安藤更生 著
故国においてはすでに高僧と仰がれたが、仏法宣布の雄志を懐き。惨澹たる苦心を重ねて、盲目となりながらも日本に渡る。朝野に迎えられては奈良仏教の興隆に専念、唐招提寺の開山となる。日本文化に大感化なした唐名僧の偉大な事績とその生涯。鑑真研究の第一人者が、中国側の史料をも縦横に駆使、蘊蓄を傾けて多年の研鑽を披瀝した絶讃の名著。
[奈良][宗教者]
平久保章 著
祖国衰亡の悲哀を体験した明僧隠元は、招きに応じて齢六十三にして東渡し、忽ち朝野の尊崇を受けてはからずも日本に永住し、禅宗黄檗派の開祖となった。彼に対する毀誉褒貶はさまざまであるが、果してその真骨頂は如何。本書は隠元の生涯・人物を丹念に描き、さらにその法系に及ぶ、公正な立場から叙述されたはじめての隠元伝。
[江戸][宗教者]
多賀宗隼 著
平氏から源氏へ、そして北条氏へとめまぐるしい転変を続ける平安末~鎌倉初頭の動乱期に、四たび天台座主となって仏教界・思想界に君臨し、新古今歌壇の雄として六千首の歌什を残す。摂籙九条家の出で深く政治をも解し、名著『愚管抄』により史家としてまた不朽の名を伝える。本書は慈円研究の権威によるそのすぐれた伝記。
[平安|鎌倉][宗教者|文化人]
速水侑 著
一天の下、一法の中、みな仏弟子。誹謗のものも讃歎のものも、ともに往生極楽の縁を結ばん! 『往生要集』の著者源信は、国境を越え、身分の上下を問わず、すべての人々と手を携えて浄土に往生しようと願った。その誠実真摯な七十六年の生涯を、転換期の歴史を背景に生き生きと描く。『往生要集』遣宋一千年を期して成る、初の本格的源信伝。
[平安][宗教者]
佐伯有清 著
日本天台宗の開創者である最澄のあとを継ぎ、その教義を顕揚し、また新たに天台密教を根づかせた円仁。入唐して揚州・五台山・長安における修学と書籍の求得に、ひたむきに心をかたむけたその真摯な姿、会昌の破仏という未曽有な出来事に際会し、幾多の辛酸を嘗め、強靱な精神に支えられた足掛け10年におよぶ苦難の旅。その生涯を克明に描いた伝記。
[平安][宗教者]
河合正治 著
豊臣秀吉の天下統一を授けたものに僧侶安国寺恵瓊があることを知る人は少ない。東福寺の住持で一方伊予六万石の大名になった幅の広い人生を持ち、毛利氏の外交僧として敏腕を揮い、転換期を泳ぎながら、ついに関ヶ原の役に石田三成・小西行長らとともに西軍の主謀者として処刑される波瀾の一生を、確実な史料によりその全貌を描く。
[安土桃山][宗教者|政治家]
久松潜一 著
近世国学の先蹤をなす契沖の生涯と、その学問・和歌とを全体として扱ったもので、著者多年の研究成果の精髄ともいうべき好著。契沖自身の誠実な人間としての生き方を追求するとともに、その学問の歴史的意義や高く評価される次代への影響の解明に力点をおき、さらに彼を取巻く人間関係や社会的背景をも描いてあますところがない。
[江戸][宗教者|学者]
目崎徳衛 著
中世的人間の典型“数奇の遁世者”西行。草庵閑居と廻国修行を多彩に織りまぜつつ、宗教・文学・政治・芸能・故実など、当代文化の全領域に活躍し、古代末期の波瀾の時代に独自の生き方を貫いたその生涯を鮮やかに描写。多くの史実を明らかにした『西行の思想史的研究』の著者が、一般読書人のために平易に興味深く紹介した好伝記。
[平安|鎌倉][宗教者|文化人]
佐伯有清 著
