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  11. 三味線

三味線

ジャパンナレッジで閲覧できる『三味線』の新版 歌舞伎事典・日本国語大辞典・日本大百科全書のサンプルページ

新版 歌舞伎事典

三味線
しゃみせん
 日本の絃楽器。〈さみせん〉ともいい、三絃(弦)ともいう。
【伝来】祖型は中国の三絃で、およそ永禄の頃(16世紀後半)に南方から渡来したと考えられている。その後次第に改良が加えられ、慶長初年ごろ歌舞伎、人形浄瑠璃と結びついて発達した。
【発達】まず比較的大きなバチが考案され、胴も棹も大きくなり、音量が大きくなった。また音質的にはサワリが考案され、同時に調絃法にも工夫が加えられ、本調子、二上り、三下りのほか上調子や替手なども作られた。
【材料】胴と棹は木材(現在は主として紅木、古くは樫など)、糸は絹糸、皮は猫または犬を用いるので、消耗品である。しかしそれが幸いして用途に適した三味線が発達したといえよう。流派によって太棹(主として義太夫に使用)、細棹(主として長唄に使用)のほか、その中間の大きさのものが各種作られた。またバチの材料も象牙、べっ甲などが使われ、そのバチの大きさやヒラキの厚さも変化し、駒にも工夫が加えられ、音質的な特色が生じた。
【演奏法】ふつうに上から下へ弾くほか、逆に下から上へのスクイ、左手で絃をはじくハジキなどの方法があり、弾く位置も胴より棹の部分を主とするものや、強く弾いて打楽器的な効果を出すなど、曲や流派によってさまざまな方法がある。また新しいところでは低音三味線や電気三味線なども作られ、プラスチック製のものもある。
【歌舞伎との関係】歌舞伎に採り入れられた初期の時代には、珍しい楽器として登場、演奏法も単純なものであったと想像されるが、音楽面での発達とともに歌舞伎の重要な一部分を占めるに至った。古い時代は一中節、河東節、大薩摩節が喜ばれ、ついで長唄、常磐津節、富本節、清元節が採り入れられた。また義太夫節の隆盛とその歌舞伎化によって、義太夫狂言(丸本物)が行われるようになり、やはり重要な一部分となった。舞踊では伴奏楽器として大切なものとなっている。
[竹内 道敬]
三味線の構造(上)
細棹 〈鳴神〉の銘がある(下右)
中棹 富崎春昇使用(下中)
太棹 三世鶴沢清六使用(下左)


日本国語大辞典

しゃみ‐せん 【三味線

解説・用例

〔名〕

(1)和楽器の一つ。日本の代表的弦楽器。やや丸みを帯びた方形の胴に棹(さお)をつけ、その先端に海老尾(えびお)を設けたもの。三弦で、ふつう撥(ばち)で奏する。棹は紫檀(したん)・紅木(こうき)、胴は花梨(かりん)などで作り、胴には猫または犬のなめし皮を張る。棹の太さによって、太棹・中棹・細棹に大別され、その大きさに応じて胴や撥の大きさ、駒の重さ、糸の太さなどが変わる。太棹は義太夫、中棹は地歌・常磐津・清元、細棹は長唄・小唄などに用いる。調弦法は、本調子・二上がり・三下がりなど。永祿年間(一五五八~七〇)琉球の蛇皮(じゃび)線が大坂の堺に輸入され、琵琶法師によって改造されたという。さみせん。三弦。しゃみ。さみ。ぺんぺん。

