棒鱈は大きな真鱈を材料に、頭と背中、内臓を取り除き、背側から三枚に下ろしたものを日干しにしている。京都で鱈といえば、干物の棒鱈のほうが有名なくらいで、棒鱈煮は正月のお重に欠かせない料理の一つである。昔は日本海航路の北前船(きたまえぶね)で、昆布などの干物と一緒に運ばれてきた。

 材料となる鱈は、雪の降る時期に獲れる魚なので魚偏に雪と書く。生魚は淡泊で癖もほとんどないので、繊細な味の出汁と具材を合わせてちり鍋などにするのが定石である。旬のものを寒鱈と呼んで珍重している地域もある。しかし、寒い季節といえども油断できないほどアシの早い魚で傷みやすい。そのため、昔から干物としての利用も盛んであった。

 干物の棒鱈は、淡泊な鱈とはまるで違う。半身状態の姿は流木のようであり、とても堅く、風味も刺激的である。この干物の中が柔らかくなるまで、毎日水を交換しながら戻すのに一週間はかかる。さらに、調理をはじめてからも、番茶でゆでこぼししながら臭みを取り、柔らかく仕上げるというこつがいる。火にかけては冷まし、時間をかけて煮込むと、こくと適度に歯ごたえのある独特の食材になっている。

 この棒鱈煮を海老芋と炊き合わせたのが京名物「芋棒」である。百年前に芋棒を考案した平野家本家は、円山公園の一角にいまも営まれている老舗である。


鮮魚店で正月用にまとめて戻している棒鱈。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 旧熊本藩主細川家18代。76歳。朝日新聞記者を経て参議院議員、熊本県知事、衆議院議員に転じて8党会派の連立内閣をつくり総理に就任。

 1998年に政界を引退し陶芸家として一家を成していたが、猪瀬直樹都知事の辞職に伴う都知事選挙(2月9日投開票)に「脱原発」を掲げて出馬することで、にわかに注目を集めている。

 細川氏を出馬に踏み切らせたのは、昨年から「原発ゼロでも日本は経済発展できる」と主張し始め、安倍晋三総理との対決色を強めている、やはり元総理の小泉純一郎氏である。

 これで都知事選は実質的に、自民・公明が推す舛添要一元厚労相と細川氏の一騎打ちになる。

 いち早く細川氏出馬を報じた『週刊ポスト』(以下『ポスト』)は1/24号で「細川・小泉連合なら圧勝する」と書いている。その中で自民党都連幹部がこう発言している。

 「かつて小泉さんが自民党総裁選で田中真紀子の応援を得て旋風を起こしたような状況が再現されかねない。“風”が吹けば、猪瀬前都知事をはるかに凌ぐ500万、いや600万票を獲得するかもしれない」

 自民党さえ「細川圧勝」と見ているわけだが、『ポスト』によれば、細川都知事が誕生すると安倍政権には大きなダメージになるという。

 まず、東京都は東京電力の大株主であり、都知事は同社の経営に大きな発言力を持つ。安倍政権は東電柏崎刈羽原発の再稼働を推進しているが、「原発ゼロ」を政策の柱にする細川都知事が誕生すれば、小泉氏とともに真っ先に再稼働反対を突きつけて安倍政権と全面対決になるはずだ。

 それだけではない。東京五輪の利権の構図も根底から覆るという。安倍政権が五輪に合わせて解禁しようとしている「お台場カジノ構想」についても「東京にカジノはいらない」と拒否する可能性があると、細川氏を古くから知る大臣経験者が語っている。

 早くも細川都知事歓迎ムードが漂っているようだが、私はやや懐疑的である。たしかに福島第一原発事故があって以降の国政選挙で、最大の争点になるはずだった「脱原発か否か」がほとんど問われず、再稼働推進派の安倍政権を誕生させてしまったことは、私を含めた脱原発派日本人にとって痛恨の極みである。

 たとえ首長選挙であっても「原発NOかYESか」が初めて争点になるのは歓迎すべきことである。安倍総理たちの「都知事選の争点は他にもある」という批判などに聞く耳は持たなくていい。

 だが、原発ゼロを強く言っているのは小泉氏であり、細川氏はそれにのせられ同調しているだけではないのか。細川氏の欠点は“お殿様”であるためか、自分の信念を貫こうとする強い意志が感じられず、強い人に操られやすいところである。

 総理在任時代、深夜に突然「国民福祉税構想」を発表したことがある。これは彼の裏にいた“豪腕”小沢一郎氏にそそのかされたのだが、与党内からも反対の声が沸き上がると翌日、あっさり白紙撤回してしまったのだ。

