森茂暁 著
佐々木導誉(高氏)は佐々木氏の庶流京極家の出で、近江に本拠を据え、初め北条高時に仕えたが、南北朝動乱期に活躍し、足利尊氏を補佐して幕府の基礎固めに尽力した。多くの国の守護を兼ね、旧来の権威を軽視する「ばさら大名」の典型とされた反面、芸能・文芸に堪能な風流の武将であった。文武両道に秀でた魅力的な風雲児の生涯を描く。
[鎌倉|南北朝][武将・将軍]
柴辻俊六 著
安土桃山時代の深謀に富んだ智将。初め信玄に仕えたが、武田氏滅亡後は徳川家康に属し、信濃国小県郡・上野国沼田領を勢力下に収めて大名となった。家康と対立後は次男幸村と共に豊臣秀吉に仕え、「表裏比興の者」と評されながら、織豊期を必死に生き抜く。その処世術と事跡を検証し、領主権力の拡大と闘争過程を解明して実像に迫る、初の伝記。
[戦国|安土桃山|江戸][武将・将軍]
田中善信 著
与謝蕪村は、江戸時代を代表する文人画家である。その作風は俳画渾然の新境地を開き、俳諧では松尾芭蕉と、絵画では池大雅と並び称され多くの傑作を残した。名利に恬淡として人生を精一杯に楽しんで生きた68年の生涯を、修業時代などの4時期に分け、彼の人間性をうかがわせるエピソードを交えて生き生きと描く、初の本格的な伝記。
[江戸][文化人]
武部善人 著
博学・明晰をもって聞えた江戸時代を代表する儒学者。激動する社会経済の実態を見すえ、経済学を「経世済民」の学問と位置づけたその経済理論は、世界にも通用する先進性をもち、師の荻生徂徠を超えるものがあった。誰憚ることのない直言と、多くの門人を育てた謹厳実直な生涯を、「春台学」の系譜と学問的評価、逸話を交えて描く本格的伝記。
[江戸][学者]
高島正人 著
国の将来をになう政治家となるため、父鎌足によって幼少のころより英才教育を受けた稀代の大政治家。大宝・養老律令の編纂をはじめ、銭貨の鋳造、年号の使用、文字・学問の普及など、その高邁な識見と卓越した指導力によって律令政治の実施に尽力する。また皇室との姻戚関係を深め、藤原氏繁栄の礎を築く。不比等の政治と生涯を描く本格的伝記。
[飛鳥|奈良][政治家|官人]
藤井譲治 著
家康を祖父、秀忠を父にもつ「生れながらの将軍」家光。鬱的症状に悩まされながらも、父秀忠、弟忠長、年寄衆との軋轢の中で、幕府の組織・機構を確立する。武家諸法度・参勤交代制によって大名を統制。大きく変動する東アジア世界のなかで鎖国を選択した。その精神を支えたのは家康への敬神である。新たな知見を加えつつ、48年の生涯を描く。
[江戸][武将・将軍]
川田貞夫 著
対外関係の緊迫した幕末、ロシアの国境画定要求を巧みに処理し、寸土を譲ることなく日露和親条約の締結を成し遂げた幕府吏僚の俊秀。軽輩の家から立身して勘定奉行に栄進し、海防事務に参与したが、安政の大獄に坐して隠居、江戸開城の決定を知りピストルで自尽するに至る。その才腕を示す業績の全般と幕臣としての信念に生きた生涯を克明に描く。
[江戸][武人・軍人|政治家]
中川徳之助 著
室町末期の臨済宗一山派の禅僧。五山文芸の後期に活躍した悲運の文人で、漢詩文集『梅花無尽蔵』を残す。近江に生まれ相国寺で修業、旺盛な文学活動を始めるが、応仁の乱で美濃に逃れ、還俗して妻帯し、荒廃した世相に堪えて文学に対する執心を堅持した。太田道灌の招きで江戸を訪ねるなど、幅広い足跡と波瀾に富む生涯を禅林文芸を交え活写する。
[室町|戦国][宗教者|文化人]
鈴木暎一 著
水戸藩主徳川斉昭の腹心にして代表的水戸学者。藩政改革と国家の独立維持に尽瘁する東湖の言動は、生前から全国の有識者視聴の的であり、『弘道館記述義』『回天詩史』「正気歌」などの著作は、幕末期のみならず、近代の人心にまで多大な影響を及ぼす。幽囚8年、しかも安政の大地震で劇的な死をとげる熱血漢波瀾の生涯を生き生きと描く本格的伝記。
[江戸][学者|武人・軍人]
塚本学 著
犬公方・綱吉は名君か暗君か、それとも単なる偏執狂だったのか。在世中以来、綱吉は政策と個人の嗜好とが同一視されてきた。取締と処罰の厳しさで怖れられた生類憐みの令、側用人柳沢吉保の寵用、儒学尊重などは、徳川政権のどんな矛盾を打開しようとした結果だったのか。毀誉褒貶の雑説にまみれた、日本史上、最も評価の分れる将軍の生涯を描く。
[江戸][武将・将軍]
奥田勲 著