*御湯殿上日記‐天正八年〔1580〕二月一六日「まいののち、宮の御かた、御かはらの物、山しろといふ、しやみせんひかせらるる」

*日葡辞書〔1603~04〕「Xamixen (シャミセン)」

*虎明本狂言・昆布売〔室町末~近世初〕「うってきかせう、是をしゃみせんにしてな」

*仮名草子・恨の介〔1609~17頃〕上「今様のしゃみせんを転手きりりと押し廻し、糸を調べて甲を取り、合の手を弾かせらる」

*俳諧・類船集〔1676〕之「三絃(シャミセン)」

*浮世草子・傾城禁短気〔1711〕二・三「子守、小買物の苦患を免れ三味線(シャミセン)を引習ひ、十六番の扇の手、目の舞ほど稽古して」

(2)「しゃみせんぐさ(三味線草)」の略。

(3)「しゃみせん(三味線)を弾(ひ)く」の略。

(4)学校の成績が甲であること。甲の字が三味線の形に似ているところから、学生などが言ったもの。

*新時代用語辞典〔1930〕〈長岡規矩雄〉学生用語「三味線 学科の成績が甲であること。甲の字が一寸三味線の形に似てゐるからいったもの」

方言

(1)魚、しまいさき(縞伊佐木)。しゃみせん和歌山県海草郡694

(2)植物、かにくさ(蟹草)。しゃみせん長崎県東彼杵郡964

語源説

(1)弦が三本であるところから〔色道大鏡・一話一言〕。

(2)沖縄のジャビセン(蛇皮線)からか〔名言通〕。

発音

〓サブヘン・サンブヘン〔津軽語彙〕サミセコ〔岩手〕シャブセン〔岐阜〕シャムセン〔栃木・埼玉方言・東京・岐阜・静岡・長崎〕シヤムセン〔飛騨・愛知〕シャンセン〔鹿児島方言〕

〓[0]〓[0]

辞書

日葡・ヘボン・言海

正式名称と詳細

表記

三味線言海

図版

三味線
三味線(1)



日本大百科全書(ニッポニカ)

三味線
しゃみせん

日本の弦鳴楽器の一つ(リュート属長頸撥弦 (ちょうけいはつげん)楽器)。中国の三絃 (さんげん)に由来する楽器で、16世紀後半に琉球 (りゅうきゅう)を経由して泉州(大阪)の堺 (さかい)に伝えられたとされる。伝来後は急速に普及し、改良を施されながら、日本の近世音楽を代表する楽器となって現在に至っている。「しゃみせん」という呼称は、中国の「三絃」の発音が日本に入って転訛 (てんか)したものと考えられる。また三絃をそのまま音読みして「さんげん」とよぶことも一般化している。

[藤田隆則]

構造

三味線は種目や流派によりそれぞれ固有の特徴をもつが、基本的な構造は共通しており、全長も約97センチメートルとほぼ一定している。

 棹 (さお)は紅木 (こうき)または紫檀 (したん)製で、1本の木でできているものを延棹 (のべざお)、使わないときに分解可能なものを継棹 (つぎざお)という。棹は胴の木枠を貫通することで固定されている。棹の上端には海老尾 (えびお)とよばれる湾曲部分がある。海老尾には糸巻を差し込む空間、糸蔵 (いとぐら)がある。糸巻に巻かれた太さの異なる3本の絹製の糸は、糸蔵の端にある金属製または竹製の上駒 (かみごま)の上を通過して棹の上に張られている。ただし、構えたときに上方にくる低音弦(一の糸)は上駒から外してあり、棹の本体に触れやすいようにくふうされている。このくふうはサワリ(サハリ)とよばれ、中国、琉球の三絃にはみられない。上駒と平行に棹上に溝をつくることでわずかな起伏(山と谷)を設け、一の糸が振動するときに山に触り、微妙に異なる音高が混じり合う効果をあげる。この効果が生かされることを「サワリがつく」といい、演奏技巧上重要である。これ以外の部分では、棹の表面は平らに処理されフレットがないが、継棹の場合は棹の継ぎ目が運指のための目印となる。

 胴の部分は、花梨 (かりん)など堅い材質の板を4枚枠状に組み、両面に猫(または犬)の皮をはる。演奏時には胴皮と弦の間に駒(下駒 (しもごま))を挟む。これは、糸の振動弦長を下端で決める働きと、糸の振動を胴皮に伝える働きをもつ。駒には、象牙 (ぞうげ)、べっこう、木などの硬い素材が使われる。胴の最下端部から棹の一部が突出し(中子先 (なかごさき))、そこには糸を結び付けるための根緒 (ねお)が取り付けられている。

