「おくどさん」は「お曲突さん」と書く。「くど」とは「火処(ほど)」を意味しており、前後に「お」と「さん」を付けた最高尊敬語といえるだろう。今日では、火を焚く「かまど」や「かまど」のある場所を意味することばとして使われ、「町家の台所」みたいなイメージで受け取られている場合が多い。だが、本来はかまど神信仰に基づく神様を表したことばである。かまど神とは、「荒神(こうじん)さん」が「かまど」に宿るという民間信仰に基づき、「三宝荒神」を意味している。京都における「三宝荒神」は火伏せ神であり、家の守り神としても大切にされている。

 実際の町家に残っている「おくどさん」では、「かまど」のうちの一つ(通常は大かまど)を「三宝荒神」とし、神棚のように祀っている家が多い。昔はこの「かまど」には、神様の依り代(しろ)となる「榊(さかき)」を欠かさず、火を絶やすこともなかったそうだ。また、「おくどさん」にある「かまど」の数は、縁起の悪い「四」の数を嫌い、「三つかまど」や「五つかまど」、「七つかまど」などの形態が多い。また、「おくどさん」の蓋の形や焚き口には、火難除けの魔除けとして「猪(い)の目」などの装飾が施されている場合が多く、これは家や地域独特の模様となっている。

 今でも薪で火を焚いている「おくどさん」というのは、本当に少なくなってしまったが、昔は焼けるとよい香りを発する栗の皮などを一緒にくべて、「荒神さんを喜ばせていた」というような話を聞いたことがある。京都の町家では「おくどさん」にある荒神棚の伏見人形の「布袋(ほてい)さん」を七体揃え、開運、厄除け、火防(ひぶ)せなどの願いを込めるという風習がある。


愛宕神社の一の鳥居脇にある、あゆよろし・平野屋のおくどさん。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 山尾志桜里(43)と会ったのは8月4日。ビジネス情報誌『エルネオス』の対談だった。四ツ谷駅にほど近い喫茶店の2階。

 少し遅れてきた山尾は、息を切らしながら「すいません」と一人で入ってきた。

 少し前に蓮舫民進党代表が辞任を発表していた。2回生ながら、民進党の政調会長に抜擢され、匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね」を国会で取り上げ、待機児童問題を前に進めるなど、山尾は存在感を増していた

 私は政治家が嫌いだ。連載対談で会った政治家は数人しかいない。それも中身のある話を聞けたことは一度もない。

 だが、山尾と自由党の森ゆうこには「会ってみたい」と思わせる何かがあった。質問の内容はもちろんだが、安倍首相のウソを追い詰める気迫が他の議員とは違った。

 2人の女性議員が安倍首相を追い詰め、稲田朋美、豊田真由子、今井絵理子のおバカ女たちが自ら身体を張って安倍政権を瓦解させていったのである。安倍の提唱する「女性が活躍する社会」が皮肉な形で実現したのだ。

 山尾は子ども時代、ミュージカル『アニー』の主役になり脚光を浴びた。その後、東大法学部に入り司法試験を受けている。

 対談で山尾は「司法試験は6度落ちている。これは自民党の谷垣禎一(さだかず)と同じです」と言っている。その時は焦ったが、「その経験から、粘り強くというか、しつこいタイプになったので、12年の選挙で落選して浪人してもものともせず、ここまで来ております(笑)」(山尾)

 検察官を選んだ理由を「クライアントから依頼されるのではなく、フェアな立場でものをいうのがいい」と思ったからだそうである。

 その後、思うところあって検察官を辞し、2009年、小沢ガールズの一人として民主党から出馬し、当選した。

 検察官の経験が国会質問で生きているかと問うと、「一問目の質問には、向こうも否認するから、二問目が勝負だと質問を組み立てていく」ところが重なるかもしれないと言った。

