国営放送とは何だろう。「放送事業の一形態。国有放送ともいう。国家が直接事業を所有ないし運営する放送」(「ニッポニカ」)。そしてウィキペディアには、「国家によって直接運営されている放送局の形態を指す。また、法律や国家権力により、国民に対し強い情報統制をかけて行なわれる放送形態のことを指すこともある」との解説がある。

 国営放送は中国の「中央電視台」やロシアの「モスクワ放送」、北朝鮮の「朝鮮中央放送」などで、イギリスのBBC、韓国のKBSなどは受信料を徴収し、小さいながらもアメリカのPBSは交付金や寄付金で運営しているから、公共放送である。

 では「皆様のNHK」はどちらなのだろう。受信料を強制的に支払わされているから公共放送なのだろうが、日本人の多くは国営放送だと思っているのではないか

 事業予算・経営委員任命には国会の総務委員会や本会議での承認が必要。したがって経営・番組編集方針には時の政権の意向が反映される。総務大臣はNHKに対して国際放送の実施、放送に関する研究を命じることができるなど、国営放送といってもいいくらい、政権の意向に影響されることが多い

 さらに、安倍官邸の強い意向で据えられたNHK前会長の籾井勝人(もみい・かつと)が「領土問題では明確に政府の立場を主張する、それが国際放送の役割。政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」、原発問題についても「住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えることを続けてほしい」と現場に対して発言したことで、政権の御用メディアという立場がより鮮明になった。

 籾井が去って上田良一(経営委員)が会長に選ばれたことで、政治主導から離れるという期待が局内や国民の間にもあったが、これまでのところ「籾井ほどではない」と言う程度の評価でしかない。

 籾井は三井物産出身、上田は三菱商事出身である。商社というのは言葉は悪いが「政商」である。商いは日本の政治の動向に大きく左右されるため、政治との結びつきはどうしても強くならざるを得ない。

 だが、1989年4月に会長に就任した元政治部出身の島桂次(しま・けいじ)は「シマゲジ」といわれ、テレビ朝日の三浦ジャガイモこと三浦甲子二(きねじ)、読売新聞のナベツネこと渡辺恒雄とともに政治家たちにズケズケものを言うメディア三羽烏といわれた。

 私は島と三浦とは何度か酒を飲んだことがあるが、豪快さでは三浦、強引さではシマゲジであった。ナベツネはその2人に比べると紳士的で押され気味であったように思う。

 島から海老沢勝二(えびさわ・かつじ)あたりまではNHK生え抜きで、時の政権の政治介入は今ほど強くなかったのではないか。

 大きく変わったのは安倍晋三が副官房長官の時である。NHKが2001年1月30日に放送したETV特集「戦争をどう裁くか」の内容について、安倍が政治圧力をかけたと大きな問題になった。安倍は否定したが、この際の弱腰なNHK側の反応を見て、安倍はNHKを御しやすいと考え、第二次政権では自分が操ることができる籾井を会長に押し込んだのであろう。

 安倍のNHK操縦はトップだけではない。現場で自分の意のままに動く人間を手なづけることも忘れなかった。

 阿比留瑠比(あひる・るい)産経新聞論説委員、山口敬之(のりゆき)元TBSワシントン支局長と並んで、安倍のポチ記者三人衆といわれるのが岩田明子NHK解説委員である。

 岩田は2002年から安倍番を務め、安倍の私邸(渋谷区富ヶ谷)近くに移り住んで、安倍の母・洋子に特に気に入られているといわれる。

 『文藝春秋』(2016年6月号)で、洋子のロングインタビューをして、その親密さをアピールした。

 プーチンロシア大統領を首相の地元・山口県に招いてトップ会談をする前に、岩田が流した「プーチン来日で北方領土返還」という“フェイクニュース”がメディアの間では大きな問題になった。

 16年9月14日放送のNHK『クローズアップ現代+』(以下、『クロ現+』)に解説委員として岩田が出演し、ウラジオストク会談で安倍首相がプーチンから、ロシアが所有している昭和天皇即位の礼の際に作られた「刀一振り」が贈呈されたというエピソードを紹介し、こう述べた。

