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国史大辞典・新編 日本古典文学全集・日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典

国史大辞典
宇治拾遺物語
うじしゅういものがたり
鎌倉時代の説話集。編者不詳。古写本・古活字本は二巻か、もしくはそれを更に四巻・八巻にわけてあるが、万治二年(一六五九)刊の流布本は十五巻。前者が本来の形であろう。建暦二年(一二一二)ころ成立の『古事談』から話を採っていることと、承元四年(一二一〇)―承久三年(一二二一)在位の順徳天皇を「当今」と書いていることなどから、そのころに成立したものとみられているが、多少の増補もあるらしい。雑纂形態で説話総数百九十七、その配列順序に諸本間の異同はない。『今昔物語集』と同文的な話が八十余あるのをはじめ、約百二十話において、諸書と同文的な伝承関係にある。ことに『古事談』『古本説話集』からは、同文的な話のグループを採りこんでおり、密接な伝承関係にあると推定されている。しかし、その他の約七十話のうちには、鬼のこぶとり、腰折雀などの昔話、くうすけの仏供養、空入水の僧の話のような世間話、随求陀羅尼を額に籠めた僧や仮名暦の話のような滑稽話など、口誦を直接に採録したとみられる生彩のある説話が多い。全篇を通して仏教説話が多いが、教説的傾向は少なく、破戒凡愚の僧の活躍する話や、迷信を斥け、仏教の呪縛から解き放たれた人間が写されている。平安朝の宮廷や貴族に関する説話も少なくないが、王朝思慕の懐古的な気持よりも、事件的物語的興味から発想されたものが多い。編者は貴族階級に属する人と考えられ、文体も王朝和文脈であるが、本書の何よりの特色は地方的、庶民的な発想につながる説話が多く、集められた説話が本書の中で書承からも口承からも生き返って、何かを語りかけているような感じを読者に与えるところにある。編者の説話の並べ方は雑なようで案外精妙であり、愚かしい人間とそのかもし出す事件を寛容に愛情をもって見守り、軽妙に描出し、健康な笑の文学の世界を構成している。古来広く愛読されたゆえんであろう。『(新訂増補)国史大系』一八、『日本古典文学大系』二七、『日本古典文学全集』二八、『岩波文庫』などに収められている。
[参考文献]
中島悦次『宇治拾遺物語・打聞集全註解』、渡辺綱也・西尾光一『宇治拾遺物語』解説(『日本古典文学大系』二七)
(西尾 光一)


新編 日本古典文学全集
宇治拾遺物語
うじしゅういものがたり
三 鬼に瘤取らるる事 3
こりもいなかった。その恐ろしさといったら紛らしようもない。木の洞穴のあった所にこごんで入って、まんじりともせずにかがんでいると、遠くから大勢の人の話し声がして、どやどや近づいて来る足音がする。まことに山の中にたった一人でいたところに、人のやって来る気配がしたので、少しほっとした気持になって、外の方をのぞいて見ると、およそ種々さまざまな連中が、赤い色の体には青い物を着、黒い色の体には赤い物をふんどしに締めて、いやはや目一つある者もあり、口のない者など、何とも言いようのない異形の者どもが、百人ばかり所狭しと集まって、火を日輪のように真っ赤にともして、自分のいる洞穴の木の前に、ぐるりと輪になって坐った。まるで生きた心地もない。

首領と思われる鬼は上座に坐っている。左右に二列に居並んだ鬼は、数知れぬほど。その姿はどれもこれも言葉では言い尽しがたい。酒を勧めて遊ぶありさまは、この世の人間そのままである。たびたび盃が交されて、首領の鬼はしたたかに酔った様子である。末座から若い鬼が一人立ち上がって、折敷を頭にのせて、何と言うのか、くどくように節のある調子で言って、上座の鬼の前にゆらゆらと歩み

宇治拾遺物語 三 鬼に瘤取らるる事 3
目次
古典への招待
凡例

宇治拾遺物語(扉)
宇治拾遺物語 序
宇治拾遺物語 巻第一
一 道命、和泉式部の許に於いて読経し、五条の道祖神聴聞の事 1
二 丹波国篠村、平茸生ふる事 2
三 鬼に瘤取らるる事 3
四 伴大納言の事 4
五 随求陀羅尼、額に籠むる法師の事 5