 民進党の政策がわかりにくい、自民との違いを前面に出すべきだと言うと、民主党政権時代の失敗を踏まえて、今度は必ずやると、政策の一端を熱く話してくれた。

 「具体的に言えば、教育の無償化って民主党時代から言ってますが、保育園から大学まで、基本的には社会が面倒を見ようという政策です。私はそれをやるべきだと思っているんです。そうであれば、最初に『増税させてください』じゃなくて、二年間でもいいから政策を先行させ実現して実感してもらう。
 それでよかったねとなったら、三年目からは負担をお願いする。それぐらい国民の理解を大事にする知恵みたいなものを、政治というのは持たなきゃいけないなと思う」

 長島昭久や細野豪志(ごうし)といった選挙に強い連中が離党しているが、どう思うかと聞いてみた。彼女は決然とこう言った。

 「どこかと組まないとやっていけないような弱い政党や弱い政治家は、どことも組んでもらえないですよ

 当時、前原誠司と枝野幸男が代表選を争い、前原優勢だと言われていた。彼女は前原支持である。

 私は、前原のような古い体質の人間が党の顔になっても支持は広がらない。あなたのような若い人が代表になる時代が早く来てほしいと、本気でエールを送った

 素顔は笑顔が素敵な綺麗なおばちゃんという感じだった。雑誌にはニヤけた私と山尾のツーショットが載っている。

 それから約一月後。前原が代表に選ばれ、山尾が幹事長に内定という報道に、これで民進党が変わると拍手した。

 だが、一転、代表代行に替わり、それも消えてしまった。

 党内から、山尾では党をまとめきれない、力不足だという批判があると報じられたが、理由はそうではなかった。

 9月7日に発売される『週刊文春』(9/14号、以下『文春』)が山尾の不倫を報じているという情報が流れたからだった。

 山尾志桜里がW不倫? バカヤロー! 思わずそう叫んだ。

 9月末から始まる臨時国会で、森ゆうこと並んでパワーアップした山尾が、加計学園問題で安倍首相を追い詰めることを期待していただけに、残念というしかない。

 『文春』によれば、不倫相手は倉持不倫太郎ではない、麟太郎弁護士で、山尾より9歳年下の34歳。

 皮肉なことに「彼の得意分野は企業コンサルタントや離婚・男女問題」(弁護士仲間)。憲法問題についても詳しいそうで、「安倍政権が目指す憲法改正や安保法案に対して批判的な立場を鮮明にしている」(永田町関係者)

 安保問題や皇室問題で議論しているうちに山尾と意気投合したようだ。山尾にはIT実業家の夫と長男がいて、倉持にも妻子がいる。

 9月2日、前原から山尾に「幹事長就任」が内示された日、2人は午後8時ごろ、品川駅近くの高級ホテルに現れたという。

 山尾が先に来てフロントでカードキーを受け取り、足早にエレベーターホールに向かう。

 約20分後、倉持が現れる。赤ワインとビールを持って、フロントを経由せずに直接客室へ。36階のダブルルームで、そこからは東京の夜景が一望できるという。

 その部屋にはベッドが一つしかないと『文春』は書いている。『文春』は後でその部屋に入って確認したのかもしれない。

 2人がホテルをチェックアウトしたのは翌日早朝だったそうだ。その前の8月31日、ホテルニューオータニで開かれた前原陣営の決起集会に顔を出した山尾は、すぐに消え、恵比寿のイタリアンレストランで倉持とグラスを重ねていたという。

 その後、時間差を置いて、倉持が自宅とは別に借りているマンションに入り、山尾が姿を見せたのは翌日の午前2時半だったという。

 「本誌が確認しただけでも、代表選を挟んで、二人は週に四回逢瀬を重ねている」(『文春』)

 『文春』は山尾を直撃している。倉持弁護士とはどのような関係か? 「といわれましても……」。不倫関係にあるんじゃないですか? 「ないですけど」「(取材は)事務所のほうにお願いいたします」、そう言って足早にその場を去ったという。

