マリーヌ・ル・ペン(48、以下ルペン)は1968年、パリ郊外ヌイイ=シュル=セーヌに生まれた。
父親ジャン=マリー・ルペンは1972年10月にアルジェリア独立反対派など右派勢力を結集して創設した国民戦線(FN)の初代党首で、その三女。
「8歳の時に父を狙ったと思われる爆弾テロに姉と共に巻き込まれ、自宅をダイナマイトで爆破されたうえに溺愛していた犬が巻き込まれて死んでしまう悲劇に見舞われた(犯人は未だに捕まっていない)。またマリーヌは学校ではいじめられっ子であった。父が唱える意見は当時のフランスでは異端と捉えられており、学校では『悪魔の娘』とはやし立てられた。
パリ第二大学で法学の学位を修得した後、弁護士として働いた。2002年『ルペンの世代』代表。『ルペンの世代』は、青年にルペンの思想と業績を宣伝・普及するために設立された組織である。2003年4月国民戦線副党首(定数8名)に選出される」(ウィキぺディア)
2007年に父親は彼女を後継者に推薦し、2011年に党首に就任。反EUを掲げ、EU離脱を問う国民投票を実施すべきだと主張している。2005年の移民による暴動、2015年に起きたシャルリー・エブド事件などで、イスラーム系移民に対する反感が強まっているフランスで急速に支持を伸ばしてきた。
4月23日に行なわれたフランスの大統領選では、左右の既成政党の候補を破り、オランド政権で大統領補佐官、経済相を務めたが議員経験はない39歳のエマニュエル・マクロン候補とともに決選投票に進んだ。
アメリカに続いてフランス版トランプ誕生かと大きな話題になり、トランプ大統領はもちろん、ロシアのプーチン大統領も肩入れする姿勢を鮮明にしていた。
10%超の高失業率と経済の低迷、相次ぐイスラム系テロリストによる爆破事件で、いまや「フランス病」とまでいわれる現状に不満を持った人たちが、「フランスファースト」を声高に叫ぶルペンに一票を投じたが、結果はマクロンが66.1%とルペンの33.9%を大きく引き離し、史上最年少の大統領に選ばれた。
だがルペンは笑顔で敗北宣言をし、政界で異端児されてきた同党は一躍、主要野党の一角に台頭したのである。
もし、ルペンが大統領になったら、日本にどのような影響があるのかについての報道は多くはなかったが、『週刊新潮』(5/4・11号)の「『ルペン』仏大統領なら日経平均大暴落でルンペン気分」は、『新潮』ならではのひねったタイトルの記事だった。
同誌は5月7日の決選投票でルペン大統領誕生もありうる、としてこう続ける。彼女の政策は反イスラムと反EU。当選すれば日本も無傷ではすむまい。パリ特派員はルペンの戦略をこう評価している。
「2年前にルペン女史は父親を党から追い出して、レイシストのイメージを薄めることに腐心して来ました。5年前の大統領選挙では3位となり、政権を脅かす存在になったのです。女史自身は弁護士出身で、これまで2回結婚しており、3人の子供がいる。現在は独身ですが、恋人は国民戦線の副党首です」
フランスはEUの創設国だから、通貨もユーロ。離脱すると一気にユーロが不安定になる。円高ユーロ安が急激に進めば、日経平均株価は急落してしまいかねないと、シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミストが解説している。
マクロン大統領で、日経平均株価も大幅に値上がりした。まずは目出度し目出度しとなるのかというと、そうではないようだ。
高校時代の恩師で25歳上の人妻と大恋愛の末に結婚したマクロン新大統領だが、テロ対策を含めて難問が山積していることはもちろんのこと、6月の総選挙で過半数を得て政権基盤を固めたいところだが、彼が自らの政治運動「前進」(編集部注:5月8日に政党として「前進する共和国」に名称変更)を立ち上げたのは1年前で、公表している公認候補はわずかに14人だけだと報じられている。
前途多難を絵に描いたような新大統領だが、今、フランスで話題になっている本がある。『服従』(ミシェル・ウエルベック著、河出文庫)がそれである。
