シビックテックは「市民のテクノロジー」という意味。ITを通して市民が主体的に地域の身近な課題を解決しようとする取り組みのことだ。……こう書いてしまうと、漠然としていてピンと来ないだろう。

 たとえば、ゴミの収集などがわかりやすいかもしれない。昨今は分別に関してルールが細かくなり、収集日も地域ごとで異なる。これを役所が従来のように印刷物などで広報しようとすると、非常に見にくいシロモノができあがるだろう。だが、スマホのアプリなどが利用できると、地域名を打ち込んだだけですぐに知りたい情報が判明するわけだ。

 シビックテックの概念は、ネットを通したサービスに慣れてしまうと、役所の一律的な対応は時間もかかるし面倒くさい、不満足なサービスに感じる、というところから海外で発展していったようだ。役所とのやりとりを、もっとカンタン・便利に。そのためには、市民がどんな不満を抱いているか、何が必要か、行政が把握する必要がある。また市民のほうも、身近な問題を行政に訴えかけていくべきだ。ネットを利用すれば、困り事を気軽に伝えやすくなるはずである。

 ただ、種々のサービスがすでに存在していても、知られていないから、利用者が少ないという事例も見受けられる。実際のところ、高齢者にとってITはハードルが高いが、いまではタブレットなども手に入れやすく、簡単な講習などですぐに理解できる場合が多い。別に都会に限った話ではなく、高齢者の多い地域や田舎など、日々の情報が共有化されにくい環境こそ、人と人とがネットワークでつながるメリットが大きいものだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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