 撥 (ばち)の使用は琵琶 (びわ)の影響と考えられる。三味線では撥の形状はほぼ同じだが、種目によってその大きさや材質などが大幅に異なる。素材には、象牙、べっこう、黄楊 (つげ)などをおもに用いる。なお小唄 (こうた)では原則として撥は使わず、爪弾 (つまび)きを用いる。

[藤田隆則]

種類

通常、棹の幅によって太棹 (ふとざお)、中棹 (ちゅうざお)、細棹 (ほそざお)の3種類に分かれる。太棹は義太夫節 (ぎだゆうぶし)、津軽 (つがる)三味線、浪曲(浪花節 (なにわぶし))に、中棹は常磐津節 (ときわずぶし)、清元節 (きよもとぶし)、新内節 (しんないぶし)、地歌 (じうた)などに、細棹は長唄、荻江節 (おぎえぶし)、小唄などに用いられる。しかし実際は同じ太棹でも種目、流派によって胴の大きさや皮の材質など細部が異なるので、この3分類は非常に大まかなものといえる。むしろ種目、流派によって三味線を分類するほうが正確である。

 撥 (ばち)もまた種目、流派によって異なる。義太夫節の撥は、撥先に厚みがあり外側に向けての開きも小さく、重く大きい。地歌では、開きが大きく撥先の薄い津山撥 (つやまばち)が好んで使われる。これに対して長唄の撥は一回り小さい。また新内の上調子 (うわぢょうし)には、指でつかんで扱う、さらに小型の撥がある。

 なお、薩摩 (さつま)(鹿児島県)では「ごったん」という杉製の板張り三味線が近年まで愛好されていた。

[藤田隆則]

調弦

三味線の調弦は、絶対音高ではなく、弦と弦との相対的な音程関係によって規定されている。個々の調弦は調子とよばれ、基本的なものに本調子 (ほんちょうし)、二上 (にあが)り、三下 (さんさが)りがあり、派生的なものに一下り、六下り、一上り、二上り三メリなどがある。

 本調子は、一の糸の完全4度上に二の糸、二の糸の完全5度上に三の糸をあわせる。本調子を基準にして各調子が命名される。二上りは、本調子の二の糸を長2度高めてつくる。また三下りは、本調子の三の糸を長2度下げてつくる。しかし、実際の調弦はかならずしも本調子を媒介とすることなしに行われる。たとえば、曲中で三下りから二上りに変えるときには、一の糸を長2度下げることで調子を変えるので、一の糸を中心音として固定する見方は通用しないのである。

 調子は曲の気分と強く結び付いているといわれる。本調子は本格的・男性的、二上りは変格的・派手・陽気、三下りは女性的・優美・悲哀などと結び付き、作曲の段階で調子の選択が重要な決定事項となる。一曲のなかで曲想が変化する場合には、調子も変わることが多い。音色や旋律の変化をねらって、派生的な調子が曲中で部分的に使われることもしばしばある。曲中での調子の変更は、演奏を中断せず、左手で糸巻を操作して瞬時に行われるのが普通である。

[藤田隆則]

奏法

三味線は、正座して右膝 (ひざ)の上に胴を置き、右腕で胴の上部を押さえて本体を固定するのが基本の構えとなる。このとき左手を棹に軽く添えるが、棹を支えてはいけない。撥弦 (はつげん)は撥の先端を糸の斜め上方から打ちおろして行う。打ちおろされた撥は皮の棹寄りに貼 (は)られた撥皮 (ばちかわ)に当てて止まり、撥音 (ばちおと)が生じる。撥音は、打楽器的な音色効果として重視される。義太夫節では、撥音の強弱を調節する表現技法がとくに多い。また、地歌のように撥音を避けて純粋の弦音だけをねらう場合もある。

 右手の技法で代表的なものはスクイバチである。スクイバチは、糸をすくい上げて撥弦する技法で、音量は小さいが、通常の弾き方と音色が異なる。この技法は、多くの場合、打ちおろした糸をそのまますくい上げて、その動作を何度か繰り返すパターンとして用いられる。

