今井林太郎 著
関ヶ原の戦に一敗地に塗れ、ついに再起し得なかった三成の末路は悲愴である。秀吉の奉行として縦横の才腕を振っただけに、敵も多く、秀吉の死後はむしろ逆境に追いやられた。豊家の恩顧と、家康打倒との交錯したその心境はどうであったか。本書は四十年の波瀾に富んだ生涯を、正確な史料を通してダイナミックに描き出した。
[安土桃山][武将・将軍]
臼井信義 著
公家を政治の座から浮き上らせ、武家をして事実上日本の支配者たらしめた足利義満。明の皇帝もその国書に義満を「日本国王」といっているが、事実彼はその実権を握ったのである。それでは義満とはどのような人物であろうか。いわば高い所にあった政権担当者はいかに考え、かつ行動したのか。はじめてつづられた義満の正伝。
[室町][武将・将軍]
長江正一 著
将軍義輝および主家細川氏を実力を以て抑え、巧みにこれを操りつつ畿内を制圧して天下の権を専らにしたが、晩年家臣松永久秀に実権を奪われて顚落す。まさに戦国末期の象徴的武将ながら、その身には教養を備え、風流を解し連歌をよくし、また禅に傾倒しキリシタンを保護する等、多彩な面をもつ生涯を激動の時勢と共にリアルに描いた伝記。
[戦国][武将・将軍]
朧谷寿 著
大江山の酒呑童子退治説話で有名な頼光は、多田満仲の長子で摂関家と深く結んで源氏発展の基礎を固めた。関白兼家の新第落成の宴に馬30頭を贈り、道長の新第造営に当っては家具一切を調進して世人を驚嘆させた。その富裕と処世の才幹とを察知できよう。本書は説話等をも巧みに織りまぜて、その生涯を時代の上に浮彫りしたユニークな伝記。
[平安][武将・将軍]
安田元久 著
武士勃興期における時代のシンボルともいえる“八幡太郎”源義家は、同時代の人々からも「天下第一武勇の士」と称讃されていた。鎌倉時代以後の武士世界において、彼は典型的な武将として偶像化され、伝説を生み神格化されていった。しかし現実の義家の姿はどのようなものであったろうか。本書はその歴史的生涯を実証的に追求した興味深い好著である。
[平安][武将・将軍]
海老沢有道 著
貧しい人々の葬儀に自らその棺をかついだ大名。利休七哲の一人として、また茶人としても令名のあった大名。強要されても改宗を肯んぜず、封地を擲って殉教を望み、ついに家族もろとも国外に追放されたキリシタン大名の崇高にして聖なる生涯の伝記。独裁専制の時代にこのような人物が存したことは、日本人の誇りとするに足ろう。
[安土桃山|江戸][武将・将軍|文化人]
福尾猛市郎 著
戦国武将中たぐい稀れなる文化愛好者であり、高い教養と、貿易による富力とによって、当時比類なき「山口王国」を築き上げながら、ついに謀臣の叛逆にあって非業の最後をとげた大内義隆。本書はこの文事を愛しながらも武備を怠ったその運命を描いた異色ある伝記で、悲劇の顚末に至っては読者をしてひとしおの感慨を抱かしめずにはおかない。
[戦国][武将・将軍]
小川信 著
若年より四国・中国の戦陣に活躍し、壮年義詮の遺托により幼将軍義満を輔佐し室町幕府の基礎を固む。一旦政争に敗れ四国に退去したが、分国経営に専念して一族繁栄の基盤を築き、のち再び幕府に迎えられて管領に復帰。幕政を主導し南北朝内乱の終熄に尽した誠実な大政治家・第一級武将の生涯を克明に描き、その豊かな教養等をも併せ説いた好著。
[南北朝|室町][武将・将軍]
奥野高広 著
義昭は室町幕府最後の、しかも織田信長に擁立されのち追われた悲劇の将軍である。古いものと新しいものとが交替した変革の時代に、陋固としてその伝統を墨守しようとあせりつつも、ついに時代の波に押し流されて諸国を流浪する。本書は封建制度と、室町幕府の沿革から説き起し、巧みな筆致で、義昭とその周辺を追求する迫力のある好著。
[室町|戦国|安土桃山][武将・将軍]
多賀宗隼 著
早く京都に進出して貴族生活になじんだ摂津源氏の人々。武人ながら歌人の名をほしいままにし、平治の乱後、源氏凋落裡に平氏と協調してその信頼をつないだ頼政。その彼が、老残の身を挺して平氏打倒に蹶起し、頼朝の挙兵──中世開幕の口火を切る立役者となった。本書はその和歌をも巧みに活用して実像をするどく追及したユニークな伝記である。
[平安][武将・将軍|文化人]
森茂暁 著
