食べてみればじゅうぶんに美味しい。だが、網に引っかかっても、廃棄の運命にある魚が多くいる。「見た目がよくない」「ふだんなじみがない」など理由はさまざまだ。漁業関係者のあいだでは「未利用魚」と呼ばれる。近年の傾向として、家庭の食卓に魚料理が上がる機会が減っており、なおさら「わざわざ食べない」ということになってしまう。

 これまで未利用魚は、漁獲量が少なくてロットがまとまらず、市場に出回ることはほとんどなかったといってよい。魚にはかわいそうな表現となるが、捨てるほうがコストがかからないのだ。だが、加工や保存に関する技術が高まって、「未利用」の状況から脱する魚も多くなっている。

 最近では、お財布に優しい海鮮居酒屋などで、未利用魚が積極的に活用されているそうだ。このとき、一般的な魚と風味が近い別の魚、という特徴がポイントになることも。どうにもルックスが「グロい」魚でも、さばいてしまえば味勝負。マイナーなだけで、本来ならば新鮮で美味しい魚がごまんといる。お造りの中に知らない魚が入っていたら、むしろ食べて食の経験値を増やしたいものである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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