 倉持のほうは、別宅のマンションに山尾氏は来たか? 「ええっとーー、ないですね。たぶん。記憶にないですね」としどろもどろ。

 『文春』が発売された夜、山尾が民進党を離党すると発表した。桜のように散り際だけは潔くということだろうか。

 山尾は声明文を一方的に読み上げるだけで、記者の質問には一言も答えなかった

 「政策立案や質問作成などの打ち合わせと具体的な作業のため、倉持弁護士とは頻繁にコミュニケーションをとってまいりましたし、こうした打ち合わせや作業は、2人の場合もありましたし、それ以上の複数人である場合もありました。
 打ち合わせ場所については双方の事務所、また会食の席上、こういった場合が相当多数回ありますが、同弁護士のご自宅の場合もありました。また、本件記事記載のホテルについては、私1人で宿泊いたしました。
 倉持弁護士と男女の関係はありません。しかし、誤解を生じさせるような行動で、さまざまな方々にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しお詫びを申し上げます」(山尾)

 涙を必死でこらえる姿が、彼女の激しい後悔と無念さを表していた。

 記者の質問に答えなかったのは「一問目は否認する」という検察官としての常道を踏まえたのかもしれない。しかし、記者から飛んでくるであろう「いい大人がホテルに泊まって男女関係がなかったとはどういうことか」という二問目の質問には答えられない。そう考えたのではないか。

 会見を見ながら「バカな女だ」そう独りごちた。不倫したことを詰(なじ)ったのではない。人間は時としてめしいることがある。政治家が不倫をしようと、私には石を投げる資格などない。

 だが、小なりといえども野党第一党の幹事長に内定していた人間が、自己コントロールができず、欲望のままに男とホテルにしけこむというのは、リーダーとしての資格に著しく欠けると言わざるを得ない。

 前原もつくづくツキのない男である。最初の代表の時は「偽メール事件」の責任を取って辞任した。

 捲土重来(けんどちょうらい)を期して再度代表になったが、早々と党の顔を不倫というスキャンダルで失ってしまった。

 山尾のゲス不倫で民進党は死んだ! そうなればほくそ笑むのは安倍首相である。

 10月のトリプル選挙まで議員辞職せず、その後辞職するのだろうか。自民党の中でも「山尾がいなくなるのは惜しい」という声が出ているようだが、私は同情しない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 『ポスト』がこのところ熱心に取り組んでいるのが、75歳まで年金受け取りを延長して、高齢者を働かせ、搾取しようと画策している政府と役人たちの「謀略」批判である。一部の大企業では65歳まで働けるようにはなってきたが、給与は大幅に下げられ、新入社員でもできる部署へ追いやられる。それが74歳まで続くとしたら、実質的な高齢者棄民政策ではないか。今週の『ポスト』は、民間はそうしておきながら公務員には手厚く遇する「差別政策」を成立させようとしているというのである。「日本死ね!」だな。

第1位 「『老後』も『再雇用』も役人はこんなに優遇される」(『週刊ポスト』9/22号)
第2位 「奇跡の腸内物質『スペルミジン』で長生きしても認知症にならない」(『週刊現代』9/23・30号)
第3位 「斉藤由貴と不倫医師『もっと破廉恥』な写真」(『FLASH』9/26号)

 第3位。『FLASH』という雑誌は、ときどきとんでもないスクープを飛ばす。不倫が報じられた斉藤由貴と医師との「自撮りキス写真」を先週スクープして、斉藤に、「不倫していました」と認めさせたが、今週も斉藤の家に上がり込み、女性もの(斉藤由貴のでは?)のパンツをかぶっている医師の写真が掲載された。
 いくらなんでも、ここまでやるかという破廉恥写真である。
 これも2人のどちらかがスマホで撮った写真であろう。その写真が流出したのである。
 斉藤は、こんなプライバシーを侵害する写真が出るのは許せないと、警察に相談しているというが、恥の上塗りになるのではないか。
 不法に流出したのではないとすると、斉藤の夫か、不倫相手の妻がスマホから盗み出し、流出させたのか。
 モルモン教は離婚を禁止しているから、斉藤は離婚しないそうだが、医師のほうはどうなのか。
 大体こんな写真を撮りあうのが正気の沙汰ではない。斉藤には仕事やCMが回ってこないそうだ。これこそ自業自得であろう。