天台座主智証大師円珍の生涯を克明にたどった初の詳細な伝記。当時の政治情況の中で多くの人びととかかわって行動する円珍の姿や唐での留学僧円載との相克を新たな視点から描く興味あふれる叙述。率直、かつ強烈に諸宗派や僧侶の動向を諸著述で批判する姿勢と終生経典の蒐集と校勘につとめたひたむきな人間像に魅せられないではいられないであろう。
[平安][宗教者]
佐伯有清 著
聖徳太子の後身として崇められていた理源大師聖宝。山林修行につとめ、京都の醍醐寺を開創した聖宝の生涯は、空海の創始した真言宗を、身をもって実践し、大成させたことにつきている。時の権力者との結びつきを極力さけ、けっして名聞を求めない聖宝の姿は、魅力的である。説話の世界に生きる聖宝を歴史の世界に蘇らせ、活写した新たな聖宝伝。
[平安][宗教者]
竹内道雄 著
鎌倉時代が生んだ偉大な宗教家。名門公家の家に生まれ、世俗的出世を望まれながらも自ら出家。さらに真実の仏教・師を求めて宋に渡り、帰国後、純粋禅を広め日本曹洞宗の開祖となる。時代背景をおりなすとともに、中国での足跡をもたどりながら、宗教思想・子弟育成などその人物像を克明に描く。最新の史料・研究をもとにした、新稿の決定版なる。
[鎌倉][宗教者]
中川徳之助 著
室町末期の臨済宗一山派の禅僧。五山文芸の後期に活躍した悲運の文人で、漢詩文集『梅花無尽蔵』を残す。近江に生まれ相国寺で修業、旺盛な文学活動を始めるが、応仁の乱で美濃に逃れ、還俗して妻帯し、荒廃した世相に堪えて文学に対する執心を堅持した。太田道灌の招きで江戸を訪ねるなど、幅広い足跡と波瀾に富む生涯を禅林文芸を交え活写する。
[室町|戦国][宗教者|文化人]
奥田勲 著
和歌より低く評価されていた連歌を、「中世詩」の最高域まで磨き上げた室町時代の連歌師。40余歳で登場し、後に9代将軍足利義尚の連歌の師となり連歌界に君臨した。応仁の乱直前に都から関東へ下り、82歳で世を去るまで頻繁に各地を旅して和歌や連歌の会を催し、『新撰菟玖波(しんせんつくば)集』など数々の著作を遺す。連歌文学と生涯の軌跡を併せ描く。
[室町][宗教者|文化人]
五野井隆史 著
江戸時代初期、慶長遣欧使節の大使を務めた仙台藩士。伊達政宗に若くして見出だされ、メキシコとの通商を求めて欧州へ渡った。スペインで洗礼を受けてキリスト教に改宗し、ローマで教皇パウロ五世に謁見したが、使命を果せず禁教令施行の中帰国した。約250年封印され、明治の欧化政策の中で蘇った常長の足跡を再評価し、実像とその時代に迫る。
[江戸][武人・軍人|文化人|宗教者]
山田昭全 著
鎌倉前期の真言僧。流配地伊豆で源頼朝と親密な関係を築き、後白河院との連携を工作して平家打倒に奔走。動乱の仕掛人として荘園の寄進を受け、神護寺や東寺等の復興に努めた。過激な言動で三度の流刑となるが、その根源には鎮護国家の理想をめざす宗教的使命感があった。鎌倉期の仏教文化と政治に大きな足跡を残した荒法師の波乱の生涯を描く。
[平安|鎌倉][宗教者]
今泉淑夫 著
室町中期の禅僧。応仁の乱後、将軍と鹿苑僧録両者の連絡にあたる相国寺蔭凉軒(いんりようけん)主に就任。師季瓊真蘂(きけいしんずい)の後を継ぎ執筆した公務日記『蔭凉軒日録』は、将軍の動静や外交関係、禅宗官寺の人事・仏事など、禅林と世俗の実態をつぶさに語った希有な史料である。足利義政の信任篤く、死の直前まで辞任を許されなかった、室町禅林のキーパースンの生涯。
[室町][宗教者]