 左手のおもな役割は、棹上で糸を押さえ、必要な音高を与えることにある。糸はおもに人差し指で押さえ、旋律進行の必要に応じて中指、薬指(まれには親指)を用いる。棹上にフレットはないが、正確な音高が得られる位置は決まっており、その位置は勘所 (かんどころ)(またはつぼ)とよばれる。左手には、勘所を正確につかみ、糸を棹に擦り込むようにして押さえビブラートをかける技術、勘所から勘所へすばやく移動する技術が必要とされる。これらの動作は、視覚の助けを借りずになしうるだけの熟練を必要とする。また、一の糸のサワリをつけるために、二の糸、三の糸上の勘所で、一の糸の倍音にあたる勘所は、とくに正確に押さえなくてはならない。サワリの共鳴をつけることは表現上の重要な評価基準となる。とくに二上りの調子では、サワリがつかないと共鳴によるはでさ、華やかさが得られず、よい演奏にはならない。

 左手の技法では、指を糸に沿ってずらしポルタメント効果を与えるスリ、指で糸を棹上に打ちおろして小さな音で明確な拍をとるウチ、掛け声とともに糸を打ち残響を絶つケシ、糸に指をひっかけ、棹に押さえつけるようにして指から離すハジキなどが代表的である。

[藤田隆則]

記譜と口三味線

三味線の伝来当初、その演奏の伝承に楽譜は用いられず、楽器の音をことばのシラブルにあてて旋律を歌って暗記する便宜的な方法がとられていたと考えられる。その後、より厳密な伝承法の確立を目ざして、1664年(寛文4)『糸竹初心集 (しちくしょしんしゅう)』が出された。この書では、勘所と右手の奏法によって決まる音の一つ一つを異なった仮名に対応させて表示するシステムが提示された。これにより旋律の唱え方が規範化され、同時に旋律を書き留める努力がなされた。しかし、使われる仮名が多いので、実際には唱えにくい。また、旋律がパターン化してくると、一音一音を異なった仮名で明確に区別する必要もなくなる。

 1685年(貞享2)刊行の『大ぬさ』、1757年(宝暦7)刊行の『浄瑠璃 (じょうるり)三味線独稽古 (ひとりげいこ)』には、このころに成立した「糸の声」、すなわち口三味線 (くちじゃみせん)が記録されている。口三味線は現在も使われている旋律唱法であり、唱え歌うことによりリズムをはっきりと表現し、奏法・音色上の差異を仮名で明示する機能をもつ。使われる仮名の数は少なく、音高や勘所は示さない。しかし、フレーズとしての仮名のまとまりは旋律の記憶を容易にし、旋律をパターン化して認識する助けとなる。

 記譜法そのものを開発する努力も払われた。義太夫節では、「いろは」の仮名を勘所にあて、語りの稽古本の詞章の右に朱 (しゅ)を使って書き込む書法が確立された。地歌では、1762年(宝暦12)『音曲力草 (おんぎょくちからぐさ)』において、リズム・奏法・勘所を詳細に記号化する試みがなされた。1793年(寛政5)の『五線録』は口三味線を中心に据え、勘所記号や拍節記号などを必要に応じて書き添えた実用的な楽譜である。1828年(文政11)刊行の『絃曲大榛抄 (げんきょくたいしんしょう)』は、十二律を援用して三味線と歌の音高を厳密に記譜し、拍節表記にもくふうがある。奏法の手順を文章化して示す試みはすでに『大ぬさ』にみられるが、実用化には無理があった。

 明治に入ると、三味線音楽を五線譜化する試み、吉住小十郎 (よしずみこじゅうろう)による小十郎譜(研精会譜)、その応用である青柳譜 (あおやぎふ)などが現れた。大正期には4世杵屋弥七 (きねややしち)が文化譜を、福岡の大日本家庭音楽会が家庭式三味線譜を発表するなど、さまざまな記譜法が考案されている。ほかに根岸の勘五郎(11世杵屋六左衛門)による大薩摩 (おおざつま)略譜、田中正平 (しょうへい)による三味線速記譜などがある。

