NHK大河ドラマ「光る君へ」特集
ジャパンナレッジは約1700冊以上の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書」サービスです。
➞ジャパンナレッジについて詳しく見る
  1. トップページ
  2. >
  3. カテゴリ一覧
  4. >
  5. 自然
  6. >
  7. 生物
  8. >
  9. 細胞・免疫・ウイルス・物質
  10. >
  11. ポルフィリン

ポルフィリン

ジャパンナレッジで閲覧できる『ポルフィリン』の日本大百科全書・岩波 生物学辞典・世界大百科事典のサンプルページ

日本大百科全書(ニッポニカ)
ポルフィリン
ぽるふぃりん
porphyrin

4個のピロール環が4個の炭素で結合して閉環したポルフィンにメチル基などの側鎖のついた化合物の総称。生体内の酸化還元反応に重要な役割を果たしているヘモグロビン(血色素)、チトクロム類(呼吸色素)、クロロフィル(葉緑素)類などの色素部分を構成する化合物である。したがって、生物界に広くみいだされるが、ポルフィリンの中心構造をつくっているポルフィン自身は天然には存在しない。多くは緑色または赤色を呈し、特異な吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す。

 植物の光合成色素であるクロロフィル類の基本構造は、プロトポルフィリンの4個の窒素原子にマグネシウムが配位したものである。また、1996年、亜鉛が配位したクロロフィル類(バクテリオクロロフィルa)が、酸性環境に生息する光合成細菌にみつかっている。銅を配位したクロロフィルは安定で、食品などへの添加物として利用されている。ヘモグロビンやミオグロビン、チトクロムbなどの色素部分は、プロトポルフィリンに鉄が配位したものである。動物や細菌のポルフィリン類は、グリシンとスクシニルCoA(活性コハク酸)が縮合したものからつくられる。一方、植物のクロロフィル類のポルフィリンは、1990年代以降の研究からグルタミン酸などからつくられることが明らかになっている。

[池内昌彦][馬淵一誠]



プロトポルフィリンの構造[百科マルチメディア]
プロトポルフィリンの構造[百科マルチメディア]

©Shogakukan


岩波 生物学辞典
ポルフィリン
[porphyrin]

4個のピロール環が4個のメチン基=CH–によって互いに結合して閉環したポルフィン(porphin)構造を基体として,その1~8(およびα~γ)の位置にメチル・エチル・ビニルなどの基が置換した誘導体の総称.これらの1~8の側鎖の種類と配列(表)により種々のポルフィリンが存在し,エチオポルフィリンやコプロポルフィリンなどのように2種類の側鎖が各ピロール環に結合する場合には4個,プロトポルフィリン(protoporphyrin)のように側鎖が3種類ある場合には15個の異性体が存在しうる.天然に見られるプロトポルフィリンは,H.Fischerの分類ではⅨ型と呼ばれる.ポルフィリン環は共鳴状態にあり,4個のピロール環は同一の構造をもつ(図中の二重結合の位置は任意に選ばれたもの).π電子共役系が分子全体に広がるため,可視領域に大きな吸収帯を生じ,特異な吸収スペクトルおよび赤色蛍光を示す.天然に見出される生理的に重要なポルフィリン類は,ピロール環の4個のNにFe,Mg,Co,Znが配位して錯体を作って存在する.例えばプロトポルフィリンⅨ(ウロポルフィリノゲンⅢから生合成される)のFe錯体(プロトヘム,単にヘムともいう)はヘモグロビンカタラーゼ,通常のペルオキシダーゼなどの配位原子団として含まれ,シトクロムb型を除きこれと異なった鉄ポルフィリンを含む.クロロクルオロポルフィリン(chlorocruoroporphyrin)にFeが配位したクロロクルオロヘム(chlorocruorohaem)はクロロクルオリンの補欠分子族.Clが1個配位したポルフィリンの三価鉄錯体をヘミン(hemin,プロトヘミンprotohemin)と呼び,これを強アルカリで処理すると,ClがOHで置換されヘマチン(hematin,プロトヘマチンprotohematin)となる.クロロフィルはプロトポルフィリンを経て生合成される.クロロフィルには,クロロフィルcなどのポルフィリン型,クロロフィルabc,バクテリオクロロフィルadeなどピロール核の3,4位の二重結合が一重結合に変化したジヒドロポルフィリン型(クロリン型),バクテリオクロロフィルabgなどのピロール核の3,4位と7,8位の二つの二重結合が一重結合に変化したテトラヒドロポルフィリン型(ジヒドロクロリン型)がある.ヘムdはジヒドロポルフィリン(dihydroporphyrin),シロヘムはテトラヒドロポルフィリンの基本構造をもつ.フェオポルフィリン(pheoporphyrin)は,5番目のE環をもったポルフィリンで,これにMgが結合したものがプロトクロロフィリドである.