六 中納言師時、法師の玉茎検知の事 6
七 竜門の聖、鹿に代らんとする事 7
八 易の占ひして金取り出す事 8
九 宇治殿倒れさせ給ひて、実相房僧正、験者に召さるる事 9
十 秦兼久、通俊卿の許に向ひて悪口の事 10
十一 源大納言雅俊、一生不犯の鐘打たせたる事 11
十二 児の掻餅するに空寝したる事 12
十三 田舎の児、桜の散るを見て泣く事 13
十四 小藤太、聟におどされたる事 14
十五 大童子、鮭盗みたる事 15
十六 尼、地蔵見奉る事 16
十七 修行者、百鬼夜行にあふ事 17
十八 利仁、芋粥の事 18
宇治拾遺物語 巻第二
一 清徳聖、奇特の事 19
二 静観僧正、雨を祈る法験の事 20
三 同僧正、大嶽の岩祈り失ふ事 21
四 金峯山薄打の事 22
五 用経、荒巻の事 23
六 厚行、死人を家より出す事 24
七 鼻長き僧の事 25
八 晴明、蔵人少将封ずる事 26
九 季通、殃ひにあはんとする事 27
十 袴垂、保昌に合ふ事 28
十一 明衡、殃ひに合はんと欲る事 29
十二 唐に卒都婆血つく事 30
十三 成村、強力の学士にあふ事 31
十四 柿の木に仏現ずる事 32
宇治拾遺物語 巻第三
一 大太郎盗人の事 33
二 藤大納言忠家、物いふ女放屁の事 34
三 小式部内侍、定頼卿の経にめでたる事 35
四 山伏、舟祈り返す事 36
五 鳥羽僧正、国俊と戯れの事 37
六 絵仏師良秀、家の焼くるを見て悦ぶ事 38
七 虎の鰐取りたる事 39
八 木こり歌の事 40
九 伯の母の事 41
十 同人仏事の事 42
十一 藤六の事 43
十二 多田新発意郎等の事 44
十三 因幡国の別当、地蔵造り差す事 45
十四 伏見修理大夫俊綱の事 46
十五 長門前司の女、葬送の時本所に帰る事 47
十六 雀報恩の事 48
十七 小野篁広才の事 49
十八 平貞文、本院侍従の事 50
十九 一条摂政歌の事 51
二十 狐、家に火つくる事 52
宇治拾遺物語 巻第四
一 狐、人に憑きてしとぎ食ふ事 53
二 佐渡国に金ある事 54
三 薬師寺別当の事 55
四 妹背嶋の事 56
五 石橋の下の蛇の事 57
六 東北院菩提講の聖の事 58
七 三河入道、遁世の事 59
八 進命婦、清水寺へ参る事 60
九 業遠朝臣、蘇生の事 61
十 篤昌、忠恒等の事 62
十一 後朱雀院、丈六の仏造り奉り給ふ事 63
十二 式部大輔実重、賀茂の御正体拝み奉る事 64
十三 智海法印、癩人法談の事 65
十四 白河院おそはれ給ふ事 66
十五 永超僧都、魚食ふ事 67
十六 了延に実因、湖水の中より法文の事 68
十七 慈恵僧正、戒壇築きたる事 69
宇治拾遺物語 巻第五
一 四の宮河原地蔵の事 70
二 伏見修理大夫の許へ殿上人行き向ふ事 71
三 以長、物忌の事 72
四 範久阿闍梨、西方を後ろにせぬ事 73
五 陪従家綱、行綱、互ひに謀りたる事 74
六 同清仲の事 75
七 仮名暦あつらへたる事 76
八 実子にあらざる子の事 77
九 御室戸僧正の事、一乗寺僧正の事 78
十 ある僧、人の許にて氷魚盗み食ひたる事 79
十一 仲胤僧都、地主権現説法の事 80
十二 大二条殿に小式部内侍、歌詠みかけ奉る事 81
十三 山の横川の賀能地蔵の事 82
宇治拾遺物語 巻第六
一 広貴、閻魔王宮へ召さるる事 83
二 世尊寺に死人掘り出す事 84
三 留志長者の事 85
四 清水寺二千度参り、双六に打ち入るる事 86
五 観音、蛇に化す事 87
六 賀茂より御幣紙、米等給ふ事 88
七 信濃国筑摩の湯に観音沐浴の事 89
八 帽子の叟、孔子と問答の事 90
九 僧伽多、羅刹国に行く事 91
宇治拾遺物語 巻第七
一 五色の鹿の事 92
二 播磨守為家の侍佐多の事 93
三 三条中納言、水飯の事 94
四 検非違使忠明の事 95
五 長谷寺参籠の男、利生にあづかる事 96
六 小野宮大饗の事、西宮殿富小路大臣大饗の事 97
七 式成、満、則員等三人滝口弓芸の事 98
宇治拾遺物語 巻第八
一 大膳大夫以長、前駆の間の事 99
二 下野武正、大風雨の日、法性寺殿に参る事 100