[藤田隆則]

三味線音楽

三味線は、伝来当初には箏 (そう)、一節切 (ひとよぎり)尺八などの楽器とともに流行歌曲の演奏に用いられたが、17世紀中ごろからは盲人音楽家によって三味線組歌が始められた。のち、箏、胡弓 (こきゅう)(または尺八)を加えた三曲合奏が生まれ、この伝統は地歌の確立へとつながる。

 浄瑠璃は、琵琶を用いて説話を語る音曲であったが、17世紀初め、三味線を伴奏楽器として採用して以来、急速に発達した。人形芝居では初め説経節 (せっきょうぶし)、金平節 (きんぴらぶし)、播磨節 (はりまぶし)などの浄瑠璃が用いられたが、元禄 (げんろく)期(1688~1704)に竹本義太夫が浄瑠璃諸派を集大成し義太夫節を確立した。義太夫節は人形浄瑠璃を代表する種目として、現在では文楽 (ぶんらく)の中心的音楽になっている。

 一方、歌舞伎 (かぶき)も、一中節 (いっちゅうぶし)、大薩摩節、河東節 (かとうぶし)など、18世紀初頭に展開した浄瑠璃諸種目を吸収した。なかでも、一中節から生まれた豊後節 (ぶんごぶし)は大流行したが、風紀を乱すことを理由に禁止されて分派し、常磐津節や清元節が歌舞伎音楽として残り、新内節が座敷浄瑠璃として確立した。

 長唄は歌舞伎の劇場付きの音楽家たちによって生まれたが、伴奏や効果音としての下座 (げざ)音楽以外に、座敷音楽として技巧的にも高められた種目として成立し、現在に至る。

 江戸末期には、三味線伴奏による小歌曲が流行し、端唄 (はうた)、うた沢とよばれるようになった。明治にはやはり同種の小曲がはやり、小唄として現在に至っている。

 明治期には、ほかに、地方の民謡を三味線の伴奏で歌う俗謡、浪曲、女 (おんな)義太夫などがはやり、一中節、宮薗節 (みやぞのぶし)、荻江節、河東節なども再興され、三味線音楽全盛の時代となった。

 現行の重要種目を列挙すると次のようになる。(1)地歌、(2)長唄、(3)荻江節、(4)山田流箏曲(箏と三味線との合奏)、(5)小歌曲類――端唄、うた沢、小唄、(6)浄瑠璃――義太夫節、一中節、河東節、宮薗節、新内節、常磐津節、富本節 (とみもとぶし)、清元節、浪曲 (ろうきょく)、(7)民謡や郷土芸能、(8)新日本音楽などの現代邦楽。

 以上に述べた三味線音楽は便宜的に、歌物 (うたいもの)と語物 (かたりもの)に区別される。歌物には、地歌、長唄、荻江節、端唄などの小歌曲類、民謡など、語物には、義太夫節、一中節、浪曲などの浄瑠璃が含まれる。この分類が普及していることから、三味線は歌や語りの伴奏楽器としてとらえられがちであるが、曲の進行に関しては、歌い手や語り手よりも三味線弾きのほうが主導権をもつ場合が多い。1人で弾き語り(歌い)をする場合でも、その学習過程では三味線の旋律がまず規範となる。歌や語りは、三味線の旋律からのずれとして技巧的、美的に高められる。

 長唄の合方 (あいかた)や地歌の手事 (てごと)は、三味線そのものの技巧を聴かせるために一曲中に挿入される器楽演奏部分である。合方には、「砧 (きぬた)の合方」「佃 (つくだ)の合方」「楽 (がく)の合方」などのように固有の名称があり、特定の雰囲気を象徴する音型を他ジャンルの音楽から引用したり、自然音を模倣的に表現したりするなど、表現様式が洗練された。手事では、尺八や箏との間の「掛合い」やヘテロフォニー的音構成の様式化が進められ、声楽から独立した器楽合奏部分として発達した。

 また、歌や語りの合間に置かれる短い独奏部は合 (あい)の手とよばれ、掛け声などを多用しながら、曲を推し進める役割をもち、あらゆる種目にみられる。

[藤田隆則]