小説の舞台は5年後の2022年の大統領選。決選投票でルペンとイスラーム同胞党のモアメド・ベン・アッベスが1位と2位になる。
ファシストかイスラム主義者かという究極の選択をフランスの有権者は迫られるのである。
左派社会党と保守中道派の国民運動連合は、ファシストよりイスラム主義者のほうがましだと考え、決選投票でアッベスを支持するように訴える。結果、アッベスが勝利するのだ。
解説で作家の佐藤優(まさる)は、友人のイスラエルの友人の言葉として、フランスの反イスラム感情は根強いから、そんなことはあり得ないが、いずれの政権ができるにせよ、フランスはそれを打倒するレジスタンス運動が起きると答える。
だが、この本がヨーロッパで大きな衝撃を与えているのはなぜか? 友人は「『イスラーム国』への恐怖心と、ヨーロッパ人のイスラーム世界に対する無理解だ」という。
さらに「ギリシャ危機に象徴されるが、EUの通貨統合も危機的状況になっている。一〇年前ならば、EUに共通通貨ユーロが導入されたのだから、次は政治的統合と考えられていた。しかし、現在、EUが経済的、政治的に統合できると考えているヨーロッパ人はいない。EUは再び分解過程を歩み始めている。EUが分解し、ドイツとフランスが対立するようになると再び戦争が発生するのではないかという不安がヨーロッパ人の深層心理に潜んでいる」と加える。
そうなるよりも、イスラム教のもとでヨーロッパの統一と平和が維持されるほうがいいのではないかと、この本の筆者は提示しているのではないか。
こうした、いままでの価値観が崩れた時、たとえばソ連では、忠実な共産党員だったモスクワ国立大学や科学アカデミーの教授や研究者の大多数が、一瞬にして反共主義者になったと佐藤は話す。この本を読むと、人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに脆いものであるかということがわかる。
それに比べて、イスラムが想定する超越神は強いと佐藤は結ぶ。
トランプやルペンのような人間は時代のゆがみにたまたま出てきた泡のようなもので、その先は、人間が絶対服従する創造神を崇める勢力が世界を支配する時代が来るのかもしれない。どこへ行くにしても、今回のフランス大統領選は一つの通過点なのであろう。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
安倍首相は二重人格者である。自分を応援してくれる「日本会議」へのビデオメッセージで、2020年までに憲法改正をやりたい、自衛隊を明文化したいと言い、読売新聞の単独インタビューでも同様のことを言った。そのことを国会で野党に追及されると、あれは自民党総裁としての意見。今は総理だから憲法についてはここでは話さない。自分のいい分は読売新聞に載っているから読んでくれと言ってのけた。これでは国会などいらない。そう思うのだが、いかがだろうか。
第1位 「北朝鮮・金正恩をなぜ暗殺しないのか」(『週刊現代』5/20号)
第2位 「小池都知事の『超豪華クルーザー』に都税20億円が消える!」(『週刊ポスト』5/19号)
第3位 「巨象・三菱重工が東芝みたいになってきた」(『週刊現代』5/20号)
第3位。『現代』によると、巨象・三菱重工が東芝のようになってきているという。
それは、去年、17年3月期には営業利益3500億円を確保すると言っていたのに、4月26日、東京証券取引所が運営する情報伝達システム上に三菱重工をめぐる情報が映し出され、「火力事業の売上高の減少」「商船のコスト悪化」「MRJ(三菱重工が開発している国産ジェット旅客機)の開発費増加」などの損失イベントが次々に起きているために、営業利益が従来予想を下回る1500億円程度になりそうだという見通しに、衝撃が走ったというのである。
なかでも象徴的なのが、半世紀ぶりの国産旅客機と期待されたMRJが、08年の開発開始から5度も納入延期し、「飛ばないジェット機」と化しているそうだ。
それに大株主の三菱UFJフィナンシャル・グループが、三菱重工の保有株数を大きく減らしてきているともいわれる。
