オムシとは味噌のこと。味噌を意味する「ムシ」に「オ」を付けた御所ことばの一つで、中世以降に皇族や公家などの高貴な女性が住持であった尼門跡寺院で使われていたことばである。味噌が材料を蒸してつくられるので、この名称が付けられたと言われている。昔から味噌と変わらない言い方で使われている。「オムシノオシル」や「オムシノオツユ」というと、味噌汁を表し、「オムシヅケ」とは味噌漬けのことである。また、柚子味噌のことを言う場合は「ユムシ」となる。

 オムシは、最近でこそ一般には聞かれなくなってきたが、味に関する御所ことばは、京都で長く使い続けられているものが多い。現在もよく聞かれることばとしては、お醤油を意味する「オシタジ」や「ムラサキ」がある。また、関東で一般的な色の濃い濃口(こいくち)醤油は「コークチ」と呼ばれていた。酢のことは「アマリ」と言う。また、「オシロモノ」とは塩のことで、寺院によっては「シロモン」や「オイタモノ」とも呼ばれていた。同じ意味で違う呼称がいろいろ存在する理由は、御所ことばと一口にいっても、実際は寺院や時代に応じていろいろな呼称に変化していたためである。

 味を表すことば遣いは、御所ことば以外でも微妙なニュアンスに富んで面白い。例えば、「うまい」より「おいしい」のほうが京都らしい。「まずい」と言いたいときは、「アジナイ」と言う。味が悪いときは「モムナイ」といって区別をする。食べられないほど辛い(塩辛い)ときは「ダダカライ」といい、「ダダ」は結構いろいろな場面で使われている。


松尾大社(西京区嵐山)は、酒造発祥説のある出雲松尾神社とともに、酒造神である松尾様こと久斯之神(くすのかみ)を祀る。米や大豆を発酵させ、酒や味噌を造り出したとき、古人は醸成(かみなし)た見えないものに対し、祈りを捧げていたのである。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 日本のメディアは機能していない。本来メディアは情報を伝えるだけではなく、権力を監視するという重要な役割がある。だが、今のメディアのほとんどが権力に取り込まれ“ポチ”化し、御用メディアと堕している。その典型なのが、安倍首相が強引に会長に据えた籾井(もみい)NHKであることは言うまでもない。

 『週刊ポスト』(4/15号、以下『ポスト』)は、NHKに報道局員だけが知る「秘密のルール」があると報じている。

 政治報道部には国会中継「する日」「しない日」の決め方があるという。NHKは首相の所信表明演説や重要法案の審議がある日は国会から生中継する。国会中継には「全会派(全政党)が審議に出席する日を選ぶ」というルールがある。

 だが、安保法案審議で大荒れになった昨年7月15日の衆院安保特別委員会をNHKは放映しなかった。視聴者の抗議が殺到したが、NHKはその理由を「全会派がそろうかどうか、直前まではっきりしなかった」ためと弁明した。

 このルールを“利用”すると、与党側は都合の悪い審議を放映中止に追い込めると『ポスト』は言う。実際、13年5月8日の参院予算委員会で自民党の川口順子(よりこ)環境委員長(当時)が国会の許可なく中国滞在を延長したことに全野党が反発、安倍首相を追及していたが、自民党はこの審議を中継させないために「与党議員の審議拒否」という前代未聞の汚いやり方をして、NHKは「全会派出席ではない」として中継を中止したのだ。

   NHKはかつて番組制作費の不正支出問題などで海老沢勝二会長(当時)が参考人招致された国会の中継をやらずに批判を浴びた。そのため籾井勝人(かつと)会長の下で起きた数々の不祥事が国会で追及されたときには、籾井氏の答弁を中継している。

 そのとき、籾井氏の後ろの席からメモを渡すNHK職員の姿が雑誌メディアに報じられたため、「答弁待ちの時は会長が映らないように気をつけている」(NHK関係者)そうだ。これを「モミールール」という。

