大豆を黄な粉よりも浅めに煎ってひいた州浜粉に、水飴や砂糖などを加え練った生地を、型に入れるなどして固めた和菓子のこと。州浜飴ともいう。13世紀の弘安(こうあん)年間に、京都の松寿軒(残念ながら今はない)で創製されたと伝えられている。

 おいしい州浜は豆の豊かな芳香に加え、しっとりと練り上げられた生地が、大豆の味をみっちりと濃縮させる。豆粉ってこんなにおいしかったのかと、食べるたびに感じるものである。現在、京都で州浜だけをつくる菓匠は、江戸前期創業の御洲濱司・植村義次(中京区)だけになってしまった。しかし、2015年2月21日掲載「菜種御供(なたねのごく)」に登場した、竹濱義春老舗の真盛豆(しんせいまめ)をはじめ、豆政(まめまさ、中京区)のすはまだんごなど、州浜の生地からつくられた定評のある茶菓や銘菓は、数え切れないほど存在している。

 州浜という洒落た名前は、水流に運ばれた土がたまり、水面に浮かぶように現れたところを指す「州」に由来する。州の形状を、祝いの飾り物として取り入れた島台(州浜台)に、菓子の切り口が似ていたことから「州浜」という名が付いた。州浜という呼称ができる前は、豆飴という飾り気のない名前であったそうである。

 さらに歴史を遡ると、菓子になる前は、飴粽(ちまき)という、生地を竹の皮で包んだ携行食であったといわれている。その携行食は、伊賀や甲賀の忍者が創案したという説があり、甲賀の里のある滋賀県には、州浜と似た郷土菓子がある。


きな粉とあんの濃密かつ上品な味わいは、和菓子好きにはたまらないもの。写真の州浜はデパ地下でお馴染みの仙太郎「すはま」。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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