軽自動車より小さい新タイプの自動車が、公道を走れるようになるという。
 国土交通省は2012年6月、「超小型車」の認定制度を新設すると発表した。道路運送車両法を改正し、新規格として普及を目指す。
 同省によると「軽自動車よりコンパクトで、燃費など環境性能がよい車両」ということになる。具体的には、1~2人乗り程度の電気自動車を想定しているようだ。
 この超小型車、結構、使い途がありそうだ。公共交通機関が機能していない地方では、お年寄りの買い物や病院通いの足になるだろうし、都市部では駐車場確保が面倒なマンションなどで住民のカーシェアリングに利用されそう。出前や郵便配達などでも営業車として需要がのぞめる。鎌倉や京都など、観光地でのレンタル利用もあり得る。
 こうしたことから、自動車メーカーも大きな期待を寄せ、開発作業を本格化させている。「若者の自動車離れ」が指摘されるなかで、新たな市場となるからだ。
 今後の課題はまずその安全性だ。車体が小さく軽量であるため、衝突時に軽自動車並の安全性をどう確保するか。都市部では駐車場の確保や走行を認める道路の設定も必要だ。さらには、保険や車検、免許制度、税制なども利用ニーズに合わせて検討すべきだろう。
 人と自動車の新しい関係を作り出す超小型車に期待したい。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 暑さ寒さも彼岸まで、とよくいうけれど、秋空が爽やかに澄み渡れば、天高く馬肥ゆる秋の到来である。京都の秋は眺めてよし、食べてよし。「虫養いに、お団子でも食べたいなあ」とくれば、「団子もええけど、うどんもええなあ」といった具合である。一時の空腹をしのぐのに忙しい。虫養いとは、無性にわいてくる食欲を抑える行動やそのための軽食そのもののことをいう。標準語では「虫おさえ」というのだが、直接的な表現で味気ない。反対に食欲が転じて、性欲やそのほかの欲求を一時的に満たすという意味で使われることがあるという。
 京都府北部の丹後地方の機屋(はたや)さんで「ムシヤシナヤ」という、意味が同じ似た言葉を聞いたことがある。以前よく使っていたという老齢の職人によれば、「粗末なものだけれど、一時しのぎに」と、軽食やおやつというよりも控えめな感じで使うことが多かったそうだ。
 室町時代に書かれた中国の辞書の注釈・講述書『玉塵抄』(ぎょくじんしょう)には、虫養いがこのように記述されている。
 「尊宿(そんしゅく)長老などに酒をかんをして果子肴をすすむるを叢林(そうりん)のことばに虫やしないの薬と云」(『日本国語大辞典』より)
 「尊宿長老」とは年老いた徳の高い僧や有徳(うとく)の長老のこと。「果子肴」とは間食や酒の肴(さかな)のこと。「叢林」は主に禅院を指す言葉である。では、徳の高い僧侶に空腹感を抑えるための「虫やしないの薬」を勧める意味とはなんであろう。厳しい修行を離れ、時に人間らしくほっとすることも大事である、と諭されているように感じられるのだが、いかがだろうか。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 自民党新総裁。父は安倍晋太郎、母方の祖父は岸信介という政界のサラブレッドだ。5年前に総理大臣に就任するも、体調を理由に1年でその座をほっぽり出した過去を持つため、自民党総裁選では当初、石破茂、石原伸晃(のぶてる)に続いて3番手と見られていたが、尖閣諸島や竹島から吹くナショナリズムの風に乗って、総裁選の決選投票で石破氏に逆転勝利した。
 だが、大方の国民の気持ちは『週刊ポスト』(10/12号、以下『ポスト』)の「『結局、安倍かよ~』というとてつもない空虚感」に代表されるのではないか。
 さらに国民が安倍総裁に不安を感じるのは、彼がウルトラ保守だからでも憲法改正論者だからでもなく、彼の“持病”にある。
 『週刊文春』(10/11号、以下『文春』)によれば、その病は厚労省が難病指定している潰瘍性大腸炎で、安倍総理の秘書官だった井上義行氏は、「辞める二ヶ月ほど前から、総理執務室の後ろにベッドルームをつくり、私服を着た医師を入れて毎日点滴を打っていました。トイレに行く回数は、一日、何十回ではきかないくらい」だったと語っている。
 次の総選挙で自民党が勝てば2度目の安倍総理誕生となるが、激務に耐えられるのだろうか?