三 信濃国の聖の事 101
四 敏行朝臣の事 102
五 東大寺華厳会の事 103
六 猟師、仏を射る事 104
七 千手院僧正、仙人にあふ事 105
宇治拾遺物語 巻第九
一 滝口道則、術を習ふ事 106
二 宝志和尚影の事 107
三 越前敦賀の女、観音助け給ふ事 108
四 くうすけが仏供養の事 109
五 恒正が郎等、仏供養の事 110
六 歌詠みて罪を許さるる事 111
七 大安寺別当の女に嫁する男、夢見る事 112
八 博打の子、聟入の事 113
宇治拾遺物語 巻第十
一 伴大納言、応天門を焼く事 114
二 放鷹楽、明暹に是季が習ふ事 115
三 堀河院、明暹に笛吹かさせ給ふ事 116
四 浄蔵が八坂の坊に強盗入る事 117
五 播磨守佐大夫が事 118
六 吾妻人、生贄をとどむる事 119
七 豊前王の事 120
八 蔵人頓死の事 121
九 小槻茂助の事 122
十 海賊発心出家の事 123
宇治拾遺物語 巻第十一
一 青常の事 124
二 保輔盗人たる事 125
三 晴明を試みる僧の事 126
三 続  晴明、蛙を殺す事 127
四 河内守頼信、平忠恒を攻むる事 128
五 白河法皇北面、受領の下りのまねの事 129
六 蔵人得業、猿沢の池の竜の事 130
七 清水寺御帳賜る女の事 131
八 則光、盗人を斬る事 132
九 空入水したる僧の事 133
十 日蔵上人、吉野山にて鬼にあふ事 134
十一 丹後守保昌、下向の時致経の父にあふ事 135
十二 出家功徳の事 136
宇治拾遺物語 巻第十二
一 達磨、天竺の僧の行ひ見る事 137
二 提婆菩薩、竜樹菩薩の許に参る事 138
三 慈恵僧正、受戒の日延引の事 139
四 内記上人、法師陰陽師の紙冠を破る事 140
五 持経者叡実効験の事 141
六 空也上人の臂、観音院僧正祈り直す事 142
七 増賀上人、三条の宮に参り振舞の事 143
八 聖宝僧正、一条大路渡る事 144
九 穀断の聖露顕の事 145
十 季直少将歌の事 146
十一 木こり小童隠題歌の事 147
十二 高忠の侍、歌詠む事 148
十三 貫之歌の事 149
十四 東人、歌詠む事 150
十五 河原院融公の霊住む事 151
十六 八歳の童、孔子問答の事 152
十七 鄭太尉の事 153
十八 貧しき俗、仏性を観じて富める事 154
十九 宗行が郎等、虎を射る事 155
二十 遣唐使の子、虎に食はるる事 156
二十一 ある上達部、中将の時召人にあふ事 157
二十二 陽成院ばけ物の事 158
二十三 水無瀬殿むささびの事 159
二十四 一条桟敷屋、鬼の事 160
宇治拾遺物語 巻第十三
一 上緒の主、金を得る事 161
二 元輔落馬の事 162
三 俊宣、まどはし神に合ふ事 163
四 亀を買ひて放つ事 164
五 夢買ふ人の事 165
六 大井光遠の妹、強力の事 166
七 ある唐人、女の羊に生れたるを知らずして殺す事 167
八 出雲寺別当、父の鯰になりたるを知りながら殺して食ふ事 168
九 念仏の僧、魔往生の事 169
十 慈覚大師、纐纈城に入り行く事 170
十一 渡天の僧、穴に入る事 171
十二 寂昭上人、鉢を飛ばす事 172
十三 清滝川聖の事 173
十四 優婆崛多の弟子の事 174
宇治拾遺物語 巻第十四
一 海雲比丘の弟子童の事 175
二 寛朝僧正、勇力の事 176
三 経頼、蛇にあふ事 177
四 魚養の事 178
五 新羅国の后、金の榻の事 179
六 玉の価はかりなき事 180
七 北面の女雑仕六が事 181
八 仲胤僧都、連歌の事 182
九 大将つつしみの事 183
十 御堂関白の御犬、晴明等、奇特の事 184
十一 高階俊平が弟の入道、算術の事 185
宇治拾遺物語 巻第十五
一 清見原天皇と大友皇子と合戦の事 186
二 頼時が胡人見たる事 187
三 賀茂祭の帰り武正、兼行、御覧の事 188
四 門部府生、海賊射返す事 189
五 土佐判官代通清、人違して関白殿にあひ奉る事 190
六 極楽寺僧、仁王経の験を施す事 191
七 伊良縁野世恒、毘沙門御下文の事 192