 籾井会長が就任当初「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と発言して問題になり、撤回して謝罪したが、原発再稼働や安保法制反対のデモに対しては、デリケートな対応を迫られるそうである。

 今は重要なデモは報じるが、「ただし、同時に番組内で政府の立場・主張もしっかり取り上げることでバランスに配慮している」(30代NHK職員)。報道しないで視聴者に怒られるのは怖いが、政府に睨まれるのはもっと怖いということだ。

 政治家を呼んできて議論させる『日曜討論』という番組があるが、これに「NHKの杓子定規な『政治的公平の原則』」がよく出ていると『ポスト』は言っている。

 司会者が自民から共産、社民まで出席者を順に指名し「原則、出演者は秒単位まで同じ時間発言させる」(NHK報道スタッフ)ことを徹底させているそうだ。この番組のときは画面には映らないスタジオのカメラマンたちもスーツ着用が原則だという。

 NHKの予算・決算は国会承認が必要だから、国会議員、特に与党議員に弱いといわれるが、衆参の予算審議の模様は深夜0時過ぎから4~5時間、ノーカットで録画放映される。これにもルールがあると野党の総務委員経験者が明かしている。

 「NHKは自社の予算案を通してほしいから、この深夜の国会中継では与野党の総務委員全員の顔を公平に同じ時間だけアップで映してサービスする習慣がある」

 各党も委員全員を質問に立たせ、地元支援者に「真面目に仕事をやっている」ことをアピールするのだ。

 選挙報道は、民放などでは各党党首の街頭演説をニュースで流すとき、隣にいる候補者の顔や名前の書かれたタスキにモザイクがかけられることが多いが、NHKではこのモザイクは極力使わないという不文律があるそうだ。なぜなのだろう。そのために、カメラに映ろうとしてくる候補者を、カメラ操作や編集でわからないようにするのが大変だという。

 NHKは企業名や商品名、キャラクター名を使わないことで知られる。そのため商標である「テトラポッド」を「消波ブロック」と言い換えたり、山口百恵が紅白で歌った歌詞にある「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と歌わせたりしたことがある。

 だが最近は変わってきているようで、ツイッターやフェイスブックはそのまま社名を使うことにしているそうだ。当然だろう。そのために年に数回、全国の支局デスク宛にFAXで「用語統一連絡」が伝えられるそうだ。

 最近はスタジアム名に企業名が入ったものも多くなってきている。「ヤフオク!ドーム」や「味の素スタジアム」、大阪場所の会場である大阪府立体育会館も昨年から「エディオンアリーナ大阪」になった。どうしても使用しなければならない場合のみ、原則1回だけにしているそうだ。

 ゴールデンウィークがNHKでは「放送禁止用語」だって知ってました? オイルショックの頃、ゴールデンウィークと言ったら、「のんきに休んでいられないのに何のつもりだ!」と視聴者からお叱りを受けて以来「大型連休」と言い換え、以来、今に至るまで変えていないという。

 普段何気なく見ているニュースだが、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」は、どこで線引きをするのか、なかなか難しい。素朴な疑問にNHK放送文化研究所のサイトでは、「一概には決められません。(中略)地域・季節によって異なるのです」と書いてあるそうだ。

 天気予報にもNHKルールがある。台風などの報道の場合、民放はアナウンサーが暴風雨の中で吹き飛ばされそうになりながら決死的生中継を行なうのがウリになっているが、さすがにNHKはこうした上陸ポイントからの実況はやらない。

 「視聴者に『外出は危険』と呼び掛けているのに、わざわざ記者を危険な波打ち際に立たせたら、同じように見物に行く人が出てしまう。それでは防災や減災に逆行する」(報道デスク)

 これは納得。とまあ、NHKならではの“掟”があるようだが、国民がNHKに望んでいるのは、われわれの側に立った正確な報道で、権力者の言いなりになり、彼らの都合のいい情報だけを垂れ流すNHKでないことは言うまでもない。

