デビュー以来、快進撃を続ける将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(15歳)。連勝は29勝でストップしたが、その後も並み居る先輩棋士たちに挑み、白星を重ねている。

 その藤井四段が幼児期に受けた教育法が注目されている。3歳で入園した幼稚園で導入されていた「モンテッソーリ教育」だ。

 モンテッソーリ教育は、20世紀初頭にイタリアの女性医師マリア・モンテッソーリによって考案された教育法だ。障害をもつ子どもの教育に携わり、大きな成果を上げたモンテッソーリは、1907年に設立した貧困家庭の健常児を対象とした保育施設「子どもの家」で、その教育法を確立した。

 モンテッソーリ教育では、人間が完成するのは24歳頃とされ、それまでの発達段階を4段階に区切っている。その教育の目指すところは、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間に育てる」ことだ。

 「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」と考えられているため、教師は「教える人」ではなく、子どもを観察し、自主活動を援助するといった位置づけだ。

 脳生理学に基づき、さまざまな能力の獲得には、それぞれに最適な時期があると気づいたモンテッソーリは、これを「敏感期」と名付けて、その能力を最大限に発揮できるようにする教育方法を考案。それぞれの敏感期に合わせて、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の5つの領域ごとに教具(知育玩具)が用いられるのも特徴だ。

 子どもたちは、集団で同じことをするのではなく、その教具の中から好きなものを自由に選んで遊びながら学んでいく。援助者である大人たちは、子どもが自発的に活動を始めるまで根気強く誘導し、子どもが集中しはじめたら見守るだけだ。

 藤井四段の集中力や直感力の原点は、モンテッソーリ教育を導入していた幼稚園で過ごした3年間にあったようだ。

 通常、教師や親などの大人は、子どもに対して、つい「教える人」になりがちだ。また、大人の一方的な都合で子どもの活動を妨げたり、ついつい手を出しすぎてしまったりすることがある。だが、モンテッソーリ教育では、「子どもはできないのではなく、どうやったらいいか知らないだけなので、子どもたちが100%自己教育力を発揮できるように」環境を整えされすればいいという考えだ。

 過保護になりすぎると、親は子どもの一挙手一投足が心配だ。だが、子どもに自立性を促したいなら、その心配はグッとこらえて、見守る忍耐力が必要なのかもしれない。

 モンテッソーリ教育を受けた著名人は、藤井四段のほかに、アマゾンの創立者ジェフ・ベゾス、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ、俳優で映画監督のジョージ・クルーニー、「アンネの日記」のアンネ・フランクなど、世界に影響力を与えている人が数多く存在する。

 子どもを天才にしたいなら、自主性と感性を育てられるような環境づくりをしてみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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