 第2位。『現代』の健康記事。納豆が体にいいのはよくいわれる。納豆健康法の類はあふれているから、今さらだと思うが、老化を遅らせる「スペルミジン」という物質が含まれ、実験用のマウスだが、スペルミジンを投与したら、約25%も寿命が延びることがわかったそうである。
 アメリカ・テキサス州のテキサスA&M大学のチームの一員、ルユアン・リュウ博士が、実験結果を見てチームのメンバーは歓声を上げたという。
 さらに認知症を防ぐ効果まであるそうだ。また、昨年、パリ第5大学医学部では、イタリアのブルーニコで約800人を対象に、どんな食品をよく食べているかを調べたら、スペルミジンの摂取量が多いほど、心不全などの心血管系の疾患リスクが低いということが明らかになったという。
 特に男性でその傾向が顕著だったそうだ。
 そうして結論は「納豆はすごい」ということなのだ。納豆でもひきわり納豆にはスペルミジンが多く含まれているそうだ。
 納豆か味噌汁をとり、それに加えて肉を食べると、さらにいいというのである。
 今夜はひきわり納豆とアメリカ産のステーキにでもするか。

 第1位。『ポスト』の公務員批判記事。役人は現役時代は給料が安く、その代わり、天下りしてその穴埋めをするのだというのは、昔話になったようだ。
 『ポスト』によれば、民間企業の正社員の平均年収が400万円台なのに、公務員の平均年収は700万円台なのだ。
 さらに60歳定年時の平均退職金は、大卒総合職が2374万円、地方公務員、ノンキャリアの公務員の退職金は平均2315万円、国家公務員は平均2538万円になる。
 このあたりはさほど変わらないと思うかもしれないが、裏では、とんでもないことを企んでいるというのである。
 公務員の定年を65歳にしようというのだ。民間は定年延長といっても会社のお情けで置いてもらうだけで、給料は下がるし、仕事も雑用がほとんどである。
 だが公務員は、給与は下がらず仕事もそのままで、年金が65歳支給開始になる25年に「65歳完全定年制」を実施するスケジュールを立てているというのである。
 様々な優遇をしてもらっているのに、奴らは定年を伸ばし、民間の奴らには75歳まで働け、税金を納めろと鞭でひっぱたいて牛馬のごとくこき使う。
 これでは中国のほうが生きやすいと思ってしまう。こんな国いつでも捨ててやる。そう思わざるを得ない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 雑誌や新聞で、通常の記事と思って読んでいたら、ページの隅のほうに企業の営業日や地図、連絡先が記載されている。そうした体裁のお店紹介記事も多いから、なかなか気づかない場合もあるが、これはじつは「記事広告(記事体広告)」と呼ばれるものだ。「広告のように見えない広告」、もっと嫌らしい言い方をすると「記事に見せかける広告」と説明することができる。

 テレビやラジオでも、番組進行の流れになじませて商品の宣伝コーナーが始まるのを見たことがないだろうか。こうしたマスメディアの手法のことを、広告業界では総称して「ペイドパブリシティ」と呼んでいる。パブリシティは、マスコミの判断により無料で取材してもらうことが多いため、特に「ペイド(料金を払った)」と冠されるわけだ。

 企業が雑誌の一スペースを買い取った場合、執筆に必要な情報が提供され、それをもとに記者がまとめることが多い。この記事には客観的な視点も加えられる。企業に言われるままの、いわゆる「提灯記事」になるのでは、と思われるかもしれない。たしかに、執筆の際に情報の裏取りなどは通常行なわれない。だが一方で、おもねるような記事にもなりにくい。ペイドパブリシティは、それなりに読者側に立った内容のほうが、広告としての伝達性も高くなるからだ。ちなみに、問題のある提灯記事は、「ふつうの」記事の中にこそ紛れ込んでいるのでご注意(やたら取材元のご機嫌をうかがう記者がいるものだ)。