 「プーチン大統領は『いろいろな経緯をたどって自分の手元にあったが、こうしたものは祖国へ帰るべきだ』と言った。そこにいた日本政府の関係者も『まるで日本への北方領土の返還を示唆しているようだ』と話していた」

 概ねこのようなことを言って、山口でのトップ会談で北方領土が戻ってくるかのような「空気」を増幅&拡散したのである。

 結果は、3000億円もの経済協力を約束させられただけで、北方領土の「ほ」の字もなく、日本人の期待を裏切ったのであった。

 さらに、昨年の12月18日に放送した『NHKスペシャル』では、岩田記者が安倍首相のインタビューを長々とやり、カメラが入れない首相官邸内での首相秘書官や国家安全保障局長など側近たちとの会談の模様を、音声抜きで放送したのである。

 これをもし、安倍首相が許可していたとしたら国家公務員法違反に問われかねない。また、この映像をNHK側がどこからか独自に入手していて、それを放送するに際して官邸から音声は消せと言われていたら、「放送は何人からも干渉、規律されることがない」という放送法に違反するのではないだろうか

 このことは国会でも問題になったが、政府側は「国家公務員法などに違反する行為はなかったと認識している」と言うだけだった。

 この放送に対して、ジャーナリズムがやらなければいけない「権力監視」という役割を放棄し、記者自身が官邸の広報機関になり下がっていると批判する声が多いのも致し方がないだろう。

 こうした安倍ベッタリ記者が今年3月、NHKから会長賞を与えられているのだから、NHKは安倍直営テレビ「ATT」とでも変えたらいいのではないか。

 加計(かけ)学園の獣医学部新設計画を巡り前川喜平(きへい)前文科省事務次官が内閣府から「総理の意向」などと“圧力”があり、やり取りの文書が残っていると告発した件では、読売新聞が前川前次官の風俗通いを大きく報じたことで、自らが安倍ポチ・メディアであることを内外に表明した。

 当然ながら読売新聞には多くの読者からの批判の声が寄せられ、新聞を取らないという読者も増えているそうだ。

 さらに読売は、前川の記者会見で恥の上塗りをしていた。

 読売の記者が前川に、そうした文書があると明かすのは「守秘義務違反では?」と質問したのだ。

 守秘義務の厚い壁と戦い、それを突き崩して権力の嘘を暴くことこそがジャーナリズムの役割なのに、そんなイロハのイはこの記者の頭にはこれっぽっちもないのである。

 NHKもろくなものではない。『週刊ポスト』(6/23号、以下『ポスト』)の「NHKが黒塗り報道した〈官邸の最高レベル〉への忖度」では、NHKが朝日新聞とともに前川の「内部文書はある」発言をスクープしたのはいいが、『ポスト』によると、その文書をわざわざテレビで映し出したのに、肝心の「官邸の最高レベル」という文言のところが消されていたというのだ。

 これには社内でも「内部文書の価値を無視した報道だ」と批判の声が上がった。

 NHKの中堅局員が憤懣やるかたない様子で語る。

 「文書の所々が黒塗りになっていましたが、文科省の教育課長や内閣府の審議官、参事官などの個人名が黒塗りにされていたのは理解できます。しかし、〈官邸の最高レベル〉の部分は首相の友人が理事長を務める加計学園に対し、官邸側が文科省に認可を迫ったことを窺わせる核心部分です。それがアナウンサーも一切触れずにスルーされた。“これほど内部文書の価値を無視した報道はない”と局内でも議論が起きました」

 『ポスト』によれば、今年の4月に報道局長になった小池英夫の指示だったと言われているそうだ。

 小池は政治部で長く自民党を担当していた。報道の直前、彼は「こんなものは怪文書と同じだ」と言い、その部分を黒塗りして放送するよう指示したという。

 菅官房長官の言い方と同じである。事前に官邸にお伺いを立てていたのかもしれない。さらに、NHKは前川前次官のインタビューをすでに撮り終えているのに、いまだに放送していない。

