安岡昭男 著
明治初期の外務卿。幕末、西南雄藩佐賀の急進派として活躍し、新政府では樺太国境問題・琉球帰属問題・マリア=ルス号事件を担当。その辣腕(らつわん)により日本の威信を世界に知らしめる。明治六年の政変で下野し、民撰議院設立建白に参加するが、明治天皇の信任篤く、侍講や内務大臣・枢密顧問官を歴任。明治国家建設に賭した威厳満々たる生涯を追跡する。
[江戸|明治][政治家|外交官]
高村直助 著
幕末の薩摩藩家老。「国父」島津久光の絶大な信頼のもと、海軍増強など強藩づくりを推進し、中央政局においては、大政奉還から王政復古を導き出した演出者であった。維新後も外交の矢面に立ったが、その余りに早い死は歴史的評価を著しく低くした。幕末維新史を大胆に見直しながら、東奔西走し大変革を成し遂げた奮闘の生涯を描く初の本格評伝。
[江戸][政治家|武人・軍人]
高澤憲治 著
寛政の改革を断行した江戸後期の老中。徳川吉宗の孫という血脈に加え、奥州白河の藩政改革を評価され、幕閣に登壇。将軍補佐としてあらゆる分野に及ぶ改革政治を展開する一方、ロシアの脅威に直面し、幕末までの基軸となる対外方針を策定。山積する難問に挑む。多数の著述を残し、書画・作庭等の才から文化人として高く評価された希代の生涯を追う。
[江戸][大名|文化人]
今泉淑夫 著
室町中期の禅僧。応仁の乱後、将軍と鹿苑僧録両者の連絡にあたる相国寺蔭凉軒(いんりようけん)主に就任。師季瓊真蘂(きけいしんずい)の後を継ぎ執筆した公務日記『蔭凉軒日録』は、将軍の動静や外交関係、禅宗官寺の人事・仏事など、禅林と世俗の実態をつぶさに語った希有な史料である。足利義政の信任篤く、死の直前まで辞任を許されなかった、室町禅林のキーパースンの生涯。
[室町][宗教者]
池上裕子 著
桶狭間の戦いから本能寺の変まで、一生涯みずからの支配領域(分国)拡大の戦争に明け暮れる。強い主従意識のもとに家臣を指揮・統制し、抵抗勢力には残虐な殺戮に走り鬱憤を散じた。天下統一に邁進した革命家のごとく英雄視する後世の評価を再考。「天下布武」の意味を問い直し、『信長公記(しんちょうこうき)』や信長発給文書などから浮かび上がる等身大の姿を描く。
[戦国|安土桃山][武将・将軍]
山本信吉 著
平安中期の名筆。小野妹子らを輩出した中国通の名族に生まれ、若くして能書(のうしょ)の誉れ高く、醍醐・村上天皇の側近として活躍した。唐の書風から苦心して和様書法を創造し、三跡の代表として名高い。断片的にしか知り得ない経歴を政治・文化などの時代背景から探り、真筆とされる書法の特徴を明らかにして、文化史上に多大な影響を及ぼした生涯に迫る。
[平安][文化人|官人]
高橋慎一朗 著
鎌倉時代中期の政治家。父時氏・兄経時があいついで早世したため、20歳で執権に就任。宝治合戦で三浦氏を滅ぼし、得宗家(とくそうけ)を中心とする幕府体制を完成させる。蘭渓道隆(らんけいどうりゆう)を開山に招き建長寺を創建し、執権を辞任・出家後も、幕府の最高権力者であり続けた。政治家と仏教者のイメージが交錯するところに生まれた伝説の背景にも触れ、その生涯を描く。
[鎌倉][武将・将軍]
沢井実 著
テレビ受像用として知られる「八木・宇田アンテナ」を発明した電気通信工学者。海外で高い評価を博した指向性アンテナ技術が、太平洋戦争で敵国兵器に利用されたため、戦時には科学技術を動員する中核的立場におかれる。戦後は、教育者・国会議員として幅広く活躍。明治以来の国家的課題「後発工業国日本の近代化」に挑んだ一科学技術者の生涯。
[大正|昭和][学者]
茶谷誠一 著
昭和天皇の側近を務めた政治家。大久保利通の次男に生まれ、岩倉遣欧使節団に随行し米国留学。第一次大戦後のパリ講和会議では、次席全権大使として活躍する。協調外交や穏健な政治を支持する立場から、内大臣として昭和天皇の信任を得るが、軍部や右翼の批判を受け隠退する。激動の時代を生きた生涯を通して、近代日本の繁栄と挫折の歴史を描く。
[明治|大正|昭和][政治家|外交官]
家近良樹 著
江戸幕府最後の将軍。討幕の動きに対抗するが、それが不可能だと判断した時点で大政奉還に突如打って出る。鳥羽伏見戦争後、江戸に逃げ帰り謹慎生活に入ることで歴史の表舞台から消え、明治・大正時代は趣味の世界に没頭して過ごした。その複雑な性格と行動から評価の一定しなかった77年間の生涯を、新たな研究動向のうえに立って描き出す。
[江戸|明治][武将・将軍]