明治35年(1902)から大正9年(1920)まで、19年間にわたって刊行された『美術新報』は、日本の近代美術をはじめ、ひろく近代文化に関心を寄せる者にとって、欠くことの出来ない情報が満載された雑誌です。収録された記事は、当時の日本を中心としながらも、古今東西の絵画・彫刻・工芸・書道などや、その作家の事績や評判・動向までが不偏不党のジャーナリズム精神の立場で編集・掲載されています。現在のわれわれにとって最も信頼できる使いやすい文献資料といわれる所以です。加えて当時の最新の技術を駆使した図版(写真版)を随所に挿入してビジュアルな誌面づくりを心がけています。旧帝国劇場の壁画など現在では消失して見ることの出来ない貴重な図版も数多く収録されています。
また、「新報」との名称どおり、速報性も兼ね備えており、西洋美術の紹介・移植には、特別力をいれています。この時代一般的に、印象派の作品・作家の紹介は、雑誌『白樺』が抜きんでている印象がありますが、ミレーやロダンを含めて、セザンヌやルノワールなどの紹介は常に『美術新報』が『白樺』の一歩前を歩いていたのです。
たとえば、いち早くロダン『瞑想の人(考える人)』の図版を掲載して紹介(第7巻第20号、明治42年1月)し、その後、森田亀之助「仏蘭西彫刻家ロダン」(第9巻4号:明治43年2月)と題したロダンの評伝を11点の作品図版とともに掲載しているので『白樺』の「ロダン号」(明治43年11月)より9ヶ月も早いのです。
ジャパンナレッジ版では、書籍のように一冊ごとに頁をめくって閲覧することも可能ですし、調査したい語彙を検索し、当該頁を即座に表示することが可能です。本文中のタイトル・作者名などから検索できることはもちろん、本文記事中の語彙も検索キーとして数多く採用しました。
さらに、『Web版美術新報』の底知れない検索データの威力は、各号末にある時報・彙報などの記載から、必要と思われる固有名詞(68,000語余り)を検索出来るようにしたことです。従来の目録作成の一般的な方針では、時報欄・彙報欄などは、それぞれの掲載頁数を書誌目録(検索データ)として採録することが精一杯でした。まして、それらの記載事項から固有名詞を採録することなどは、とても個人の労力では適わないことと思われていました。これらの固有名詞は、人名(古今東西美術家とその作品名、同時代の名家〈文学者・学者・著名人〉)、展覧会動向、美術関連故地(寺社を含む)などが主なものです。これらの検索結果から「いつ・どこで・誰が・何を・どうした」という、いわゆる5W1Hの情報が得られるので、作家の伝記研究・作品の書誌情報の調査には欠かせないものとなっています。
デジタル化された検索データの一つの方向性を先取りした『Web版美術新報』をぜひご利用ください。
底本名 | 美術新報 |
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発行 | 画報社・東西美術社(原誌) |
原誌刊行日 | 明治35年(1902)3月30日~大正9年(1920)12月10日 |
巻冊数 | 300冊 |
公開日 | 2015年6月22日 |
頁数 | 7,348頁 |
記事数 | 23,288件 |
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