教育勅語は、戦前の大日本憲法下で、天皇(主権者)が日本国民(臣民)に対し、守るべき徳目を示した教育方針。1890(明治23)年に発布された。起草にあたったのは文部大臣などを歴任した井上毅(こわし)。

 いま教育勅語に注目が集まるのは国有地売却を巡る疑惑で連日、国会で取り上げられた学校法人「森友学園」が、その運営する幼稚園で、園児に唱和させていたからだ。

 その内容は、親に孝行、夫婦仲睦まじく、兄弟姉妹仲良く等々、人間として至極まっとうな行ないを求めたものだ。

 しかし、その一方で、「危急の大事が起きた場合、皇室・国家のために尽くす」ことを国民に対し求めている。戦前の教育現場では、式典で校長がこれを奉読し、「修身」の授業でも、その精神・理念を学んだ。そのため、軍国主義教育の土台となったとの批判がある。

 戦後、「主権在民」の日本国憲法が施行され、国の教育指針は教育基本法にとってかわった。国会も、1948(昭和23)年に衆参両院で教育勅語の「排除・失効」を確認する決議を採択した。

 現在の政府の教育勅語に対する立場は「法制上の効力は喪失している」(菅官房長官)である。ただし、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」(政府答弁書)という。

 要は「親を大切にするなどの項目もある。適切な配慮の下に教材として用いること自体はなんら問題ない」(菅長官)というわけだ。

 確かに、親孝行や夫婦仲睦まじくは、教育勅語を引用するまでもなく学校現場で教えることはできる。しかし、いまさら教育勅語ではないだろう。復古主義もいいところだ。

 野党は「親孝行などの徳目を隠れ蓑に、主権在民の日本国憲法の理念を危うくする、戦前回帰の動きだ」と批判する。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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