佐々木導誉(高氏)は佐々木氏の庶流京極家の出で、近江に本拠を据え、初め北条高時に仕えたが、南北朝動乱期に活躍し、足利尊氏を補佐して幕府の基礎固めに尽力した。多くの国の守護を兼ね、旧来の権威を軽視する「ばさら大名」の典型とされた反面、芸能・文芸に堪能な風流の武将であった。文武両道に秀でた魅力的な風雲児の生涯を描く。
[鎌倉|南北朝][武将・将軍]
柴辻俊六 著
安土桃山時代の深謀に富んだ智将。初め信玄に仕えたが、武田氏滅亡後は徳川家康に属し、信濃国小県郡・上野国沼田領を勢力下に収めて大名となった。家康と対立後は次男幸村と共に豊臣秀吉に仕え、「表裏比興の者」と評されながら、織豊期を必死に生き抜く。その処世術と事跡を検証し、領主権力の拡大と闘争過程を解明して実像に迫る、初の伝記。
[戦国|安土桃山|江戸][武将・将軍]
藤井譲治 著
家康を祖父、秀忠を父にもつ「生れながらの将軍」家光。鬱的症状に悩まされながらも、父秀忠、弟忠長、年寄衆との軋轢の中で、幕府の組織・機構を確立する。武家諸法度・参勤交代制によって大名を統制。大きく変動する東アジア世界のなかで鎖国を選択した。その精神を支えたのは家康への敬神である。新たな知見を加えつつ、48年の生涯を描く。
[江戸][武将・将軍]
塚本学 著
犬公方・綱吉は名君か暗君か、それとも単なる偏執狂だったのか。在世中以来、綱吉は政策と個人の嗜好とが同一視されてきた。取締と処罰の厳しさで怖れられた生類憐みの令、側用人柳沢吉保の寵用、儒学尊重などは、徳川政権のどんな矛盾を打開しようとした結果だったのか。毀誉褒貶の雑説にまみれた、日本史上、最も評価の分れる将軍の生涯を描く。
[江戸][武将・将軍]
五味文彦 著
はじめて武家政権を開いた平安末期の武将。数々の戦乱を制して、ついには最高権力者となった。実力で政権を奪う時代としての中世を切り開いたその生き方は、後世の武人政治家の範となっていく。同時代の貴族の日記や古文書などを丹念に繙きながら新史料の発掘を試み、政治動向の分析と併せて清盛の実像に迫る。従来の通説を覆した清盛伝の決定版。
[平安][武将・将軍]
田辺久子 著
室町前期の武将。将軍足利義教と関東公方持氏という二人の権力者の間で、翻弄されながらも調停を試みた関東管領。度重なる諌止を拒否する持氏と対立し、終に永享の乱で心ならずも持氏を死に追込む。乱の終息後、政界を退き、僧侶となって諸国を放浪し、長門国で没する。儒学に志篤く、足利学校を再興したことでも知られる武将の波乱の生涯を描く。
[室町][武将・将軍]
中野等 著
九州柳川藩の祖。大友宗麟配下の一武将から豊臣秀吉によって大名に取り立てられる。関ヶ原の敗戦で浪人となるが、徳川秀忠の下、再び大名として返り咲き、晩年家光に重用された。従来、軍記による武勇伝が流布してきたが、一次史料を駆使し生涯を描いた初の伝記。戦国大名島津氏らとの抗争、加藤清正や細川氏との交流なども浮き彫りにする。
[安土桃山|江戸][武将・将軍|大名]
曾根勇二 著
若くして豊臣秀吉に仕え、賤ヶ岳の七本槍の一人として知られる。後年、秀吉の子秀頼の家老と徳川方の「国奉行」を兼ね、大坂の陣を前に二大勢力の板挟みとなった。苦悩する悲劇の老臣という印象があるが、歴史上の真相は果してどうか。従来の忠・不忠論にとらわれず史実を検討し、武将としてよりむしろ事務官僚的にさえ見える実像を浮彫りにする。
[安土桃山|江戸][武将・将軍]
川添昭二 著
蒙古襲来の時代を生きた第8代鎌倉幕府執権。外圧を背景に、自らの権力確立のため、北条一門の名越氏と異母兄時輔を反得宗(とくそう)とみなして誅殺。34歳の若さで没した生涯を、今まであまり利用されなかった『建治(けんじ)三年記』や無学祖元(むがくそげん)の語録などを通して詳細に描写。蒙古問題の宗教的代弁者、日蓮にも説き及び、歴史の真相を浮き彫りにする。
[鎌倉][武将・将軍]
永井晋 著
鎌倉時代末期の政治家。霜月(しもつき)騒動に連座して不遇の幼少期をおくるが、得宗(とくそう)家の信頼を得て六波羅探題(ろくはらたんだい)・連署(れんしよ)となり、病弱な執権北条高時を支えた。15代執権に就任するが、政争の激化により辞任、幕府の滅亡に殉じた。膨大な貞顕(さだあき)書状から、高時政権を再評価し、称名寺造営や金沢文庫本の充実から、鎌倉の武家文化に足跡を残した権力者の実像に迫る。
[鎌倉][武将・将軍|文化人]