 この春の番組改編でNHK『クローズアップ現代』の国谷裕子(くにや・ひろこ)氏、TBS『NEWS23』の岸井成格(しげただ)氏、テレビ朝日『報道ステーション』の古舘伊知郎氏が降板した。中でも岸井氏の発言に過剰反応した高市早苗総務相が、政治的な公平性を欠けば電波を停止するなどと暴言を吐いたり、ウルトラ保守の集まりである任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」が、TBSに対して放送法に違反する、スポンサーに圧力をかけるなどと声明を出した。

 TBSは放送法違反を否定した上で、声明について「弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない」などとするコメントを発表した。当然のことである。

 だが、間違いなくテレビ局への安倍政権の圧力は強まっており、現場が萎縮してきている。安倍首相らが言う「公正中立な報道」とは、政府の言うことをそのまま垂れ流していればいい、ということである。NHKのようになれ、ということである。そんなテレビ局や新聞がいくつあっても国民の知る権利に応えられはしない。参議院選で大勝して憲法改正を目論む安倍首相と対峙してどう切り結ぶのか。戦後、メディアにいる人間の覚悟が今ほど求められている時代はない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 テレビ、新聞にできないことをやるのが週刊誌の役割である。このところ「不倫報道」にばかり偏りすぎたきらいはあるが、ようやく週刊誌本来の「政権批判」が誌面に載りだしてきた。元々『文春』と『新潮』は保守派『現代』と『ポスト』はリベラル派だが、このところリベラル雑誌の旗色が悪かった。「死ぬまでSEX」や株が上がるか下がるかにばかり誌面を割いていたからであろう。ようやく軟派ネタも尽き、株で一儲けもできそうもないと悟ったのであろうか、安倍政権批判に腰を入れだした。注目である。

第1位 「吉田羊『40代オトナ女子の恋』は20歳年下男子と肉食7連泊!」(『週刊ポスト』4/22号)
第2位 「安倍政権が『選挙対策』で隠蔽する『年金運用失敗で5兆円消失』」(『週刊ポスト』4/22号)
第3位 「自民大敗65議席減 民進74議席増」(『週刊現代』4/23号)/「衆参同日選『安倍首相のホンネ』」(『サンデー毎日』4/17号)

 第3位。衆参同日選挙が既定路線のように言われてきているが、『サンデー毎日』だけはやや違った見方をしている。同日選挙最大の障壁は公明党だ。山口代表が「首相が決断すれば、与党はそれを受けて対応する」と発言したことから、同日選挙容認かととらえられているが、公明党の中堅議員はこう言う。

 「その場で、山口さんは安倍さんにダブル選挙について、『政権を失うリスク』という発言もしている。ダブル選になると投票用紙は4枚になる。公明支持層が、その投票用紙に『公明党候補』『自民党候補』などを書き分けるのは大変だし、地域によってそうした態勢は簡単にはとれない」

 山口代表の真意は、自民党との選挙協力は厳しくなりますよと言いたかったというのだ。
 参院選に勝つためには手段を選ばない安倍首相が、負けるリスクまで冒して同日選をやるかどうかは、ギリギリまで情報戦が続くだろうと『サンデー』は見ている。
 自ら憲法改正するチャンスは次の参議院選で勝つことしかない。そのためにバラマキ、保育園支援拡充、学生の奨学金を給付型にと、選挙での争点潰しに躍起になっている。とどめは消費税増税を延期したいが、その判断を国民に問うという自分勝手なテーマを掲げて参議院選を闘うというシナリオは固まっているのであろう。私も同日選はやや遠のいたのではないかなと思うのだが。
 それに『現代』は、7月10日に衆参同日選挙を安倍首相が強行したとしても、言われているような自民大勝ではなく、大惨敗すると予測しているのだ。
 共産党が民進党を中心とした「野党連合」に協力すれば、『現代』のシミュレートによれば、自民党225議席(マイナス65議席)、民進党169議席(プラス74議席)になるというのだ。
 自民党は2回の直近の総選挙で約2550万票前後獲得しているが、民進党と共産党を合わせると1900万票、社民党、生活の党、旧維新の党の票が加われば、2000万票を超えるからそうなるという。
 投票率がどうなるかにもよるが、前回のような低いものにはならないだろう。組織票に若者たちの票が新たに加われば、さらに大きな票を野党が得る可能性はある。
 そうした「リスク」を考えても、安倍首相が同日選に踏み切る度胸はないのではないか。