八 相応和尚、都卒天にのぼる事、染殿の后祈り奉る事 193
九 仁戒上人往生の事 194
十 秦始皇、天竺より来たる僧禁獄の事 195
十一 後の千金の事 196
十二 盗跖と孔子と問答の事 197

校訂付記
解説
一 宇治大納言物語と宇治拾遺物語
二 成立年代
三 説話配列の特色
『宇治拾遺物語』の説話連絡表
『宇治拾遺物語』説話間の類縁表現一覧
四 話態と表現
五 諸本
付録(扉)
関係説話表
洛中説話地図
主要参考文献
神仏名・人名・地名索引
奥付



日本大百科全書
宇治拾遺物語
うじしゅういものがたり

鎌倉初期の説話集。作者不詳。1221年ごろ成立か。序文によれば、書名は『宇治大納言(だいなごん)物語』の続編(拾遺編)の意とも、編著にかかわる侍従(唐名拾遺)という官職にちなむものともいわれている。道命阿闍梨(どうみょうあじゃり)と和泉式部(いずみしきぶ)との情事を伝える巻頭第1話に始まり、聖哲孔子が大盗賊にやりこめられるという末尾の第197話に至るまで、長短の説話が自在な連想のもとに書き継がれている。天皇、貴族から僧侶(そうりょ)、武士、盗賊に至るまでのあらゆる階層の人物が登場し、それぞれ、成功談、失敗談、あるいは奇妙な話、不思議な話、笑い話など、さまざまな内容の話が載せられている。また中国、インドなど異国を舞台とした話や、『こぶ取り爺(じじい)』『わらしべ長者』などの昔話に通じる民話風の話もみられ、他の説話集と比べて、素材や内容の面で広がりは著しく、そこには作者の人間や社会に対する自由で柔軟な思考や感覚といったものをうかがうことができる。「今は昔」「是(これ)も今は昔」といった穏やかな語り出しに始まり、全体に平易でわかりやすい和文脈の語り口で語られてはいるが、その内容には鋭い人間批評や風刺、皮肉がきいているものも少なくなく、味わい深い作品である。散逸した『宇治大納言物語』(成立不詳)の影響の下に成立したと考えられ、『古本説話集』(1131ころ成立か)、『古事談』(1215以前に成立か)、『世継(よつぎ)物語』(成立不詳)などとほぼ同文の類話を多く載せ、相互の密接な関係を推定することができるが、80余の共通話をもつ『今昔(こんじゃく)物語集』(成立不詳)とは直接の書承関係は認められない。
[浅見和彦]



改訂新版・世界大百科事典
宇治拾遺物語
うじしゅういものがたり

鎌倉時代の説話集。15巻15冊。ただし,巻を立てない2冊本や3冊本もある。編者は未詳。鎌倉時代初期の成立で,1220年(承久2)前後と見る説が有力。書名の由来は諸説あって一定しないが,古来宇治大納言隆国(源隆国)編,またはそれに取捨を加えたものとされてきたことからの称らしく,中世には《宇治大納言物語》と異称されたこともあった。197話の長短編説話を集録し,ひらがな本位の和文体で記した典型的な読物的説話集。雑纂形式で格別の部立はないが,説話の配列には連想による類集性も目立つ。内容は広範多岐にわたり,地域的には日本の説話を主体にインド・中国の説話を収め,話性的には仏教説話系と世俗説話系に二大別される。登場人物は帝王,貴族から武士,庶民に至る社会の全階層に及び,収載説話の分布も都鄙を選ばず,全国的規模に広がっている。主流をなすのは世俗説話系で,全体の約3分の2を占める。説話に対する興味と関心から,広く世上の奇譚珍聞を採録したもので,その内容は貴族的,懐古的趣味に根ざす和歌説話や芸能風流譚から,超階級的関心に支えられた巷間の霊怪譚や卑俗な笑話・昔話まで,世俗百般の話題を集めてきわめて多彩である。芥川竜之介が取材した巻一の〈利仁(としひと)芋粥の事〉,巻二の〈鼻長僧の事〉,巻十一の〈蔵人(くろうど)得業(とくごう)猿沢の池の竜の事〉や,《伴大納言絵巻》の詞書と同話の巻十の〈伴大納言応天門を焼く事〉,また現行昔話の古態を伝える巻一の〈鬼に瘤(こぶ)取らるる事〉,巻三の〈雀報恩の事〉などは,世俗説話中の著名なもの。一方仏教説話系は,仏法僧の霊験奇特譚や発心往生譚など,広く三宝の霊威と信仰の諸相を伝えるものが多いが,概して説教臭に乏しく,ここでも採録の基調が布教よりは説話的興味にあったことがうかがわれる。この系統に属するものとしては,《信貴山縁起絵巻》の詞書と同話の巻八の〈信濃国の聖の事〉や,昔話〈わらしべ長者〉の源流と見られる巻七の〈長谷寺参籠の男利生にあづかる事〉などが著聞する。