和歌より低く評価されていた連歌を、「中世詩」の最高域まで磨き上げた室町時代の連歌師。40余歳で登場し、後に9代将軍足利義尚の連歌の師となり連歌界に君臨した。応仁の乱直前に都から関東へ下り、82歳で世を去るまで頻繁に各地を旅して和歌や連歌の会を催し、『新撰菟玖波(しんせんつくば)集』など数々の著作を遺す。連歌文学と生涯の軌跡を併せ描く。
[室町][宗教者|文化人]
五味文彦 著
はじめて武家政権を開いた平安末期の武将。数々の戦乱を制して、ついには最高権力者となった。実力で政権を奪う時代としての中世を切り開いたその生き方は、後世の武人政治家の範となっていく。同時代の貴族の日記や古文書などを丹念に繙きながら新史料の発掘を試み、政治動向の分析と併せて清盛の実像に迫る。従来の通説を覆した清盛伝の決定版。
[平安][武将・将軍]
松原弘宣 著
平安中期の官僚。海賊鎮圧のために伊予に派遣されたが、関東の平将門の反乱と時を経ずして、瀬戸内で反乱を起こす。純友が傍流ながら摂関家につながる中央官人であったという説に立ち、承平・天慶の乱を読み直す。彼がなぜ海賊集団を組織し、反逆者となったのか。10世紀の東アジアと瀬戸内交易との関係、古代の海賊の分析を交えて、生涯を描く。
[平安][官人|豪族]
寺崎保広 著
奈良時代の皇族政治家。政府の首班として権勢を振るうが、藤原氏の陰謀によって自尽に追込まれる。文化・知識人としても勝れ、和銅経・神亀経を残す。なぜ「長屋王の変」は起きたのか。邸宅跡の発掘に立会った著者が、出土した大量の木簡や資料を基に政変の真相を探り、王家の生活を復元。これまでの研究史と最新の研究成果を活かして生涯を描く。
[飛鳥|奈良][政治家|天皇・皇族]
田辺久子 著
室町前期の武将。将軍足利義教と関東公方持氏という二人の権力者の間で、翻弄されながらも調停を試みた関東管領。度重なる諌止を拒否する持氏と対立し、終に永享の乱で心ならずも持氏を死に追込む。乱の終息後、政界を退き、僧侶となって諸国を放浪し、長門国で没する。儒学に志篤く、足利学校を再興したことでも知られる武将の波乱の生涯を描く。
[室町][武将・将軍]
飛鳥井雅道 著
高知生まれの自由民権思想家。明治国家建設にあたり、『民約訳解』などルソーの厳密な翻訳を著し、フランス革命の文明論的原理を追求、フランス学派の代表と目された。民権理論の中核にありながら運動ではほとんど常に孤立。野党統一を求めつつ果たせなかった、奇人として知られる彼の理想とは何だったのか。挫折と苦悩の生涯を大胆かつ精密に描く。
[明治][思想家|文化人]
元木泰雄 著
平安時代後期の摂政・関白。白河院による関白罷免と籠居を経験、復権後は次男頼長を支援して嫡男忠通と対立、摂関家を分裂させる。その一方で、院や院近臣の圧力に抗しながら衰勢の摂関家を支え、荘園や武力を集積して中世の摂関家の基礎を築いた敏腕の政治家でもあった。失脚と復権を経て保元の乱後の幽閉に至る波乱の生涯と、その人物像を描く。
[平安][官人|政治家]
福田千鶴 著
徳川4代将軍家綱期の老中・大老。「下馬将軍」と称され、権勢をふるった専制政治家と評されるが、意外にもその素顔は、小柄で端正な顔立ちのよく笑う人物で、芸能を好み、また大変な早口で有名であったという。譜代の名門、酒井雅楽頭家に生まれ、政治的資質にも恵まれながら、なぜ後世に悪者として描かれたのか。その生涯と時代に迫る初の伝記。
[江戸][大名]
田口親 著
明治のエコノミスト・政治家・起業家・歴史家。幕臣の家に生まれ維新後の逆境の中で新しい学問と出会い、近代日本建設のため自由貿易主義を掲げ独自の文明史論を展開する。『東京経済雑誌』の創刊、鉄道会社の経営、南洋開発、東京市府会議員・衆議院議員、税制・幣制改革、『国史大系』の編纂刊行等、前人未到の足跡を残した快男児50年の生涯。
[明治][学者|政治家]
中野等 著
九州柳川藩の祖。大友宗麟配下の一武将から豊臣秀吉によって大名に取り立てられる。関ヶ原の敗戦で浪人となるが、徳川秀忠の下、再び大名として返り咲き、晩年家光に重用された。従来、軍記による武勇伝が流布してきたが、一次史料を駆使し生涯を描いた初の伝記。戦国大名島津氏らとの抗争、加藤清正や細川氏との交流なども浮き彫りにする。
[安土桃山|江戸][武将・将軍|大名]