給を行なうように見守り、脱水症状がひどい場合は、病院で輸液(点滴)を行なうなどの治療が必要になることもある。

 重症化による辛い思いをしないためには、なんといっても感染しないのがいちばんだ。

 ノロウイルスの感染経路は、ほとんどが経口感染だ。ノロウイルスが含まれる便や吐瀉物による二次感染や空気感染、人から人への飛沫感染、感染者が調理したものを食べることでの感染などがあげられる。

 とくに、子どもが感染して、室内などで嘔吐した場合は、吐瀉物による空気感染で家族に感染が広まることもある。できるだけ感染を広げないためには、嘔吐したものには直接触らず使い捨てのペーパータオルで集めて、嘔吐した場所は次亜塩素酸溶液で拭き、使ったものはきちんとビニール袋などに入れて処分するようにしたい。また、嘔吐物を処理する人は、使い捨てできる手袋やマスクを使い、終わったら丁寧に石鹸で手を洗うようにしたい。

 また、家庭での食事は、症状が出ている人はできるだけ調理に加わらないようにして、食器や箸などの共用は避けるのが賢明だ。

 ノロウイルスは、11月から2月の冬の時期に流行する。今年も、しばらくは感染への警戒が必要だ。トイレのあとには、石鹸で丁寧に手を洗い、外出したあともうがいや手洗いを忘れないこと。

 感染予防の基本を守り、この冬も体調を崩さずに冬を乗り切るようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
ジャパンナレッジとは 辞書・事典を中心にした知識源から知りたいことにいち早く到達するためのデータベースです。 収録辞書・事典80以上 総項目数480万以上 総文字数16億

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。 (2024年5月時点)

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る