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1. さみ‐せん【三味線】
日本国語大辞典
版)〔1867〕「Samisen サミセン 三絃」(2)「さみせんぐさ(三味線草)」の略。(3)「さみせん(三味線)を弾く」の略。[語源](1)線が三本あると
2. さみせん【三味線】[頭見出し]
故事俗信ことわざ大辞典
三味線(さみせん)と蛸(たこ)は血(ち)を狂(くる)わす・三味線(さみせん)は恋(こい)の寄(よ)せ太鼓(だいこ)・三味線(さみせん)を弾(ひ)く
3. さむ‐せん【三味線】
日本国語大辞典
〔名〕「さみせん(三味線)」の変化した語。[発音]〓[0][辞書]言海
4. 三味線画像
日本大百科全書
1757年(宝暦7)刊行の『浄瑠璃じょうるり三味線独稽古ひとりげいこ』には、このころに成立した「糸の声」、すなわち口三味線くちじゃみせんが記録されている。口三味
5. 三味線画像
世界大百科事典
る。平野 健次 三味線 三弦 ゴッタン 石村検校 海老尾 棹(三味線) 中子先 延棹 三折 太棹 細棹 中棹 胴(三味線) ばち(桴∥撥) 京撥 高音 糸(楽器
6. しゃみ‐せん【三味線】画像
日本国語大辞典
三「子守、小買物の苦患を免れ三味線(シャミセン)を引習ひ、十六番の扇の手、目の舞ほど稽古して」(2)「しゃみせんぐさ(三味線草)」の略。(3)「しゃみせん(三味
7. しゃみせん【三味線】[頭見出し]
故事俗信ことわざ大辞典
三味線(しゃみせん)張(は)るのは猫(ねこ)の皮(かわ)、芸者(げいしゃ)の言(い)うことは嘘(うそ)の皮(かわ)・三味線(しゃみせん)弾(ひ)く和尚様(おしょ
8. しゃみせん【三味線】
数え方の辞典
▲挺(丁)、●棹 三味線の柄を「棹」ということから、三味線を「棹」で数えるようになりました。
9. しゃみせん【三味線】画像
国史大辞典
[参考文献]東洋音楽学会編『三味線の研究』(『東洋音楽研究』一四・一五合併号)、同『三味線とその音楽』、平野健次編『三味線組歌全集』(CBSソニーレコード解説書
10. 三味線
日本史年表
1569年〈永禄12 己巳⑤〉 永禄年中 琉球より 三味線 伝来(大怒佐)。
11. 三味線(しゃみせん)
古事類苑
樂舞部 洋巻 第2巻 813ページ
12. しゃみせん【三味線】
歌舞伎事典
強く弾いて打楽器的な効果を出すなど、曲や流派によってさまざまな方法がある。また新しいところでは低音三味線や電気三味線なども作られ、プラスチック製のものもある。【
13. しゃむ‐せん【三味線】
日本国語大辞典
〔名〕「しゃみせん(三味線)」の変化した語。*滑稽本・小野〓〓字尽〔
14. 【三味線】しゃみせん*さみせん
新選漢和辞典Web版
《国》俗曲に用いる三本糸の楽器。
15. しゃみせん【三味線】[方言]
日本方言大辞典
(1)魚しまいさき(縞伊佐木)。 和歌山県海草郡694紀州魚譜(宇井縫蔵)1924(2)→しゃみせんぐさ【三味線草】しゃみせん 弾ひく話がまとまるように横から取
16. しゃみせん【三味線】[標準語索引]
日本方言大辞典
みせん:三味線ごきたん / ごくたん / ごったん胴に皮を張らず、杉の板を張ったしゃみせん:三味線いたじゃんせん歌としゃみせん:三味線うたさんしん急テンポで乱調
17. さみせん‐いと【三味線糸】
日本国語大辞典
〔名〕三味線に用いる糸。絹糸を縒(よ)り合わせたもの。しゃみせんいと。[発音]〓[イ]
18. さみせん‐いり【三味線入】
日本国語大辞典
〔名〕歌舞伎の下座音楽で、鳴物のなかに三味線を入れて演奏すること。しゃみせんいり。[発音]〓[0]
19. さみせん‐うた【三味線歌】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を伴奏として歌う歌。しゃみせんうた。[発音]〓[セ]