売却できる資産もあり、財務的な余力もあるが、本業で稼ぐ力が低下している可能性があり、ここ1年が三菱重工にとって収益力改善の正念場になると見る向きがある。どこもえらいこっちゃ。
第2位。今週の『ポスト』で唯一読みごたえがあったのは、小池都知事と超豪華クルーザー問題である。
このクルーザーはVIP接待用で、20億円もするという。
計画されたのは舛添要一知事時代。来客を迎えるのに民間の施設では格が下がると、五輪に合わせて浜離宮庭園に約40億円かけて「延遼(えんりょう)館」(明治期の迎賓館)を再建することを決定し、来賓をクルーザーで羽田空港からそこまで送迎するため、クルーザー建造計画が持ち上がったという。
だが小池知事になってから五輪予算に大ナタが振るわれ、「延遼館」は凍結されたが、クルーザーは計画通りに続行されたというのだ。
都政を監視する「行政110番」主催者の後藤雄一元都議は、税金の無駄遣いの典型だと批判する。
それに、豊洲や五輪施設については、細かいコストまで開示しているのに、このクルーザーに関しては一言も触れないのが不可解だという。
東京五輪の期間は短い。その間、民間の豪華遊覧船でも借りて済ませることができるはずだ。
まさか、小池にこうした貴族趣味のようなものがあるのではあるまいな。そのうち、私も都知事専用のプライベートジェット機でも欲しいと言い出すかもしれない。
この豪華クルーザー建造も、都議選のテーマにしたらいい。私はもちろん反対だ。
第1位。今週の第1位は『現代』の物騒な記事。アメリカは「金正恩(キム・ジョンウン)斬首計画」はとっくに練り終わっていて、トランプ大統領がゴーサインを出せば、議会の承認なしでいつでも実行できる状態にあるという。
「トランプ政権が、4月上旬に開いたNSC(国家安全保障会議)で示された『有力プラン』は、以下の2つの作戦です」(クリントン大統領時代に米CIA長官を務めたシェームズ・ウールジー)
1つは空爆による暗殺。2つ目は、北朝鮮内部の協力者に暗殺させる方法だという。
この内部協力者に暗殺させる方法は金正日(キム・ジョンイル)時代に数回実行されているというのだ。
04年4月、北朝鮮と中国の国境の街・龍川(リョンチョン)の駅で突如大爆発が起き、1500人以上が巻き込まれたが、これは、この駅を通るはずだった金正日専用列車を狙い、爆破させるものだった。
事前に中国側がこの計画を察知し、列車の通過を早め、予定時刻にダミー列車を走らせたため、金正日は無事だったという。
だがこの斬首計画、もし失敗すれば、金正恩は「即時にせん滅的攻撃を加え、核戦争には核攻撃戦で応じる」と言っているから、全面核戦争になる恐れがある。
そうなれば韓国や日本は、大きな被害を受けること間違いない。
『現代』によると、北朝鮮ではすでに2回も、金正恩を内部で暗殺しようという試みが行なわれているという。
いずれも未遂に終わっているが、そうした内部のクーデターのような格好で金正恩体制が崩れる可能性は大いにあるだろう。
こうした「金正恩斬首」という話は反北の国々で広がっているのかと思っていたら、今回のトランプの北朝鮮への恫喝に対抗するためだろうか、金正恩側から「俺を斬首しに来たアメリカ人を逮捕した」と言い出したのである。
「北朝鮮は6日、米国市民のキム・ハクソン氏を北朝鮮への敵対行為を働いた容疑で拘束した。朝鮮中央通信が7日、伝えた。キム氏は平壌科学技術大学に運営関係者として勤務していたという。北朝鮮が抑留する米国人は計4人になった」(5月8日付朝日新聞より)
北にいる米国籍の人間を「盾」にして、アメリカからの空爆や暗殺計画を防ごうというのだろうか。
北とアメリカの緊張状態はいつまで続くのだろう。こうなれば北も核実験はおいそれとはできまい。トランプは振り上げたこぶしをどこへどのように降ろすのか。
これほどの重大な危機なのに、日本はアメリカに追随するだけで、平和的な解決への道を探ろうという努力はほとんどしていないように見える。
これが安倍政権の限界ということだろうが、日本人が黙ったままでいいのか。憲法改正よりも、日本という国が憲法で謳っている「平和主義」が御題目ではないことを、アジアに、世界に知らしめるために、声を上げようではないか。
