祇園の中でも花街の風情を色濃く残す巽橋(たつみばし、東山区)の一角。その傍らで、遊宴の地の歩みを昔から見守ってきた芸事上達の神が巽稲荷である。京都御所南東の辰巳の方角にあることから「辰巳大明神」と呼ばれ、「辰巳稲荷」や「祇園のお稲荷さん」などの愛称で知られている。
御祭神は、巽橋にもともと棲んでいた狸だという。昔々、橋に棲みついた狸は、ここを通る舞妓や芸妓などを化かし、白川の水の中を歩かせたりして、住人たちを困らせていたそうだ。皆は困り果て、橋の片隅に祠を建てて狸を祀ったところ、通行人が惑わされることはなくなったという。以来、地域の守り神として大切にされている。年に四度ある神事には、伏見稲荷大社から神官がやってくるそうだ。ふつうは「お稲荷さん」といえば、狐だとばかり思っていたが、実は狸が祀られていることは少なくない。京都にもいくつかあるのだが、狸が神の使いとして大切にされている四国に行くと、狸の社が数多くあるそうである。
桜の季節、石畳の道の祇園の新橋通りと緩やかに流れる白川沿いの白川南通りが合流する巽稲荷付近は、時代を忘れてしまうかのような風情が漂う。並び立つ家々は、伝統的な茶屋町の二階建てで、現在残されている建物の多くは、1865(元治2)年の大火の後に建て直されたものだ。一階部分は紅殻格子(べにがらごうし)に駒寄せを巡らせ、二階は座敷の造りになっている。二階部分の正面に縁を張り出して簾を下ろす様式が、花街ならではの情趣をしみじみと醸し出している。
御祭神は、巽橋にもともと棲んでいた狸だという。昔々、橋に棲みついた狸は、ここを通る舞妓や芸妓などを化かし、白川の水の中を歩かせたりして、住人たちを困らせていたそうだ。皆は困り果て、橋の片隅に祠を建てて狸を祀ったところ、通行人が惑わされることはなくなったという。以来、地域の守り神として大切にされている。年に四度ある神事には、伏見稲荷大社から神官がやってくるそうだ。ふつうは「お稲荷さん」といえば、狐だとばかり思っていたが、実は狸が祀られていることは少なくない。京都にもいくつかあるのだが、狸が神の使いとして大切にされている四国に行くと、狸の社が数多くあるそうである。
桜の季節、石畳の道の祇園の新橋通りと緩やかに流れる白川沿いの白川南通りが合流する巽稲荷付近は、時代を忘れてしまうかのような風情が漂う。並び立つ家々は、伝統的な茶屋町の二階建てで、現在残されている建物の多くは、1865(元治2)年の大火の後に建て直されたものだ。一階部分は紅殻格子(べにがらごうし)に駒寄せを巡らせ、二階は座敷の造りになっている。二階部分の正面に縁を張り出して簾を下ろす様式が、花街ならではの情趣をしみじみと醸し出している。