 話性のいかんにかかわらず,総じて構成にむだがなく,表現も洗練されて,読物的説話としての完成度が高いが,わけても魅力的話題に富むのは世俗説話で,そこに展開する多彩な事件描写と,それに対処する貴賤男女の思慮と行動の叙述には人間理解の深さもうかがわれて秀逸なものが多い。《今昔物語集》《古本説話集》《古事談》などに本書収載話と同文に近い説話が多出するのも,それらが当時人気ある話題として書承されていた一証で,その意味でも本書は,編者の趣向を通じて,中世初期の時代的好尚を凝結した出色の説話集と評価することもできよう。なお中・近世を通じて比較的流布したようで,後代文学への影響も顕著なものがあった。本書のもつ笑話的性格が安楽庵策伝の《醒睡笑》以下,近世咄本の世界で珍重され,奇譚異聞的内容が浅井了意の仮名草子や,井原西鶴,都の錦などの浮世草子に素材を提供したことなどはその好例である。芥川竜之介以下の近代作家が注目したのも,多彩な話題と巧みな人間描写にひかれるところが大きかったのであろう。
[今野 達]

[索引語]
宇治大納言物語
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雑下・六二九「あひがたき法をひろめし聖(ひじり)こそうち見し人もみちびかれけれ〈永縁〉」*宇治拾遺物語〔1221頃〕四・五「菩提講(ぼだいかう)の庭に参り給ひけ ...
10. あいぎょう こぼる
日本国語大辞典
ありつる花の露にぬれたる心地して、そひふし給へるさま、美しう、らうたげなり。あい行こぼるるやうにて」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一一・一「堀河中将、直衣(なほし ...
11. あいだ[あひだ]【間】
日本国語大辞典
然令旨等未下」*平家物語〔13C前〕二・西光被斬「昼は人目のしげう候間、夜にまぎれてまゐって候」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・一五「道はせばくて、馬何かとひし ...
12. あい‐むこ[あひ:]【相婿・相聟・合聟】
日本国語大辞典
〓 アヒムコ 両聟相曰也」*宇治拾遺物語〔1221頃〕二・八「この少将のあひ聟にて、蔵人の五位のありけるも、おなじ家に、あなたこな ...
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日本国語大辞典
貴人(うまひと)は 貴人どちや 親友(いとこ)はも 親友どち いざ阿波(アハ)なわれは」*宇治拾遺物語〔1221頃〕三・七「いみじき剣刀をぬきてあふとも、かばか ...
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日本国語大辞典
〔他サ下二〕(「あう」は対抗する、「くらべる」は争うの意)負けずに争って押えつける。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一一・八「盗人なめりと思ひ給へて、あへくらべふせ ...
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日本国語大辞典
ず」*今昔物語集〔1120頃か〕三・一〇「阿修羅王来て、山を動すに敢て不動(うごか)ず」*宇治拾遺物語〔1221頃〕六・九「あへてわれらがしわざにあらず」*俳諧 ...
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日本国語大辞典
などは、髪のすそ細う、色あをびれなどしたればこそ、心苦しけれ。いと物狂ほしき御有様かな」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一三・一〇「のぞきて見れば、色あさましう青び ...