20. さみせん‐うり【三味線売】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を売り歩くこと。また、その人。しゃみせんうり。[発音]〓[セ]
21. さみせん‐おんがく【三味線音楽】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を伴奏もしくは主奏とする音楽。しゃみせんおんがく。[発音]サミセンオン〓
22. さみせん‐かずら[‥かづら]【三味線葛】
日本国語大辞典
《しゃみせんかずら》和歌山県692 山口県厚狭郡799 鹿児島県国分市965 《しゃみせんのいとかずら〔三味線糸葛〕》鹿児島県国分市965 [発音]
23. さみせん‐ぐさ【三味線草】
日本国語大辞典
〓[セ][辞書]言海[表記]【三味線草】言海
24. さみせん‐げいしゃ【三味線芸者】
日本国語大辞典
〔名〕芸者で、三味線を弾くことを芸とする者。しゃみせんげいしゃ。[発音]サミセンゲ〓シャ
25. さみせん‐こじき【三味線乞食】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を弾いて銭などをもらいあるく乞食。しゃみせんこじき。[発音]〓[コ]
26. さみせん‐ごま【三味線駒】
日本国語大辞典
〔名〕三味線の胴の上、根緒(ねお)近くにはさんで糸をささえるもの。糸の振動を胴の皮に伝える働きをする。象牙または竹、水牛の角などで作る。しゃみせんごま。駒。[発
27. さみせん‐し【三味線師】
日本国語大辞典
〔名〕三味線の製作、修繕をする人。三味線屋。しゃみせんし。[発音]〓[セ]
28. さみせん‐だこ【三味線胼胝】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を弾くことによって手指にできるたこ。しゃみせんだこ。
29. さみせん‐づる【三味線蔓】
日本国語大辞典
〔名〕植物「かにくさ(蟹草)」の異名。*重訂本草綱目啓蒙〔1847〕一二・隰草「海金沙〈略〉さみせんづる 和州〈略〉其蔓を採、外皮を剥り去ば中に堅き心あり。黄色
30. さみせん‐て【三味線手】画像
日本国語大辞典
〔名〕人形浄瑠璃の人形の手の一つ。人形に三味線を弾かせる時の手で、左手は棹(さお)を持ち糸を押え、右手は撥(ばち)を持って仕掛によって上下させる。「壇浦兜軍記」
31. 三味線と蛸は血を狂わす
故事俗信ことわざ大辞典
あぢな気になるを思へば、誠に三味線と蛸は、血を狂はす物ぞかし」日本俚諺大全(1906~08)「三味線(ミセン)と蛸(タコ)は皿(サラ)を狂(クル)はす」
32. さみせん‐どう【三味線胴】
日本国語大辞典
〔名〕三味線の胴。榠〓(かりん)などを材料にして、四枚の板で枠を作り、猫または犬の皮を張る。しゃみせんどう。[発音]サミセンドー
33. さみせん は 恋(こい)の寄太鼓(よせだいこ)
日本国語大辞典
三味線の音色にひきつけられて遊里にかようようになると、そこで恋がめばえるということ。*譬喩尽〔1786〕六「三味線(サミセン)は恋(コヒ)の寄太鼓(ヨセタイコ)
34. 三味線は恋の寄せ太鼓
故事俗信ことわざ大辞典
三味線の音色は、恋の町である遊里に客を寄せ集める人寄せ太鼓のようなものだ。 譬喩尽(1786)六「三味線(サミセン)は恋(コヒ)の寄太鼓(ヨセタイコ)」
35. さみせん‐ばこ【三味線箱】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を入れる箱。しゃみせんばこ。*随筆・羇旅漫録〔1802〕中「三絃筥(サミセンバコ) げい子の三絃筥は、木地の桐の箱なり」*人情本・仮名文章娘節用〔1
36. さみせん‐ばん【三味線番】
日本国語大辞典