 だが、NHKの全員が安倍官邸の言いなりになっているわけではない。6月19日の『クロ現+』で、加計学園の獣医学部新設について、首相側近の萩生田(はぎうだ)光一官房副長官が文科省局長に、学部新設について「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年(2018年)4月開学』とおしりを切っていた」などと、首相の意向を伝えていた内容を記録していた文書の存在が明らかになったとスクープしたのである。

 萩生田は全否定し、松野博一(ひろかず)文科相は内容が不正確だったと萩生田に謝ったが、茶番である。これで安倍首相の指示で萩生田が動いたことが99%証明された。

 19日夜には安倍首相が記者会見して、支持率が落ちているからだろう、自らが関与していたと疑われている加計学園問題について「政府への不信を招いた」などと珍しくしおらしく謝罪した。だがそれを帳消しにするスクープをNHKが報じたのだ

 番組には社会部記者と政治部記者が出演し、社会部記者はこの文書が複数の文科省職員のパソコンに保存されていたこと、内容が正しいことを現役の文科省職員が証言していると、このスクープを裏付ける解説をした。

 一方、政治部記者は安倍官邸の代理人のように、内閣府と文科省とでやり取りはあったが、規制委員会の決定には透明性があると、弁護することに終始した。

 さぞ、官邸のポチを任じるNHKの記者たちは、安倍から叱責を受けたことであろう。

 『クロ現+』は永田町とは距離を置く社会部が中心の番組である。新聞社でも政治部を差し置いて政治問題に社会部が出張ってきたときは、世の中を動かす大ネタをつかんだ時である。

 リクルート事件が有名だ。朝日新聞の社会部が動いたが、政治部は「未公開株? そんなことどこの企業でもやっていることだ」と、政界へ広がることなどないと高をくくっていたのだ。

 NHK内部でも、官邸ベッタリの政治部を出し抜き、社会部が表に出てきたことで、朝日、東京、毎日とともに「もり・かけ」問題追及は次のステージへ移るだろう。メディアが独裁政権を倒す。そうなれば、官邸と組んだ政治部が長年牛耳ってきたNHKも大きく変わるかもしれない

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 ようやく安倍内閣の支持率が下がり始めた。森友学園、加計学園問題に共謀罪の強行採決では、いくらおとなしい日本人でも我慢の限界に来たのだろう。橋下徹でさえ、朝日新聞のインタビュー(デジタル版、6月20日)でこう答えている。「加計学園問題のメディアの追及はあっぱれだ。(中略)まさに有権者をバカにしたがゆえのしっぺ返しです」。その上、週刊誌では安倍の体調が悪いという報道が相次いでいる。火のないところに煙は立たない。政権内部の人間が漏らしているに違いない。安倍政権の崩壊が間違いなく始まっている。

第1位 「『安倍総理』深更の重大変調──『結婚30周年』記念日の夜に主治医が私邸に駆けつけた!──」(『週刊新潮』6/22号)/「党幹部も政治記者も色めき立った『総理ががんで9月退陣』怪情報」(『週刊ポスト』6/30号)
第2位 「政局のカギを握る『車いすの副総理候補』谷垣禎一『執念の復活』スクープ撮」(『週刊ポスト』6/30号)
第3位 「宇都宮マンションで『テレ朝看板アナ』をダブルドリブルした『田臥勇太』」(『週刊新潮』6/22号)

 第3位。バスケット音痴の私でも田臥勇太(たぶせ・ゆうた)の名前は知っている。日本人初のNBAプレーヤーになり、昨年スタートした日本のプロバスケットボール B.LEAGUE(Bリーグ)の「リンク栃木ブレックス」のキャプテンを務めている。
 5月27日に行なわれた決勝で「川崎ブレイブサンダース」を逆転勝ちで破り、Bリーグ初代王者に輝いたのも、田臥の力が大きかったようだ。日本に世界と伍すバスケットチームができるかどうかはまだわからないが、宇都宮市内で行なわれた優勝パレードには3万人のファンが沿道を埋めたというから、バスケ人気は出てきているようである。
 その田臥が、優勝パレードが終わっていったん自宅に帰り、その後出かけて再び戻ってきたときは美女をお持ち帰りしていたと『新潮』がグラビアとともに報じている。
 2人は部屋でしばらく過ごした後、近所のダイニングバーで食事し、戻ってきたのが午後10時過ぎ。