20. あか‐こう[:カウ]【赤香】
日本国語大辞典
〔名〕染色の名。赤みの勝った香色。*宇治拾遺物語〔1221頃〕八・二「武正、あかかうのかみしもに蓑笠を着て」アカコー ...
21. あかり‐しょうじ[:シャウジ]【明障子】
日本国語大辞典
御所、〈所謂夜御殿北庇也〈略〉北孫庇二間敷大文高麗四枚、立明障子〉」*宇治拾遺物語〔1221頃〕五・九「広びさし一間あり、妻戸にあかりしゃうじたてたり」*井蛙抄 ...
22. あがい[あがひ]【贖】
日本国語大辞典
〔名〕(動詞「あがう」の連用形の名詞化。古くは「あかい」)罰として償いをすること。賠償。あがない。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一一・一「『酒、くだ物など取りいだ ...
23. あが・う[あがふ]【贖・購】
日本国語大辞典
1頃〕「〓 贖也 阿加不」*宇治拾遺物語〔1221頃〕八・四「此の科(とが)は四巻経書き、供養してあかはむといふ願」*観智院本類聚 ...
24. あ‐が・く【足掻】
日本国語大辞典
動かしてもがく。*宇津保物語〔970〜999頃〕国譲上「思すやうに、平かにてと、手をあがきて祈り」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一二・一九「虎、さかさまにふして、 ...
25. あぎ‐と【〓門・顎・顋・鰓】
日本国語大辞典
かけて」(2)(鰓)魚のえら。あぎ。*十巻本和名類聚抄〔934頃〕八「鰓 唐韻云鰓〈蘇来反阿岐度〉魚頬也」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一三・八「魚大にしてうちと ...
26. あ・く【飽・厭・倦】
日本国語大辞典
)ぬ」*源氏物語〔1001〜14頃〕葵「うちそばみて、わらひ給へる御さま、あかぬ所なし」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・一八「『大夫殿、いまだ芋粥(いもがゆ)に ...
27. あ・ける【明・開・空】
日本国語大辞典
「四時間以上あけて服用のこと」*源氏物語〔1001〜14頃〕蜻蛉「心なし、道あけ侍りなんよ」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一〇・六「此櫃を、刀のさきして、みそかに ...
28. あげ‐おろ・す【上下・揚降】
日本国語大辞典
〔他サ四〕(1)あげたり、おろしたりする。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・六「手を広げてあげおろしさすれ」*平家物語〔13C前〕九・越中前司最期「内々は六七十人 ...
29. あこや の 珠(たま)
日本国語大辞典
「あこやだま(阿古屋珠)」に同じ。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一四・六「袴の腰より、あこやの玉の、大なる豆斗(ばかり)ありけるを取り出して、とらせたりければ」 ...
30. あさい[あさゐ]【浅井】
日本国語大辞典
西浅井郡は同三〇年伊香郡に編入されて消滅。*二十巻本和名類聚抄〔934頃〕五「近江国〈略〉浅井〈阿佐井〉」*宇治拾遺物語〔1221頃〕四・一七「是も今は昔、慈恵 ...
31. あさ‐がゆ【朝粥】
日本国語大辞典
〔名〕朝、食べるかゆ。*宇治拾遺物語〔1221頃〕二・七「心地あしくて、この法師いでざりける折に、朝粥食はむとするに」*虎明本狂言・東西離〔室町末〜近世初〕「ま ...
32. あさまし‐が・る【浅─】
日本国語大辞典
右衛門の尉なりける者の「『人の心ばかり、あさましかりけることなし』とあさましがるほどに」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一五・九「行き通る人みて、あさましがり、心う ...
33. あさみ‐あ・う[:あふ]【浅合】
日本国語大辞典
〔自ハ四〕互いに驚きあきれる。人々が一緒に驚く。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・一八「『これ見よ。誠なりけり』と、あさみあひたり」*平家物語〔13C前〕六・飛脚 ...
34. あさみ‐きょう・ず【浅興】
日本国語大辞典
〔自サ変〕事の意外さに驚きあきれながらも、おもしろがる。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・三「翁、〈略〉一庭をはしりまはり舞ふ。横座の鬼よりはじめて、あつまりゐた ...