 ペイドパブリシティには様々なかたちがあり、取材をまじえた、広告とは思えない充実した内容もありうる。それでも、テレビなら尺(時間)、雑誌ならページを買い取って、扱いの大きさをコントロールできることは、企業にとって大きなメリットになる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい。」

 「ミサイル通過。ミサイル通過。先程、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい。」

 8月29日、午前6時過ぎ。北関東以北の地域で、携帯電話やスマートフォンから突然、警報音が鳴った。警報の正体は、総務省消防庁の「全国瞬時警報システム」で、通称・Jアラートだ。

 ほどなくして、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は緊急記者会見を開き、北朝鮮が発射したミサイルが日本の上空を通過して、襟裳岬沖の太平洋上に落下したことを報告。北朝鮮の脅威を強調したが、突然の緊急情報に戸惑いを覚えた人も多いのではないだろうか。

 Jアラートは、2007年に運用が始まった国の情報システムで、対処するのに時間的余裕のない緊急を要する事態が発生した場合に、国が直接、国民(住民)に情報を伝えることを目的としている。

 Jアラートの伝達方法は、市町村の防災無線と携帯端末のエリアメールの2種類。

 現在、すべての地方自治体がJアラートに対応しており、総務省消防庁が情報を送信すると、人工衛星を通じて市町村の防災無線が自動的に起動し、屋外スピーカーから緊急情報が流されるようになっている。

 また、携帯電話会社を通じて、個人の携帯端末にエリアメールや緊急速報メールが流されるようになっている。ただし、格安スマホを利用している場合は緊急情報が届かないこともある。緊急情報を受け取りたい場合は、一部の市町村が実施している登録制メールを利用する方法などがある。

 配信される情報は全部で25項目で、「内閣官房による有事関連情報」と「気象庁による気象関連情報」の2つに大別される。

 有事関連情報は弾道ミサイル情報、航空攻撃情報、ゲリラ・特殊部隊攻撃情報、大規模テロ情報など。気象関連情報は、緊急地震速報、大津波警報、津波警報、噴火警報(居住地域)、気象等の特別警報などだ。

 8月29日に流されたのは前者の有事関連情報で、北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、長野の12道県が対象となった。

 今回のJアラートでは、1つめのミサイル発射の情報が流されたのは午前6時02分。その12分後の6時14分には、ミサイルが通過したことを伝える2つ目の情報が流れている。つまり、北朝鮮からミサイルが発射されれば、10分程度で日本の国土に届くというわけだ。

 1つめのJアラートでは、「頑丈な建物や地下に避難して下さい」と警告したが、ほんの数分の出来事に対処できる人はほとんどいなかったはずだ。

 今回は、幸運にもミサイルは日本の上空を通過したが、もしも日本の国土にミサイルが落ちていたら多くの人の尊い命が奪われていた可能性もある。

 一部には、日本政府は今回のミサイル発射を事前につかんでいたという報道もある。本気で国民の命を守ろうと思っているなら、もっと早い段階での情報提供があってしかるべきだろう。

 国民の命にかかわる緊急情報を伝えるJアラートの存在は重要だが、有効活用するためには、個人が対応しうるような情報でなければ、注意喚起ではなく、たんに国民を不安に陥れるだけの狼少年になりかねない。

 いつ起こるかを人間が予測できない自然災害とは異なり、近隣諸国との衝突は外交努力によって有事への発展を避けられるはずだ。北朝鮮をめぐる状況は、日に日に緊迫感を増している。だが、かの国でも、愛する家族のいる普通の人々が暮らしている。最後まで武力に頼らない対話での解決を求めたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 クワガタがリングの上でバトルする「クワレス」など、昆虫イベントを全国の子どもたちに届けているヒーローがいる。その名も「ミヤマ☆仮面」。ミヤマクワガタの化身であるマスクマンで、若き「クワガタ忍者」を従える。