 「ようやく電気が点いたのは、2人が部屋に入ってから、2時間半以上が経過」(『新潮』)

 この女性、テレ朝で『スーパーJチャンネル』や『やべっちF.C.』に出演している人気女子アナ・竹内由恵(よしえ)(31)だという。
 翌朝、竹内アナは田臥が運転する車で宇都宮駅まで送ってもらっている。
 『新潮』が言うには、田臥が以前、半同棲生活を送り、結婚目前と言われていたのが、竹内アナの5年先輩で13年に退職した前田有紀(36)だったそうだ。
 『新潮』は、テレ朝の看板アナを2人も相手にしたのは、バスケでいう反則「ダブルドリブル」だと言うが、いいではないか。
 田臥はテレ朝の女子アナが好みなのだろう。田臥は『新潮』の直撃に、竹内との交際を認めているが、結婚は、最近こういう関係になったから、まったく考えていないと答えている。
 173㎝とバスケプレーヤーとしては小柄な田臥だが、これからの日本のバスケットを引っ張っていってもらわなくてはいけないリーダーである。そろそろ身を固めて指導者に専念したほうがいいのではないかと私は思うのだが、余計なおせっかいだろうな。

 第2位。さて、安倍内閣の支持率が落ち始めた。朝日新聞社が17、18日に実施した全国世論調査(電話)によると、「安倍内閣の支持率は41%で、前回(5月24、25日実施)の47%から下落した。昨年7月の参院選以降で最も低かった。不支持率は37%(前回31%)に上がった」
 また共同通信社の調査でも17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率 は44.9%、前回5月から10.5ポイント急落し、不支持は43.1%で8.8ポイント上昇した。
 当然であるが、ようやく世論が実態に追い付いてきたということである。
 ポスト安倍の争いが本格化するのはこれからだが、そのキーマンになるはずが谷垣禎一(さだかず)前幹事長であった。
 谷垣は自転車事故で「頚髄(けいずい)損傷」という重大な傷を負い、手術を経てリハビリ中だが、『ポスト』がその姿をカメラに収めた。
 写真を見ると、まだ回復途上のようだが、頭はしっかりしていて、目撃したところによると、食事も右手で食べ、介護者はついていないという。
 杖を使って歩くリハビリをしているというから、政界復帰は可能ではないかと報じている。
 そうなると、谷垣が所属している宏池(こうち)会(岸田派)と合併して保守本流を再結集しようとしている麻生太郎と、谷垣はどうするのか。
 谷垣が復帰すれば、もともと安倍嫌いな谷垣だから麻生と手を組み、反安倍勢力をつくる。そうなれば、安倍一強時代は終わりを告げるが、果たしてそうなるだろうか。

