高校野球の応援ソング。原曲は、1990年代にヤマハが『PSR-740』などのキーボード・ユーザーのために配布していた“練習曲”であるらしい。それを、2017年・夏の甲子園出場を2年ぶりに決めた野球名門校『智弁和歌山』の吹奏楽部が、押せ押せムードが出せるようアップテンポにアレンジし、2000年の夏から野球部の試合中に演奏したのが起源とされている。

 ちなみに智弁和歌山がこの曲を使用すれば、不思議とビッグイニングが生まれるため、高校野球界では「魔曲」とも呼ばれている。まるで都市伝説レベルの具体的な根拠には欠けた“逸話”ではあるものの、たしかに智弁和歌山のブラバンが演奏するジョックロックは、せわしないテンポに加え、前乗り気味なリズムアクセント、徐々に空気が張り詰めていく管楽器の被せ方……ほか諸々、守備側からすれば「よりいっそうのピンチ感」を募らせてしまう効果があるのかもしれない。

 実際、「大逆転」のイメージを壊さないため、智弁和歌山ではこのジョックロックを「8回以降、得点圏にランナーが出た時点」で、応援団と吹奏楽部が連絡を取り合い、ここぞとばかりに出し惜しみ(?)をして、演奏を始めるのだという。つまり、こういった緻密かつ狡猾な演出も含め、野球部だけじゃなく学校が一丸となって戦っているわけである。とてもいい話ではないか。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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