2016年に公開された映画のランキングが各誌・各メディアで出そろった。『キネマ旬報ベスト・テン』第1位など、アニメ映画『この世界の片隅に』が席巻している。こうの史代(ふみよ)・原作、片渕須直(かたぶち・すなお)・監督による本作は、11月12日の公開とともにSNS上で高い支持を受け、客足を伸ばしていった(約3か月の興行で興収20億円を突破)。ヒロイン・すずを演じたのん(能年玲奈(のうねん・れな))は、芸能界のむずかしい事情から、多くのメディアで宣伝協力を得られなかった。だが、その熱演はたしかに観客の心を打った。のん無しでこの成功はあり得ただろうか。
良質なものが売れるとは限らない、それが現実であろうが、小規模公開からスタートしたコノセカ(一部のマスコミにおける『この世界の片隅に』の略称)は今回、みごとに社会現象化した。異例のヒットの理由については、先に述べたヒロインのハマりようなど、様々な分析がある。当時の庶民の生活描写や、建築物などのディテールなど、「何度も観て確認したくなる」といった視点からのアプローチも多い。
登場人物のなめらかな動きにも、アニメーション技術のこだわりがある。もちろん、なにもテクニックを見せびらかしたいわけではない。キャラクターたちが画面の中に生きている「実感」のようなものを表現するためだ。そのための手間を惜しんでいない。いろいろとビジネス的(予算的)には怖い選択をしているだろう。だが結果として、コノセカは興行的にも結果を残したのだからおそれいる。片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』が、打ち切り寸前から口コミで逆転した記憶がスタッフの中にはあったかもしれない。
もう一つ、送り手以外からみたヒット理由を挙げるとすれば、やはり現状の世界の不穏な雰囲気であろう。戦争を知らない世代も、「知りたくない」世代というわけではない。漠とした世情への不安は、若者を無意識的に劇場に向かわせているのではないか。笑いの要素も多いエンターテインメントながら、日常が戦争に振れるとはどういうことか、声高でなくとも伝わってくるのが『この世界の片隅に』という作品であった。
良質なものが売れるとは限らない、それが現実であろうが、小規模公開からスタートしたコノセカ(一部のマスコミにおける『この世界の片隅に』の略称)は今回、みごとに社会現象化した。異例のヒットの理由については、先に述べたヒロインのハマりようなど、様々な分析がある。当時の庶民の生活描写や、建築物などのディテールなど、「何度も観て確認したくなる」といった視点からのアプローチも多い。
登場人物のなめらかな動きにも、アニメーション技術のこだわりがある。もちろん、なにもテクニックを見せびらかしたいわけではない。キャラクターたちが画面の中に生きている「実感」のようなものを表現するためだ。そのための手間を惜しんでいない。いろいろとビジネス的(予算的)には怖い選択をしているだろう。だが結果として、コノセカは興行的にも結果を残したのだからおそれいる。片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』が、打ち切り寸前から口コミで逆転した記憶がスタッフの中にはあったかもしれない。
もう一つ、送り手以外からみたヒット理由を挙げるとすれば、やはり現状の世界の不穏な雰囲気であろう。戦争を知らない世代も、「知りたくない」世代というわけではない。漠とした世情への不安は、若者を無意識的に劇場に向かわせているのではないか。笑いの要素も多いエンターテインメントながら、日常が戦争に振れるとはどういうことか、声高でなくとも伝わってくるのが『この世界の片隅に』という作品であった。