 第2位。『ポスト』が報じているようにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、株で運用している部分で大きく損失を出していることは間違いない。
 そのために「厚労省から出向している三石博之・審議役を中心に、内部の会議で年金積立金の運用実績の公表を参院選後の『7月29日』に延期する方針を決定した。『選挙が終わるまで国民に巨額損失を隠し通す』という露骨な選挙対策である」(『ポスト』)
 ではどれぐらいの損失になるのか。

「野村證券チーフ財政アナリストの西川昌宏氏の試算によると、15年度の年間年金運用実績は外国株式がマイナス3・6兆円、国内株式はマイナス3・5兆円、外国債券マイナス5000億円で3部門合わせると7兆6000億円の大赤字だ(東京新聞、4月3日付朝刊)」(『ポスト』)

 国内債券がかろうじて2.6兆円の黒字だから、損失額は5兆円ということになる。これが裏付けられれば、消えた年金どころの騒ぎではなく、安倍内閣は崩壊すること間違いない。
 選挙前に発表しなくても、これだけ株価が低迷しているのだから、相当な損失を出していることはみんなが知っている。
 アベノミクスが完全に失敗したことは隠しようがない。安倍には早く退陣してもらうのが、日本、否、世界のためだと思う。

 第1位。週刊誌に必要なのは「選択と集中」だ。スクープを連発している『文春』にばかり優れた記者が多いわけではない。それを今週は『ポスト』が見せてくれた。『ポスト』に拍手だ。
 吉田羊(「ひつじ」ではなく「よう」と読む)は年齢を明らかにしていないらしいが、ネットには42歳と出ている。
 今年は映画『嫌な女』『SCOOP!』など4本の公開を控え、NHKの大河ドラマ『真田丸』にも出演、CMも12本というまさに売れっ子の羊ちゃんである。
 だが、彼女の女優人生は順調ではなかったという。小劇場の劇団員として鳴かず飛ばずだったが、今の事務所のマネージャーが目を付け、二人三脚で活動を続け、14年に放送されたフジテレビ系のドラマ『HERO』で木村拓哉の同僚の検事役でブレイクしたという。
 酸いも甘いも噛み分けたアラフォーが選んだのはどんな彼氏か?
 3月下旬の夜10時過ぎ、吉田の自宅マンションから長身の若い男が出てきた。彼から遅れること15秒後に、吉田も出てくる。
 2人が向かったのは近くにあるアジア料理店だった。店を出た2人は手を握り、吉田の自宅に戻り2人きりの時間を過ごしたという。この日から2人の「7日間にわたる“連泊”が始まった──」(『ポスト』)というのだ。7日間も見張っていたのかね? ご苦労なことだ。
 この相手の男はジャニーズ事務所所属の『Hey! Say! JUMP』の中島裕翔(ゆうと)(22)というそうだ。誰でもいいが、グループ名はもう少しわかりやすくしてくれないかね。何と読むのか?(編集部註:ヘイ! セイ! ジャンプ)
 実に年の差は約20歳。これまで吉田は8歳下の男と付き合ったことは話しているそうだ。2人は行きつけのバーのオーナーを介して仲が深まったという。
 吉田の知人が、吉田は振り回されるのが好きで、相手次第でMにもSにもなれるという。だから年下でも大丈夫なんだそうだ。肉食系が草食系に見える若い彼氏を調教しているということか。それとも調教されているのだろうか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ツイッターなどで話題の「電池切れ画像」。もちろん、家電製品とは関係がない。それまで活動的に見えたのに、いきなり気が抜けてボーッとした状態、あるいは眠ってしまった状態のショットである。あたかも「電池が切れた」かのように見えるというわけだ。特に最近人気なのが、「我が子の電池切れ画像」のようだ。