35. あさ‐みち【浅道】
日本国語大辞典
〔名〕川などの、水が浅くて、歩いて渡ることのできるところ。あさみ。*宇治拾遺物語〔1221頃〕一一・四「舟はみなとりかくしたれば、あさみちをば、わればかりこそ知 ...
36. あさみ‐ほ・む【浅誉】
日本国語大辞典
〔他マ下二〕驚き感じて賞賛する。驚いてほめる。*宇治拾遺物語〔1221頃〕二・六「さてその事世に聞えて、殿ばらも、あさみほめ給けり」 ...
37. あざ【痣・疵】
日本国語大辞典
晉書云趙孟面有二〓〈音疾移反 師説阿佐〉」*宇治拾遺物語〔1221頃〕七・一「この輿のそばにある、顔にあざのある男」*洒落本・大通愛想尽〔1779 ...
38. あし‐がた【足形・足型】
日本国語大辞典
はへ降るころ「かかる雨にのぼり侍らば、あしかたつきて、いとふびんにきたなくなり侍りなん」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一二・二〇「大きなる犬のあしがたありて」*日 ...
39. 蘆屋道満
世界大百科事典
平安中期の法師陰陽師。道摩ともいう。安倍晴明と術くらべする人物として登場することが多い。《古事談》《宇治拾遺物語》《十訓抄》に,道摩法師が藤原顕光の命で藤原道長 ...
40. あしや‐どうまん【蘆屋道満】
デジタル大辞泉
平安中期の陰陽家。藤原道長のころ、安倍晴明と法力を争ったと宇治拾遺物語にある。生没年未詳。  ...
41. あしやどうまん【蘆屋道満】
日本架空伝承人名事典
平安中期の法師陰陽師。道摩ともいう。安倍晴明と術くらべする人物として登場することが多い。『古事談』『宇治拾遺物語』『十訓抄』に、道摩法師が藤原顕光の命で藤原道長 ...
42. あたごじんじゃ【愛宕神社】京都市:右京区/上嵯峨村地図
日本歴史地名大系
た(前掲縁起など)。この愛宕山中で宗教生活を送る修験者は、愛宕聖(源氏物語)とも清滝川聖(宇治拾遺物語)ともよばれたが、愛宕信仰は彼らの手によって全国に流布され ...
43. あたり【当・中】
日本国語大辞典
六「大じんわざと酔狂して、あたりあらく踏立(ふみたて)」(2)物や人に触れた感じ。感触。*宇治拾遺物語〔1221頃〕三・一八「近くよりて髪をさぐれば、氷をのしか ...
44. あたり を 払(はら)う
日本国語大辞典
・宇治川先陣「馬をも人をも、あたりをはらって食ひければ、生食(いけずき)とつけられたり」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一四・一「ゆめゆめ女人に近づく事なかれ。あた ...
45.&nnbsp;あだ‐げ
日本国語大辞典
〔形動〕(「げ」は接尾語)もろそうなさま。あぶなげなさま。*宇治拾遺物語〔1221頃〕三・一「門などもかたかたは倒(たう)れたる、よこざまによせかけたる所のあだ ...
46. あ‐ち【彼方】
日本国語大辞典
こち。*神楽歌〔9C後〕早歌「〈本〉安知(アチ)の山背山、〈末〉背山や背山」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一一・九「集(つど)ひたるものども、こち押し、あち押し、 ...
47. あち‐こち【彼方此方】
日本国語大辞典
また、所々方々、あれこれ、いろいろ、などの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あっちこっち。*宇治拾遺物語〔1221頃〕三・五「牛の、あちこちありき困(こう)じ ...
48. あつたじんぐう【熱田神宮】愛知県:名古屋市/熱田区/宮宿
日本歴史地名大系
る神社として、その祀職も同族のなかから採用され、長官である大宮司の威勢は国司にもまさると「宇治拾遺物語」に記されている。しかし大宮司尾張員職がその女を尾張国目代 ...
49. あつら・える[あつらへる]【誂】
日本国語大辞典
苦(ねんごろ)にあつらへ、出雲の国にまかる路に」(2)注文して物を作らせる。依頼して物を作らせる。*宇治拾遺物語〔1221頃〕五・七「仮名暦(かなごよみ)あつら ...
50. あつ‐らか【厚─】
日本国語大辞典
*宇津保物語〔970〜999頃〕国譲上「白き色紙のいとあつらかなる一重(ひとかさね)に」*宇治拾遺物語〔1221頃〕一・一八「畳あつらかにしきて、くだ物食ひ物し ...
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