 そんな不安を払拭するため「アサコール」という新薬で病気はほぼ完治したと、安倍氏は総裁選の決起集会で3500円のカツカレーを完食する前代未聞のパフォーマンスを見せたのである。『ポスト』は「いつからこの国では、カレー完食が『総理・総裁の条件』になったのか」とあきれ果てている。
 『文春』は、首相辞任の際に発表したのは潰瘍性大腸炎ではなく機能性胃腸障害だったことに着目し、腸疾患の権威である大学教授の言葉をひいて、潰瘍性と機能性は切り離して考えるべきだと指摘。「アサコール」は潰瘍性は抑えられても機能性のほうが発症するリスクはあると追及する。
 「潰瘍性大腸炎も機能性胃腸障害も、完全に治る病気ではないのでコントロールすることが大切です。これらは、がんばりすぎる人がなる病気。患者さんには百点ではなく七十五点合格主義を勧めています」(鳥居内科クリニック・鳥居明院長)
 難問山積する中、75点主義でのんびりやられてはたまらないが、さりとてがんばりすぎて、首脳会談の最中に何度も中座してトイレに行っていたのでは、まともな話し合いなどできはしまい。安倍総裁最大の敵は「獅子身中の虫」にあり。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 2012年に25周年を迎えた長編漫画『ジョジョの奇妙な冒険』をめぐる状況が活気づいている。原画展の開催やスマホとのコラボ、アニメなどのメディアミックスと、ビジネス的にも新たな展開を見せた。もともとカルト的な人気だった本作を、長年にわたって支え続けたのが「ジョジョラー」と呼ばれる熱烈なファンたちだ。ちなみに「ジョジョ」は主人公の愛称。
 作者の荒木飛呂彦(あらき・ひろひこ)氏いわく、物語のテーマは「人間讃歌」。2012年は第8部にあたる『ジョジョリオン』が『ウルトラジャンプ』(集英社)に連載中である。ときに正義の側さえも敗北する緊張感が全編を貫くが、死を前にしても主人公は希望を失わない。そんな漫画の世界にハマり込んだジョジョラーたちは、やがて自身のライフスタイルにまで「ジョジョ」の存在を持ち込むという。「ジョジョ立ち」と呼ばれるキャラクターのアートなポーズをまねてみたり、個性的なセリフ「ジョジョ語」をブログの文章などに引用したりするのがその一例である。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ジェネリック医薬品は、特許切れの先発品と同じ有効成分で作られた後発医薬品だ。通常、新薬の開発には長い年月を要し、300億~1000億円の経費が投じられるため、医薬品メーカーは特許を出願し、20~25年はその薬を独占的に製造販売する権利を得る。ただし、特許期間終了後は人類共通の財産として、誰でもその薬を作れるようになる。すでに公表された有効成分で作るので、ジェネリックの開発費は1億円程度で済み、日本では先発品の2~7割の価格で販売されている。
 ジェネリックは、投与後の血中濃度の検査などから先発品と同等の効果をもつことが確認されている。しかし、主成分が同じでも添加物や製法上の違いから溶け方などが異なり、先発医薬品と完全に同じとは言い切れない面もある。ジェネリックの品質を再評価する「オレンジブック」も発行されているが、いまだ品質や効果に疑問をもつ医師や患者もおり、日本では諸外国ほどジェネリックが普及していない。医療費削減のために、国は2012年度中にジェネリックの使用割合を全体の30%以上に引き上げることを目標としている。2012年4月~6月のジェネリックのシェアは25.3%まで伸びているが、さらなる普及を目指すには、ジェネリックの効果や副作用などの情報をわかりやすく提供していく必要がある。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 華やかなりしバブルの時代、「高学歴」「高収入」「高身長」の「三高」は、女性が結婚に求める重要な目標値だった。世の中は様変わりして、いま伴侶に「平均的な年収」「平凡なルックス」「平穏な性格」の「三平」を望む志向が現れている。この傾向を「三平女子」と表現したのは、「年の差婚」など新語の発信者となることが多いマーケッターの牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)氏。
 結婚相手がいくらレベルの高い男性でも、自分を一段下に見られては日常生活に疲れるだけ。また、高収入の男性が、見通しの甘いビジネスや派手なライフスタイルに向かうというリスクも、バブル後の女性たちは歴史として知っている。いまどきの婚活女性は、無理のない「普通」の結婚生活がよいらしい。いささか夢のない話だが、いっこうに上向かない景気や、家計を共働きで支える現代を反映しているといえるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 この夏、興味深いニュースが配信された。「北極海の海氷面積が観測史上、最小になった」というのである。地球温暖化の影響であることは言うまでもないが、その関連で注目されているのが「北極海航路」。アジアと欧州をつなぐ最短航路のことだ。夏場にかぎって一部運用が行なわれてきたが、海氷面積が小さくなればその期間がより長くなるわけだ。
 国土交通省の資料によると、たとえば横浜港―ハンブルグ港(ドイツ)の場合、スエズ運河経由の南回り航路と比べると航海距離が約6割に短縮されるという。時間短縮はもちろん、運航コストも大幅に削減できるという。
 こうしたことから国土交通省は8月に北極海航路の利用に向けた検討会を設けた。海運会社などからヒアリングなどを行ない、安全面など航路利用の課題を探る。
 北極海は石油や天然ガスなど海底の資源が豊富とされ、その意味でも各国が熱い視線を送っている。
 熱心なのは中国だ。胡錦濤(こ・きんとう)国家主席や温家宝(おん・かほう)首相もデンマークやアイスランドなど沿岸国を訪問し、「北極海外交」に余念がない。航路開発をめぐっても、7~8月に大型砕氷船「雪竜号」を調査航海に派遣した。
 軍事面でもロシアの欧州にある艦隊が短期間に太平洋に展開することも可能となるため、日本の安保政策にも影響がありそうだ。
 日本政府としても対応を急がねばならない。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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