 佐川急便からの1億円借り入れ問題にも十分な説明責任を果たさず、嫌気がさしたのか予算審議に入る直前に突然辞任してしまったのである。総理在任期間はわずか9か月だった。

 前回は小沢、今回は小泉という強い人に担がれ「政治改革」「原発ゼロ」と言っているのは、彼らの口移しではなく本心からであろうか。出馬表明のとき、声高に持論を述べる小泉氏に比べて細川氏の影の薄かったことが気がかりである。

 高齢のうえ、熊本県知事を経験しているとはいっても、様々な問題を抱える大都市東京を治める行政手腕には不安もある。

 だが、それらを考慮しても、日本で初の脱原発を争点にした「国民投票」が行なわれる意義が損なわれることはない。原発ゼロにすれば日本経済が失速するなどという批判は戯言である。なぜなら現在、日本にある原発で稼働しているのはゼロなのだから。福島を忘れてしまったかのような風潮に歯止めをかけるためにも、この選挙結果は大きな意味を持つと思う。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週も大沢樹生と元妻・喜多嶋舞との子どもを巡るDNA鑑定騒動が、ワイドショーも参入して話題沸騰である。
 『週刊女性』が大沢側に立ち、『女性自身』が喜多嶋側に立って仁義なき「代理戦争」を繰り広げている。「大沢樹生 喜多嶋父娘に求める『ごめんなさい』の言葉」と『週刊女性』がスクープ第2弾をやれば、『女性自身』はこう呼応している。

第1位 「喜多嶋舞『息子は会見を見て号泣…もうこれ以上彼の心を傷つけないで!』」(『女性自身』1/28号)
 ここで喜多嶋は「断言します。Aの父親は大沢さんです。ですから、大沢さんが言っているようなことはありえない」と断言している。

第2位 「大沢樹生VS.喜多嶋舞“毒親対決”悪いのはどっちだ?」(『週刊文春』1/16号)
 『文春』も参入し、渦中の息子にこう言わせている。
 「二人とも好きにすればって感じです。僕からすればくだらないことです。なんでこんなことで大騒ぎするのか。僕の実の父親だって言われる人の名前も出ているみたいだけど、馬鹿馬鹿しいよ。奥田さんだって急にそんなこと言われてもね…… 。
 僕は今でもパパの子だと信じています。顔つきとか仕草とか似てるんですよ」

 『現代』はやりようがないと考えたのか、ちょっとひねった企画で勝負。
第3位 「『親子のDNA鑑定』『高齢出産』『体外受精』科学の進歩が、新しい苦悩を生む」(『週刊現代』1/25・2/1号)
 ここで、大沢の子どもが「99.9%大沢は僕のお父さん」と言っていることが重要で、それが根源的な親子の形なのに、DNAの技術がそれを侵し始めていると問題提起している。

 親子とは何か? 難しい問題だね。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 この数年、新顔の家電が立て続けにヒット、ないし普及に至っている。ノンフライヤー、ヨナナスメーカー、ルンバに代表されるお掃除ロボットなど、枚挙にいとまがない。韓国のブカンセムズ社が開発したふとん専用のダニクリーナー(掃除機)、「レイコップ」もその一つだ。紫外線の光を照射して細菌を取り除く機能が売り(テレビで紹介された影響もあって、ダニまで死んでしまうイメージがあるが、実際には「弱らせる」といったところではないか。あくまで「除菌」なのである)。この「レイ(光線)」と、「家族の健康を守る警察」を意味するところの「コップ」が商品名の由来だ。

 「ふとん」に特化した視点がニーズを引き出した。共働きの多い現在の日本では、忙しくて「ふとんを干す」ことすらままならない。レイコップに決して安いイメージはないが、期待される効果を考えれば問題ない対価というわけだ。2012年2月から2013年8月までの日本での累計販売台数は50万を超えるという。それまで代理店を通して販売されてきたレイコップだが、2013年には日本法人「レイコップ・ジャパン」も設立され、まだまだ順調に推移しそうだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2013年12月1日に改正道路交通法が施行され、自転車ルールも変更された。背景にあるのは自転車関連事故の増加で、悪質運転への罰則が強化されたのだ。

 自動車対歩行者の交通事故は、2001年の7万1737件から2011年の5万5284件に減少しているのに対して、自転車対歩行者の事故は1807件から2801件へと増加している。全交通事故に対する自転車関連事故の割合も2割を占めている。そこで、事故防止のために新たに作られたのが次の2つの自転車ルールだ。