 第1位。ついに「共謀罪」が強行採決された。野党の昔ながらの牛歩戦術など、かつての社会党のように多くの議員がいた時代ならともかく、政権側への蚊の一刺しにもならない。
 国会前の反対集会に来た人が「負けることに慣れ過ぎている」と言っていた。よく今の日本の“空気”を表している。
 共謀罪を戦前の治安維持法と比べる識者がいる。これに私は頷けない。スノーデンが暴露したNSA(国家安全保障局)を持ち出すまでもなく、現代はもはや超監視社会である。どこかで読んだが、歌舞伎町には何十台という監視カメラが設置され、ラブホの出入りも撮られているそうだ。
 顔認証を使って、前川喜平と入力すれば、歌舞伎町でうろうろしている前川の映像は瞬時に権力側の手に入る。GPSでその人間の行動を24時間フォローすることもできる。メール、ツイッター、Facebookはもちろん、NTTは認めないだろうが、通話記録も録音されていることは、通信関係者にはよく知られている。
 昔のように、その人間を尾行したり、周りの聞き込みなどしないで、その人間の行動や考えを、瞬時に手に入れることができる時代である。
 盗聴法、個人情報保護法、共謀罪の成立で、作家の城山三郎が心配していた戦前以上の警察国家の完成である。だから安倍は何としてでもやりたかったのだ。
 「加計学園問題で野党の追及から逃れるために早く国会を閉会したかった」などと朝日新聞(6月15日付朝刊)が社説で書いているが、事はそんな生易しいものではない。「民主主義はどこへ行くのか」(同)ではなく「かくして民主主義は死んだ」と書くべきではないか。
 世論で安倍政権を倒せないなら、嫌な言い方になるが、安倍の変調に期待するしかないのかもしれない。
 『新潮』が6月9日、安倍夫妻の結婚30周年を祝った夜、10時過ぎに富ヶ谷の私邸に戻った安倍は突然体調が悪化して、慶応病院の主治医が急遽駆けつける騒ぎになったと報じている。
 入院するほどではなかったものの、翌日にメディカルチェックを受けるため、六本木のホテルのフィットネスクラブで汗を流すこととなったという。これは首相動静に書いてあることだが、安倍首相がよくフィットネスへ行くのは、そこに主治医に来てもらって、密かに診察を受けることが多いのだ。
 9日は、菅官房長官の不手際で、前川前次官が告発した文科省にある「総理のご意向文書」で追い詰められていた安倍首相が、再調査すると表明した日である。
 『新潮』によれば、そうしたことに加えて、妻・昭恵のおかげで森友学園問題で窮地に立たされたことで、夫婦仲も険悪なまま。周囲には仲睦まじいような振りをしなければならないため、ストレスが限界まで達して、持病が悪化したのではないかと見ている。まさに前門の虎、後門の狼である。強気に見える安倍だが「夫婦はつらいよ」と頭を抱えているのかもしれない。
 『ポスト』は関西在住のジャーナリストのメルマガで、「安倍首相ががんだ」という情報が出回り、9月退陣ではないかという推測も出てきているという。
 政権末期にはさまざまな情報が飛び交うものだが、安倍もそういう時期になったのであろう。
 ところで“冷血動物”菅官房長官を定例会見でしどろもどろにさせた女性記者が判明した。「終わってみれば、全体の半分程の20分弱が彼女の質問に費やされ、菅長官の顔には『辟易』の二文字が刻まれていたのだ」(『新潮』)。この女性記者、東京新聞の美人社会部記者で、2004年に日本歯科医師連盟の闇献金事件をスクープしている。
 今は加計問題の取材班に入っていて、菅の記者会見に行って、あまりにもほかの記者たちの質問が温いので、菅に質問を浴びせたのだろう。今井照容(てるまさ)責任編集のメルマガ『文徒』によると、望月衣塑子(いそこ)記者で、県警、東京地検特捜部などを経て出産後、経済部に復帰。その後、社会部で武器輸出、軍学共同を主に取材して、私も読んだが、『武器輸出と日本企業』(角川新書)を上梓している。
 だが腹の収まらない菅は、「官邸スタッフに、警察組織を使って彼女の身辺調査をするよう命じました。(中略)取材用のハイヤーをプライベートで使っていたことはなかったかということまで調査対象になっている」(官邸関係者)。先に書いたが、こんなとんでもないことが行なわれているとすれば、言論弾圧・警察国家を象徴する重大問題である。だが、『新潮』はそれほどのこととは考えていないようだ。
 このところ自由党の森ゆうこ議員の質問がすごくいい。特に、文部科学省内で文書を流出させた職員が判明した場合、告発した人物を守るべきだと主張し、元ヤンキーの義家弘介(よしいえ・ひろゆき)文部科学副大臣の「処分の可能性あり」という発言を引き出した。「告発者を守るっていえないんですか?」と迫る森、怯えさえ見せる義家。「報復をしようという動きがあったら私は許さない」「守るために戦う」と森の決め台詞。彼女と民進党の山尾志桜里(しおり)が組んだら、安倍を崩せると思う。元クラリオンガールより何倍もいい。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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