 おさなごが力尽きた様子は、愛くるしいことこの上ない。なぜそんなポーズになったのか、大人ではありえないような寝姿がなんともいえずユーモラスである。お尻を高く上げて土下座のようになっていたり、行き倒れのように突っ伏していたり。ときに新体操のような姿勢で、関節を痛めないのかと心配になってしまうが、顔をのぞけばスヤスヤで拍子抜け……というおぼえがある子育て世代は多いだろう。なにかと気ぜわしい現代社会。ネット上に落ちている電池切れ画像は、ホッと一息つくためのいやしの“ツール”として機能しているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 粒子線治療は、悪性新生物(がん)の治療に使われる放射線療法のひとつ。比較的新しい治療法で、利用する放射線の種類から、そう呼ばれている。

 粒子線は、水素や炭素の原子核など極めて小さな粒子を利用した放射線だ。その中でも、いちばん軽い元素である水素を用いたものが「陽子線治療」、それよりも重い粒子(主に炭素イオン)を使うものが「重粒子線治療」だ。

 従来からある放射線は、エックス線やガンマ線など電磁波を用いた光子線と呼ばれるもので、体内を通り抜ける性質を持っている。そのため、正常な細胞にも照射される。

 一方、粒子線は、体の内部に潜んでいるがんの病巣を狙い撃ちできるので、周囲にある正常な細胞へのダメージを抑えられると言われている。

 また、「切らずに治すがんの最先端治療」などと紹介されてきたせいか、従来からあるエックス線やガンマ線による放射線治療より、効果が高いイメージもあるようだ。

 日本の医療制度では、安全性と有効性が確認され、広く一般に普及できると判断されると、健康保険が適用されて、少ない自己負担でだれでも利用できる治療として広まっていく。

 だが、これまで粒子線治療はあくまでも実験段階の治療として、健康保険の効かない先進医療の枠組みで行なわれてきた。

 2016年4月から、「ほかに有効な治療法がない」などの理由で、小児の固形がんへの陽子線治療、切除できない骨がんへの重粒子線治療に限定して保険適用が認められた。だが、そのほかのがんに対しては、粒子線治療の有効性は未知数のままなのだ。

 健康保険が適用されないと、その治療にかかる費用は全額自己負担だ。粒子線治療にかかる費用は施設ごとに異なるが、2015年度の実績報告では、平均で陽子線治療が約268万円、重粒子線治療が約309万円となっている。

 粒子線治療をターゲットとした民間保険、銀行ローンなどもあるが、高いお金を払ったからといって、必ずしもがんが消えるかどうかはわからない。

 民間保険会社の宣伝によって、粒子線治療には「夢の治療」というイメージを持つ人もいるようだが、過大な期待をもつのは禁物だ。

 がんになると、藁にもすがる気持ちになり、健康保険が適用されない治療を試してみたくなることもある。だが、病気の治療には、部位や病状の進行度によって、現段階でもっともふさわしいと専門家が認めた「標準治療」が確立されている。

 出所の確かではない情報に振り回されないように、まずは主治医によく相談して、科学的根拠があり、納得できる治療を選択するようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 納税者が居住地以外の自治体に寄付をすると、住民税などが控除される「ふるさと納税」。もともとは文字通り故郷への寄付を促し、都市部と地方の税収の差を是正する目的の制度だった。が、いま注目されるポイントとしては、やはり「特産品がもらえる」部分が大きいのではないだろうか。特に雑誌の紹介などでは、ほとんどがこの切り口である。