○警察官による自転車のブレーキ検査(第63条の10、第120条)
 競技用などでブレーキが備わっていなかったり、ブレーキに不備のある自転車による死亡事故や重傷事故を防止するために、警察官による検査、運転継続の禁止が命令できるようになる。
 検査拒否・命令違反をした場合は、5万円以下の罰金。

○路側帯通行を左側に限定(第17条の2)
 これまで、自転車で車道の路側帯を走るときはどちら向きでも構わなかったが、自転車同士の衝突や接触事故を避けるために、自転車などの軽車両が通行できる路側帯は道路の進路左側部分に設けられた路側帯に限定された。
 逆走すると、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金。

 歩道を自転車で通行する場合は、どちら向きでもいいが、車道寄りの部分を徐行運転し、歩行者の進行を妨げないようにしなければならない。時折、ベルを鳴らしながら「どけどけ」と言わんばかりに、我が物顔で歩道を走る自転車を見かけるが、あれはマナー違反というより法律違反。

 道路交通法上、自転車は軽車両という位置づけで、道路標識・表示に従う義務がある。また、ライトがついていなかったり、後部反射板などが備えられていない自転車も乗ることは禁止されている。

 昨今の自転車ブームもあり、2011年は自転車関連事故による死傷者数が14万3738人も出ている。「たかが自転車」と甘く見ていると、大きな事故を起こす可能性も否定できない。一方、無理な追い越しをしたり、路側帯を走る自転車に幅寄せするなど自動車のマナー違反も指摘されており、自転車ばかりを責められない場面もある。誰もが気持ちよく運転するために、今回の法改正を機に自転車だけではなく、自動車の運転でもルールを守り安全運転を心がけたい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 毎年恒例の「ゆるキャラグランプリ」。第1回の「ひこにゃん」(記名投票部門)、第2回の「くまモン」、第3回の「バリィさん」に次いで、2013年の「ご当地部門」を制したのは、栃木県佐野市の「さのまる」であった。「佐野ラーメン」の器を被って、「いもフライ」の剣を持つ侍の姿。すっかり有名になったくまモン、バリィさんからトロフィーを受け取る姿は、例年以上に大きく報道された。

 公式プロフィールによる性別は「おとこのこ」だが、その顔は歴代グランプリの中でも特に愛らしい。チャームポイントとなっている前髪は、ラーメンの縮れ麺をイメージしているようだ。11月には、ポプラ社より絵本『さのまるの たいせつな たからもの』が上梓されるなど、メディア展開も順調だ。

 じつは、途中経過では静岡県浜松市の「出世大名家康くん」が独走していた。2位に終わって地元ではガッカリといったところらしい。「さのまる」も2012年は4位に甘んじていた。家康くん、来年は捲土(けんど)重来なるか。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 文字通り、「共にはかりごとを巡らした時」に処罰を科す規定。テロ集団やマフィア、暴力団などによる国際的な組織犯罪を未然に防ぐことに狙いがある。

 2000年に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」は、各国に対し、懲役・禁錮4年以上の重大犯罪にこの共謀罪を設けることを義務づけている。日本は同条約を03年に国会承認したが、共謀罪の創設を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」は野党の反対で3回も廃案になっている。

 衆参のねじれ解消を受け、政権与党内には再び同改正案の国会提出を模索する動きがある。東京五輪の2020年開催が決まり、テロ対策をこれまで以上に強化する必要があるからだ。

 ただ、日弁連などは「監視社会を招く」として共謀罪に反対。謀議・計画したものの未遂に終わった場合も罪を問われる可能性があることから、国民の間にも不安視する声が少なくない。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



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 テレビに登場するときは必ず髪のセットを欠かさない、生活のメリハリを重視するサザエさん(※註:1月5日分「パジャマ復権」文中の「サザエさんに学べ理論」参照)が、なんと! 初めて髪をおろして!? ──といった、45年も続くアニメ『サザエさん』などの人気テレビ番組で、極めて稀、超レアな放映分のことを指す、主にネット住民の間で多用される隠語の一種。

[類似語]神セブン:AKB48グループでトップ7に君臨するメンバーのこと。

 敬虔なキリスト教・イスラム教・ユダヤ教圏あたりで、こう安易に「神」なる言葉を引用してしまうことは不謹慎な行為にあたるのかもしれないが、無限に近い神をどこにでも宿らせる八百万の神信仰の影響が未だ根強い日本では、サザエさんやAKB48や女子アナのパンチラにすぐ神が宿っても、致し方ないと思われる。

 ちなみに、髪をおろしたサザエさんは、ネット上で「カツラをかぶったカツオ」と揶揄されたりもしているが、筆者個人の意見を言わせていただくと、こっちのほうが妙なエロさがただよい、断然タイプである。

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ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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