 その生き様は、まさにヒーローと呼ぶにふさわしい壮絶なものだった。ミヤマ☆仮面こと垣原賢人(かきはら・まさひと)氏は、2006年に首のけがで現役を退いた元プロレスラー。幼少期からの趣味を活かして、ミヤマ☆仮面として新たな人生に踏み出すも、2014年に「血液のがん」といわれる悪性リンパ腫が発覚。病魔と闘う中で、筋骨隆々の体もどんどん衰えていった。だが希望は捨てない。ヒーロー不在の中、昆虫イベントを支えたのは、なんと垣原氏の中学生の息子であった。父のようなキャラクター、クワガタ忍者に姿を変えて。

 抗がん剤治療を終えた垣原氏は、いまだ闘病中ではあるが、再びミヤマ☆仮面のマスクを被った。息子との昆虫イベントのステージは、アイドルグループ「バクステ外神田一丁目」のメンバーである娘のMCで進む。それだけではない。今年8月には驚くべきことに、プロレスのリングにも舞い戻った。「藤原組長」こと藤原喜明(ふじわら・よしあき)と対戦し、敗北にほぞをかむその様子は、いまを生きる輝きに満ちている。家族にも、プロレス仲間にも愛されているといえよう。ひと昔前のヒーローと違い、ミヤマ☆仮面に孤独は無縁のようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2017年7月、大枠で合意した。2019年中の発効を目指す。

 協定は日・EUを合わせて世界全体の3割を占める巨大な経済圏が対象となる。これまで以上に日欧間の貿易が盛んになるのはもちろん、企業の取引も活発になる。安倍晋三総理大臣も、「アベノミクスの新たなエンジンが動き出す。経済成長に直結させたい」と期待を寄せる。

 経済連携協定は英語で、Economic Partnership Agreement。経済連携協定は、特定の国や地域との間で関税や貿易障壁を減らしたり、知的財産の保護、投資のルールを決めたりする協定のことを言う。似たような協定にFTA(自由貿易協定)があるが、これはEPAに比べ、より対象を絞ったもので、主に関税やサービス貿易の障壁等について、その削減・撤廃をはかるものだ。

 国際間の貿易・投資を巡っては、最近、米国・トランプ政権のTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、英国のEU離脱問題など、自由貿易体制に暗雲が漂う気配が出ている。そうした中での日欧・EPA大枠合意は、自由貿易体制を立て直す意味合いもある。

 日欧経済が活発化し、保護主義への流れをけん制する一方で、国内農業に影を落とす可能性も指摘されている。欧州からの輸入品との競争が、激しくなるからだ。

 例えば欧州産のチーズや豚肉で関税の一部を撤廃・削減されると、当然だが輸入が拡大し、国内産への影響は必至だ。この場合畜産農家、酪農家などへの対策は急務だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 アメリカで大ブームとなった玩具で、日本でもじわじわとブームが巻き起こっているという。

 手のひらに収まる大きさで、中央が丸く、そこから放射線状に3枚ないし2枚の突起があって、中央部を指で挟み、突起部を弾くと滑らかに勢いよく回転する仕組みとなっている。

 『日本ハンドスピナークラブ』の言によると、遊び方は「勢いよく回して、どのハンドスピナーが一番長く回転するかを競い合う」「ハンドスピナーを一度回しては止め、回しては止め……の作業を繰り返し、無意識状態へと到る」の2つがスタンダードらしいが、指や膝の上に乗せたり、回したまま右手から左手へと移動させたり……と、器用な遊び方をする子どもも多いと聞く。

 さっそく筆者も購入して試してみたが、勢いよく弾けば下手すりゃ5分以上も回転し続け、それをずーっと眺めていると頭がボーッとしてきて、徐々にさまざまな思考・雑念が一時停止していくのが自覚できる。個人的主観であえて言うなら「パチンコ」と効果は似ているのかもしれないけれど、唯一決定的に違うのは、パチンコの場合、台を“回して”大当たりを引けなければ「ヤバイ…」とストレスが、より増していく点にある。

 あと、「禁煙にも良い」との噂もあるが、たしかに煙草一本を我慢してハンドスピナーを弾けば、一日5本くらいは喫煙量が減った……ような気もする。しかし、コレだけで完全禁煙を目指すのは、さすがに虫が良すぎ……なのではなかろうか。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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