 こうしたブームの火付け役となったのが、株式会社トラストバンクが運営するサイト「ふるさとチョイス」である。代表取締役社長の須永珠代氏は、『日経WOMAN』の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」で大賞にも選ばれた。記事によれば、「このサイトの開設以降、年間100億円に満たなかった全国の自治体へのふるさと納税の寄付額は急増。総務省の統計では、2015年度は4~9月の上半期だけで453億円に上り、年間1000億円に達すると予想」される。一部自治体でクレジットカード決済を導入するなど、感覚的に通販のかたちに寄せて、ふるさと納税の敷居を低くした功績は大きい。

 現在は「ふるぽ」「さとふる」など競合するサイトが多くなっているが、ふるさとチョイスの強みはなんといっても圧倒的な情報量。また、他社と比べると災害支援などに対する取り組みにも熱心だ。業界のパイオニアとして、今後も企業と自治体との新しい関係を築いていきそうである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 北海道新幹線(新青森―新函館北斗間、149キロ)が2016年3月26日、開業した。

 新青森で東北新幹線と接続し、東京―新函館北斗間は最速の「はやぶさ」号で4時間2分で結ばれる。「はやぶさ」は東京―新函館北斗間を1日10往復、繁忙期は臨時列車を含めて13往復まで増強する。気になる運賃は普通車指定席(通常期)で東京―新函館北斗間で2万2690円。同じく仙台―新函館北斗間が1万7310円。

 これで我が国の新幹線は南の九州・鹿児島から北の北海道・函館までつながった。1973年の新幹線整備計画決定から43年。北海道新幹線は2005年5月に着工し、これまで約5500億円の総工費をかけた。2030年度末には札幌までの開業を予定している。

 北海道新幹線の開業により、経済面ではとくに東北と北海道がビジネス、観光などで交流促進が進みそうだ。とくに東北の中心地・仙台との間の経済効果に期待が大きい。

 ただ、懸念もある。北海道新幹線は運行本数が少なく寒冷地を走るため雪対策など維持費もかかる。そのため、年約50億円の赤字が見込まれているのだ。運営するJR北海道はもともと赤字体質で今後、不採算路線の廃止などさらなる経営合理化を迫られる可能性がある。古都・金沢、能登半島、加賀温泉郷など北陸新幹線には有力な観光資源があるが、北海道新幹線もそれに匹敵するものを開発しなければならないだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 思春期を迎えても、さらには20代になっても父親が大好きで大好きでたまらないという女子のこと。

 お金もクルマもあって、社会経験とバブル時代に培ってきた遊びの知識をフルに活用し、娘を目一杯可愛がるイマドキの小綺麗なお父さんに、若い世代の男子たちは太刀打ちできず、最近「月イチで(血の繋がった)パパとのデート」が当たり前となっている──そんな女子が急増中であるらしい。

 また、お父さんが多忙だったり、セコかったり、臭かったり、外見が冴えなかったりする場合は「ママッ子女子」となるケースも多いという。

 目に入れても痛くないほど娘を溺愛するお父さんや、反抗期による家庭内のギクシャク感を恐れるお母さんにとって、これ以上に親孝行な話はないのだが、「彼氏や男友だちよりパパ(あるいはママ)と一緒にいるほうが楽しい」という親離れできない状況がエスカレートし過ぎると、いつの間にか適齢期を逃してしまう危険性も指摘されている。

 ちなみに「パパッ子女子」の反意語(もしくは同義語?)としては「ママッ子男子」が挙げられ、この“組み合わせ”も銀座の三越前あたりではよく見かけることができるが、唯一実在をほぼ確認できないのが「パパッ子男子」だったりする。やはり息子にとって、父親は永遠にライバルでもある……ということか?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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