ジャパンナレッジは約1500冊以上の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書」サービスです。
➞ジャパンナレッジについて詳しく見る
  1. トップページ
  2. >
  3. カテゴリ一覧
  4. >
  5. 科学・医学
  6. >
  7. 医療・身体
  8. >
  9. 病気・怪我
  10. >
  11. スキン-テア

ジャパンナレッジで閲覧できる『スキン-テア』の辞書・事典・叢書別サンプルページ

日本大百科全書

日本大百科全書(ニッポニカ)
スキン-テア
すきんてあ
skin tear 

加齢などにより脆弱(ぜいじゃく)になった皮膚において、軽微な外力が加わることにより生ずる裂傷。主として高齢者の四肢に発生する外傷性の皮膚潰瘍(かいよう)であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって、表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる。皮膚粗鬆(そしょう)症、皮膚裂傷ともいう。
[安部正敏]2020年5月19日

由来

スキン-テアは正式な病名ではなく、もともとは看護領域で注目された概念である。海外で、スキン-テアの存在が患者・家族から医療従事者による虐待と誤認されるなどの問題が生じたことから、広く認識されるようになった。なお、「スキンテア」との表記ではなく「スキン-テア」と表記するのは、「スキンケア」との混同を避けるためである。
[安部正敏]2020年5月19日

病因

スキン-テアが生ずる原因には、加齢による皮膚変化が関与する。しかし、若年者においても、たとえば副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬による治療を長期に受けていた場合、同様の病態がみられることがある。
 スキン-テアが好発する高齢者の皮膚では、表皮の菲薄(ひはく)化と表皮突起の平坦(へいたん)化、真皮乳頭層の毛細血管係蹄(けいてい)の消失が観察される。この変化はすなわち皮膚の脆弱(ぜいじゃく)化であり、高齢者においてはわずかな摩擦やずれでも容易に表皮剥離(はくり)がおこる機序(メカニズム)を示唆するものである。また、高齢者の表皮では、皮脂分泌の減少、セラミド(細胞間脂質)や天然保湿因子の減少がおこり、バリア機能が低下する。
 一方、真皮の老化には、「生理的老化」と紫外線による「光老化」の二つのメカニズムが関与する。スキン-テアの発症には、この光老化を理解する必要がある。真皮の老化において、生理的老化では、真皮は全体として萎縮(いしゅく)し、コラーゲンおよび細胞外基質のプロテオグリカン(糖タンパク)も減少する。また、弾性線維も減少もしくは変性する。一方、光老化ではコラーゲンの変性、血管壁の肥厚、プロテオグリカンの増加、弾性線維の増加や不規則な斑状(はんじょう)沈着、軽度の血管周囲性の炎症細胞浸潤がみられる。この真皮の脆弱な変化がスキン-テアを誘導する。なお、弾性線維の変化は光老化に特異的な変化であり、日光弾性線維症とよばれる。臨床的に、生理的老化は細かいしわを生じさせ、光老化は深く目だつしわをつくる。
[安部正敏]2020年5月19日

分類

スキン-テアのアセスメント(評価)に関しては諸外国でも報告があるが、わかりやすいのは日本創傷・オストミー・失禁管理学会が推奨する「STAR(Skin Tear Audit Research)分類」である。STAR分類とは、スキン-テアをその程度によりカテゴリー1a、1b、2a、2b、3と五つに分類する概念である。
 カテゴリーの数字と文字には、次の意味がある。すなわち、スキン-テアが生ずると、剥離した皮膚が創面(傷口)に残存する場合とそうでない場合がある。かりに、残存した皮膚を「皮弁」と称すると、1は「皮弁で創面が覆える」、2は「皮弁で創面が覆えない」、3は「皮弁がない」との評価となる。他方、皮弁はその血流の状態から色調が変化し、aは「皮膚と皮弁の色調は周囲と比べ差がない」、bは「皮膚と皮弁の色調は周囲と比べ差がある」ことを意味する。
[安部正敏]2020年5月19日

発症場面の例

スキン-テア発症の具体例としては、以下のような場面がある。
・四肢がベッド柵に擦れて皮膚が裂けた(ずれ)
・絆創膏(ばんそうこう)をはがす際に皮膚が裂けた(摩擦)
・体位変換時に身体を支えていたら皮膚が裂けた(ずれ)
・医療用リストバンドが擦れて皮膚が裂けた(摩擦)
・更衣時に衣服が擦れて皮膚が裂けた(摩擦・ずれ)
・転倒したときに皮膚が裂けた(ずれ)
 なお、褥瘡(じょくそう)や医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)、失禁関連皮膚障害はスキン-テアには含めない。
[安部正敏]2020年5月19日