父親ジャン=マリー・ルペンは1972年10月にアルジェリア独立反対派など右派勢力を結集して創設した国民戦線(FN)の初代党首で、その三女。
「8歳の時に父を狙ったと思われる爆弾テロに姉と共に巻き込まれ、自宅をダイナマイトで爆破されたうえに溺愛していた犬が巻き込まれて死んでしまう悲劇に見舞われた(犯人は未だに捕まっていない)。またマリーヌは学校ではいじめられっ子であった。父が唱える意見は当時のフランスでは異端と捉えられており、学校では『悪魔の娘』とはやし立てられた。
パリ第二大学で法学の学位を修得した後、弁護士として働いた。2002年『ルペンの世代』代表。『ルペンの世代』は、青年にルペンの思想と業績を宣伝・普及するために設立された組織である。2003年4月国民戦線副党首(定数8名)に選出される」(ウィキぺディア)
2007年に父親は彼女を後継者に推薦し、2011年に党首に就任。反EUを掲げ、EU離脱を問う国民投票を実施すべきだと主張している。2005年の移民による暴動、2015年に起きたシャルリー・エブド事件などで、イスラーム系移民に対する反感が強まっているフランスで急速に支持を伸ばしてきた。
4月23日に行なわれたフランスの大統領選では、左右の既成政党の候補を破り、オランド政権で大統領補佐官、経済相を務めたが議員経験はない39歳のエマニュエル・マクロン候補とともに決選投票に進んだ。
アメリカに続いてフランス版トランプ誕生かと大きな話題になり、トランプ大統領はもちろん、ロシアのプーチン大統領も肩入れする姿勢を鮮明にしていた。
10%超の高失業率と経済の低迷、相次ぐイスラム系テロリストによる爆破事件で、いまや「フランス病」とまでいわれる現状に不満を持った人たちが、「フランスファースト」を声高に叫ぶルペンに一票を投じたが、結果はマクロンが66.1%とルペンの33.9%を大きく引き離し、史上最年少の大統領に選ばれた。
だがルペンは笑顔で敗北宣言をし、政界で異端児されてきた同党は一躍、主要野党の一角に台頭したのである。
もし、ルペンが大統領になったら、日本にどのような影響があるのかについての報道は多くはなかったが、『週刊新潮』(5/4・11号)の「『ルペン』仏大統領なら日経平均大暴落でルンペン気分」は、『新潮』ならではのひねったタイトルの記事だった。
同誌は5月7日の決選投票でルペン大統領誕生もありうる、としてこう続ける。彼女の政策は反イスラムと反EU。当選すれば日本も無傷ではすむまい。パリ特派員はルペンの戦略をこう評価している。
「2年前にルペン女史は父親を党から追い出して、レイシストのイメージを薄めることに腐心して来ました。5年前の大統領選挙では3位となり、政権を脅かす存在になったのです。女史自身は弁護士出身で、これまで2回結婚しており、3人の子供がいる。現在は独身ですが、恋人は国民戦線の副党首です」
フランスはEUの創設国だから、通貨もユーロ。離脱すると一気にユーロが不安定になる。円高ユーロ安が急激に進めば、日経平均株価は急落してしまいかねないと、シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミストが解説している。
マクロン大統領で、日経平均株価も大幅に値上がりした。まずは目出度し目出度しとなるのかというと、そうではないようだ。
高校時代の恩師で25歳上の人妻と大恋愛の末に結婚したマクロン新大統領だが、テロ対策を含めて難問が山積していることはもちろんのこと、6月の総選挙で過半数を得て政権基盤を固めたいところだが、彼が自らの政治運動「前進」(編集部注:5月8日に政党として「前進する共和国」に名称変更)を立ち上げたのは1年前で、公表している公認候補はわずかに14人だけだと報じられている。
前途多難を絵に描いたような新大統領だが、今、フランスで話題になっている本がある。『服従』(ミシェル・ウエルベック著、河出文庫)がそれである。
小説の舞台は5年後の2022年の大統領選。決選投票でルペンとイスラーム同胞党のモアメド・ベン・アッベスが1位と2位になる。