〔名〕江戸時代、江戸新吉原の妓楼で、清掻(すががき)などを三味線で弾く者。新造がこれに当たった。しゃみせんばん。*洒落本・青楼籬の花〔1817〕後章「モシイ梅は
37. さみせん‐ひき【三味線弾】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を弾くことを業とする人。さみひき。しゃみせんひき。*洒落本・妓者呼子鳥〔1777〕二「それそれあれはもと、佐々木幸八といふ、さみせんひきの娘だが、中
38. さみせんひき の 女郎(じょろう)
日本国語大辞典
太鼓女郎。*浮世草子・好色盛衰記〔1688〕一・一「大夫のこらず禿出て見よといふはやりうたに、三味線(サミセン)引の女郎迄すだれをあげて見せは桟敷のごとし」
39. さみせんみみ‐こうろ[‥カウロ]【三味線耳香炉】
日本国語大辞典
〔名〕香炉の一つ。鼎(かなえ)型の香炉で、三味線の海老尾(えびお)のような形の耳が付いているものをいう。冠耳香炉(かむりみみこうろ)。[発音]サミセンミミコーロ
40. さみせん‐もの【三味線物】
日本国語大辞典
〔名〕三味線の伴奏が多い曲。しゃみせんもの。
41. さみせん‐や【三味線屋】
日本国語大辞典
〔名〕(1)三味線の製造、修理、販売をする店。また、その人。三味線師。しゃみせんや。(2)三味線を弾くことを業とする人。しゃみせんや。[発音]
42. さみせん を 弾(ひ)く
日本国語大辞典
01〕「今時もふ堂上や連歌師のたんざくてもござりますめへと三味線(サミセン)をひいておいていきやした」*モダン辞典〔1930〕「三味線引く (俗)自己の利益のた
43. 三味線を弾く
故事俗信ことわざ大辞典
三味線(しゃみせん)を弾く」に同じ。 洒落本・讃極史(1789~1801)「今時もふ堂上や連歌師のたんざくてもござりますめへと三味線(サミセン)をひいておいて
44. しゃみせん‐いと【三味線糸】
日本国語大辞典
〔名〕三味線用の糸。絹糸をより合わせて黄色く染め、蝋でかためたもの。さみせんいと。[発音]〓[イ]
45. しゃみせん‐いり【三味線入】
日本国語大辞典
〔名〕歌舞伎の下座音楽で、鳴物のなかに三味線を入れて演奏すること。三弦入り。さみせんいり。*歌舞伎・四天王楓江戸粧〔1804〕五立「三味線入りのみだれになり」[
46. しゃみせん‐うた【三味線歌】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を伴奏にしてうたう歌。主として地歌・長唄・荻江・小唄・端唄・うた沢などの歌い物をさし、時には浄瑠璃などの語り物をさすこともある。さみせんうた。*苦の
47. しゃみせん‐うり【三味線売】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を売り歩くこと。また、それを業とする人。さみせんうり。[補注]「守貞漫稿‐五」には「三絃売 新古交易する也。或は新古銭を以て之を売る也。三絃数ケを渋
48. しゃみせん‐おんがく【三味線音楽】
日本国語大辞典
〔名〕三味線を伴奏もしくは主奏とする音楽。浄瑠璃・浪花節などの語り物と、地歌・長唄・荻江・端唄・うた沢・小唄などの歌い物とに二大別される。さみせんおんがく。[発
49. シャミセンガイ画像
日本大百科全書
およびそのなかの1種。浅海の砂泥中にすむ小動物で、肉質棒状の肉茎の先に長方形の1対の殻を支える形を三味線に見立てて名づけられた。メカジャ(女冠者)の別名もある。
50. しゃみせん‐がい[‥がひ]【三味線貝】
日本国語大辞典
〔名〕(1)シャミセンガイ科の触手動物の総称。本州・四国・九州の内湾の泥底に穴をほってすみ、特に瀬戸内海・有明海に多い。この仲間は古生代カンブリア紀から現在まで
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