検査・診断

本症に特異的な臨床検査はなく、臨床症状によって診断される。
[安部正敏]2020年5月19日

予防・治療

患者や高齢者をケアする際は、とくに四肢にかかる外力を極力減らす努力が重要である。
 治療では、原則としてドレッシング材(患部を覆う医療用材料)を用いる。実際には、それ自体により新たな創傷をつくることがないよう、シリコーンメッシュドレッシング、多孔性シリコーンゲルシート、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコーンなどの非固着性の製品が第一選択となる。外用薬を用いてもよい。外用薬は上皮化を促すため、創傷保湿効果を期待して、油脂性軟膏(なんこう)である白色ワセリンやジメチルイソプロピルアズレンを用いる。
 なお、保湿薬の使用によりスキン-テアの発生リスクが軽減されることが知られており、積極的に使用することが推奨される。この場合、低刺激性で塗布する際に摩擦の少ない油性ローション剤や水性フォーム剤などを用いるとよい。
[安部正敏]2020年5月19日

経過・予後

適切にスキン-テアをアセスメントし、ドレッシング材や外用薬を適切に用いれば予後は良好である。
[安部正敏]2020年5月19日

その他

2018年(平成30)の診療報酬改定において、入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価に「スキン-テア」が加えられ、「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」の項目が追加となった。この事実は、病名ではないスキン-テアという概念を、看護師のみならず医療従事者が広く共有し、褥瘡診療においてそのアセスメントに必須(ひっす)の項目として理解し、使用することが求められていることを示すものである。
[安部正敏]2020年5月19日

ジャパンナレッジは、自分だけの専用図書館。
すべての辞書・事典・叢書が一括検索できるので、調査時間が大幅に短縮され、なおかつ充実した検索機能により、紙の辞書ではたどり着けなかった思わぬ発見も。
パソコン・タブレット・スマホからご利用できます。

スキン-テアと同じ病気・怪我カテゴリの記事
スキン-テア(日本大百科全書)
加齢などにより脆弱になった皮膚において、軽微な外力が加わることにより生ずる裂傷。主として高齢者の四肢に発生する外傷性の皮膚潰瘍であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって、表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または表皮および真皮が下層構造から分離
褥瘡(日本大百科全書・世界大百科事典)
身体に加わった外力により、骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流が低下あるいは停止し、この状況が一定時間持続することにより皮膚組織が不可逆的な血流不足となり、局所的に酸素欠乏および低栄養状態となって壊死(えし)に陥った状態。寝たきりで自力での体動が
自己免疫疾患(岩波 生物学辞典)
《同》自己免疫病.本来,病原体などの非自己異物に対する防御機構として誘導される免疫反応が,自己の細胞や組織に対して誘導され(自己免疫),その結果生じる細胞・組織傷害に起因する疾患.自己・非自己を区別する獲得免疫系の自己寛容機構の破綻が原因と考えられるが
小児期・思春期・若者のうつ病(日本大百科全書)
年少・若年者が抑うつ的になる症状。小児うつ病をはじめとして、この年代でも薬物療法の対象になる精神疾患があることが知られている。しかも、小児期や思春期のうつ病は、本人が自分の気持ちをうまく表現できなかったり、いらいら感やいわゆる
うつ病(日本大百科全書・岩波 生物学辞典・イミダス)
気分がひどく落ち込む、何事にも興味をもてなくなる、といった精神症状のために、精神的に強い苦痛を感じたり日常の生活に支障が現れたりしている状態をいう。分類・疫学うつ病は、以前は遺伝や体質による内因が関与している内因性うつ病と
病気・怪我と同じカテゴリの記事をもっと見る


「スキン-テア」は医療に関連のある記事です。
その他の医療に関連する記事
血圧(世界大百科事典・日本大百科全書)
血圧とは血液が血管壁に及ぼす側圧のことである。血液は心臓のポンプ作用によって心臓から送り出され,動脈系から毛細血管に至り,静脈系を経て心臓に還流するが,血圧はこの血管の部位によって異なる。しかし一般に血圧といえば,体循環系における動脈の血圧を指す
ディスレクシア(日本大百科全書・イミダス)
知的機能の発達の遅れや視覚障害がないにもかかわらず、読むことに著しい困難を抱える症状。読むことだけでなく書くことにも困難を伴うことが多く、発達性読み書き障害ともいわれる。発達障害のうち学習障害の中心的な症状である。ディスレクシアのある人は
うつ病(日本大百科全書・岩波 生物学辞典・イミダス)
気分がひどく落ち込む、何事にも興味をもてなくなる、といった精神症状のために、精神的に強い苦痛を感じたり日常の生活に支障が現れたりしている状態をいう。分類・疫学うつ病は、以前は遺伝や体質による内因が関与している内因性うつ病と
小児期・思春期・若者のうつ病(日本大百科全書)
年少・若年者が抑うつ的になる症状。小児うつ病をはじめとして、この年代でも薬物療法の対象になる精神疾患があることが知られている。しかも、小児期や思春期のうつ病は、本人が自分の気持ちをうまく表現できなかったり、いらいら感やいわゆる
サイトカイン・ストーム(イミダス)
免疫の暴走と訳される。サイトカインとは、cyto(細胞)とkine(動作)からなる造語で、細胞から放出されさまざまな細胞間に相互作用をもたらすたんぱく質因子の総称である。サイトカインは標的の細胞に働きかけて、免疫、炎症、生体防御などの面で重要な役割を
医療に関連する記事をもっと見る


ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額600万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のインターネット辞書・事典・叢書サイト」です。日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る