ファシストかイスラム主義者かという究極の選択をフランスの有権者は迫られるのである。
左派社会党と保守中道派の国民運動連合は、ファシストよりイスラム主義者のほうがましだと考え、決選投票でアッベスを支持するように訴える。結果、アッベスが勝利するのだ。
解説で作家の佐藤優(まさる)は、友人のイスラエルの友人の言葉として、フランスの反イスラム感情は根強いから、そんなことはあり得ないが、いずれの政権ができるにせよ、フランスはそれを打倒するレジスタンス運動が起きると答える。
だが、この本がヨーロッパで大きな衝撃を与えているのはなぜか? 友人は「『イスラーム国』への恐怖心と、ヨーロッパ人のイスラーム世界に対する無理解だ」という。
さらに「ギリシャ危機に象徴されるが、EUの通貨統合も危機的状況になっている。一〇年前ならば、EUに共通通貨ユーロが導入されたのだから、次は政治的統合と考えられていた。しかし、現在、EUが経済的、政治的に統合できると考えているヨーロッパ人はいない。EUは再び分解過程を歩み始めている。EUが分解し、ドイツとフランスが対立するようになると再び戦争が発生するのではないかという不安がヨーロッパ人の深層心理に潜んでいる」と加える。
そうなるよりも、イスラム教のもとでヨーロッパの統一と平和が維持されるほうがいいのではないかと、この本の筆者は提示しているのではないか。
こうした、いままでの価値観が崩れた時、たとえばソ連では、忠実な共産党員だったモスクワ国立大学や科学アカデミーの教授や研究者の大多数が、一瞬にして反共主義者になったと佐藤は話す。この本を読むと、人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに脆いものであるかということがわかる。
それに比べて、イスラムが想定する超越神は強いと佐藤は結ぶ。
トランプやルペンのような人間は時代のゆがみにたまたま出てきた泡のようなもので、その先は、人間が絶対服従する創造神を崇める勢力が世界を支配する時代が来るのかもしれない。どこへ行くにしても、今回のフランス大統領選は一つの通過点なのであろう。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
安倍首相は二重人格者である。自分を応援してくれる「日本会議」へのビデオメッセージで、2020年までに憲法改正をやりたい、自衛隊を明文化したいと言い、読売新聞の単独インタビューでも同様のことを言った。そのことを国会で野党に追及されると、あれは自民党総裁としての意見。今は総理だから憲法についてはここでは話さない。自分のいい分は読売新聞に載っているから読んでくれと言ってのけた。これでは国会などいらない。そう思うのだが、いかがだろうか。
第1位 「北朝鮮・金正恩をなぜ暗殺しないのか」(『週刊現代』5/20号)
第2位 「小池都知事の『超豪華クルーザー』に都税20億円が消える!」(『週刊ポスト』5/19号)
第3位 「巨象・三菱重工が東芝みたいになってきた」(『週刊現代』5/20号)
第3位。『現代』によると、巨象・三菱重工が東芝のようになってきているという。
それは、去年、17年3月期には営業利益3500億円を確保すると言っていたのに、4月26日、東京証券取引所が運営する情報伝達システム上に三菱重工をめぐる情報が映し出され、「火力事業の売上高の減少」「商船のコスト悪化」「MRJ(三菱重工が開発している国産ジェット旅客機)の開発費増加」などの損失イベントが次々に起きているために、営業利益が従来予想を下回る1500億円程度になりそうだという見通しに、衝撃が走ったというのである。
なかでも象徴的なのが、半世紀ぶりの国産旅客機と期待されたMRJが、08年の開発開始から5度も納入延期し、「飛ばないジェット機」と化しているそうだ。
それに大株主の三菱UFJフィナンシャル・グループが、三菱重工の保有株数を大きく減らしてきているともいわれる。
売却できる資産もあり、財務的な余力もあるが、本業で稼ぐ力が低下している可能性があり、ここ1年が三菱重工にとって収益力改善の正念場になると見る向きがある。どこもえらいこっちゃ。
