中国の立法機関。憲法上は「最高国家権力機関」との位置づけで、日本の国会に相当する。毎年3月の開催。2017年は3月5日に開幕した。構成するのは省、直轄市などの地方自治体、軍などから選出された代表(任期5年)で総数は約3000人。

 では何をするかというと、立法機関として憲法改正、法律制定・改正、予算の審議・承認などを行なうほか、国家主席、首相などを選出する権限がある。もっとも、中国共産党の追認機関でしかないのが実情だ。

 とはいえ、内外のメディアに注目されるのは、首相による政治活動報告が行なわれ、中国政府の施政方針や経済成長率の目標値が公表されるからだ。

 今年の全人代の政府活動報告では、2017年の成長率目標をGDP(国内総生産)比「6.5%前後」に設定すると発表した。

 2016年の「6.5~7%」から引き下げたことになる。従来の「高度成長路線」から「安定成長路線」への政策転換を改めて明確にした形だ。

 政府活動報告でとりわけ目を引いたのは、習近平総書記を中国共産党の「核心」と位置づけたことだ。これまで中国共産党政権で、最高指導者を「核心」と呼んだのは、毛沢東、鄧小平、江沢民の3氏だけ。このことは、習近平総書記への権力集中がさらに進んだことを意味する。

 このほか政府活動報告では、軍事力を強化し、「海洋強国」のさらなる推進を目標に掲げた。これまで軍事予算は予算案報告に明記していたが、2017年については、中国財政省がメディアの問い合わせに個別に口答で回答する形を取った。異例のことだが、前年比7.0%増の1兆443億9700万元(約17兆2000億円)と報じられた。経済成長率より軍事予算の伸びが上回ったことになる。

 全人代の次に関心が集まるのは、2017年秋に開かれる中国党大会。毎年開催の全人代と違ってこちらは5年に1度の開催だ。

 予想されるのは指導部メンバーの大幅な入れ替えだ。「核心」となった習近平総書記が人事でどんな差配を行なうのだろうか。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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