第2位。今週の『ポスト』で唯一読みごたえがあったのは、小池都知事と超豪華クルーザー問題である。
このクルーザーはVIP接待用で、20億円もするという。
計画されたのは舛添要一知事時代。来客を迎えるのに民間の施設では格が下がると、五輪に合わせて浜離宮庭園に約40億円かけて「延遼(えんりょう)館」(明治期の迎賓館)を再建することを決定し、来賓をクルーザーで羽田空港からそこまで送迎するため、クルーザー建造計画が持ち上がったという。
だが小池知事になってから五輪予算に大ナタが振るわれ、「延遼館」は凍結されたが、クルーザーは計画通りに続行されたというのだ。
都政を監視する「行政110番」主催者の後藤雄一元都議は、税金の無駄遣いの典型だと批判する。
それに、豊洲や五輪施設については、細かいコストまで開示しているのに、このクルーザーに関しては一言も触れないのが不可解だという。
東京五輪の期間は短い。その間、民間の豪華遊覧船でも借りて済ませることができるはずだ。
まさか、小池にこうした貴族趣味のようなものがあるのではあるまいな。そのうち、私も都知事専用のプライベートジェット機でも欲しいと言い出すかもしれない。
この豪華クルーザー建造も、都議選のテーマにしたらいい。私はもちろん反対だ。
第1位。今週の第1位は『現代』の物騒な記事。アメリカは「金正恩(キム・ジョンウン)斬首計画」はとっくに練り終わっていて、トランプ大統領がゴーサインを出せば、議会の承認なしでいつでも実行できる状態にあるという。
「トランプ政権が、4月上旬に開いたNSC(国家安全保障会議)で示された『有力プラン』は、以下の2つの作戦です」(クリントン大統領時代に米CIA長官を務めたシェームズ・ウールジー)
1つは空爆による暗殺。2つ目は、北朝鮮内部の協力者に暗殺させる方法だという。
この内部協力者に暗殺させる方法は金正日(キム・ジョンイル)時代に数回実行されているというのだ。
04年4月、北朝鮮と中国の国境の街・龍川(リョンチョン)の駅で突如大爆発が起き、1500人以上が巻き込まれたが、これは、この駅を通るはずだった金正日専用列車を狙い、爆破させるものだった。
事前に中国側がこの計画を察知し、列車の通過を早め、予定時刻にダミー列車を走らせたため、金正日は無事だったという。
だがこの斬首計画、もし失敗すれば、金正恩は「即時にせん滅的攻撃を加え、核戦争には核攻撃戦で応じる」と言っているから、全面核戦争になる恐れがある。
そうなれば韓国や日本は、大きな被害を受けること間違いない。
『現代』によると、北朝鮮ではすでに2回も、金正恩を内部で暗殺しようという試みが行なわれているという。
いずれも未遂に終わっているが、そうした内部のクーデターのような格好で金正恩体制が崩れる可能性は大いにあるだろう。
こうした「金正恩斬首」という話は反北の国々で広がっているのかと思っていたら、今回のトランプの北朝鮮への恫喝に対抗するためだろうか、金正恩側から「俺を斬首しに来たアメリカ人を逮捕した」と言い出したのである。
「北朝鮮は6日、米国市民のキム・ハクソン氏を北朝鮮への敵対行為を働いた容疑で拘束した。朝鮮中央通信が7日、伝えた。キム氏は平壌科学技術大学に運営関係者として勤務していたという。北朝鮮が抑留する米国人は計4人になった」(5月8日付朝日新聞より)
北にいる米国籍の人間を「盾」にして、アメリカからの空爆や暗殺計画を防ごうというのだろうか。
北とアメリカの緊張状態はいつまで続くのだろう。こうなれば北も核実験はおいそれとはできまい。トランプは振り上げたこぶしをどこへどのように降ろすのか。
これほどの重大な危機なのに、日本はアメリカに追随するだけで、平和的な解決への道を探ろうという努力はほとんどしていないように見える。
これが安倍政権の限界ということだろうが、日本人が黙ったままでいいのか。憲法改正よりも、日本という国が憲法で謳っている「平和主義」が御題目ではないことを、アジアに、世界に知らしめるために、声を上げようではないか。