改訂新版 世界大百科事典
ポルフィリン
porphyrin

ピロール環4個が4個のメチン基-CH=によって結合,閉環してできるポルフィンporphin核を母体として,その上の1~8(およびα~δ)の位置に置換基がついた誘導体の総称。ポルフィリンに鉄,銅,マグネシウムが結合した分子内錯塩は天然に存在し,生理的に重要なものが少なくない。例えばチトクロム,カタラーゼ,ヘモグロビンなどは鉄ポルフィリン誘導体のヘムやヘマチンを含有しているし,植物の葉緑体にはマグネシウムポルフィリンとしてのクロロフィル(葉緑素)が含まれている。

 ポルフィリンの物理化学的性質は側鎖の種類で大きく変わる。カルボン酸を側鎖にもつものは,ピロール核の第三級窒素の弱塩基性とともに,両性電解質の性質をもつ。カルボキシル基の多いものは親水性が強い。ポルフィリンは一般に赤色を呈し,有機溶媒中で可視部に4本,ソーレー帯Soret band(400nm付近)と呼ばれる部域に1本の吸収極大を有し,また蛍光も呈する。

 各種生物におけるポルフィリン核の生合成は,まずグリシンとスクシニルコエンザイムA(スクシニルCoA)からのミトコンドリア内のALAシンターゼによる5-アミノレブリン酸(ALA)の合成に始まり,次にPBGシンターゼ(ALAデヒドラターゼ)の作用でポルホビリノーゲン(PBG)を生じ,次いで4分子のPBGの縮合によって最初のテトラピロールであるウロポルフィリノーゲンⅢ型が生成する。ポルフィリノーゲンは無色であるが,そのメチレン橋が自動酸化によってメチン橋になると,赤色のポルフィリンとなる。プロトポルフィリンに鉄が酵素を介して導入されると,プロトヘムが生成することになる。なお,プロトポルフィリノーゲンが生成する段階は,通常分子状酸素を要求する。

 ポルフィリンの生合成と分解の代謝過程の異常に由来する遺伝性疾患が種々知られている。その中でポルフィリンまたはその前駆体のALA,PBGなどが尿中に大量に排出される疾患をポルフィリン症porphyriaと呼ぶ。激しい腹痛,嘔吐,精神神経症状などをひき起こす場合がある。
[徳重 正信]

[索引語]
porphyrin ヘム ヘマチン クロロフィル ソーレー帯 Soret band ポルフィリン症 porphyria


表-各種ポルフィリンの側鎖
表-各種ポルフィリンの側鎖

<表中テキスト>
 1 2 3 4 5 6 7 8
 ウロ(Ⅰ型) A P A P A P A P
 ウロ(Ⅲ型) A P A P A P P A
 エチオ(Ⅲ型) M E M E M E E M
 コプロ(Ⅲ型) M P M P M P P M
 プロト(Ⅸ型) M V M V M P P M
 ヘマト(Ⅸ型) M HE M HE M P P M
 ポルフィン核
上記は、日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書サービス「ジャパンナレッジ」のサンプル記事です。

ジャパンナレッジは、自分だけの専用図書館。
すべての辞書・事典・叢書が一括検索できるので、調査時間が大幅に短縮され、なおかつ充実した検索機能により、紙の辞書ではたどり着けなかった思わぬ発見も。
パソコン・タブレット・スマホからご利用できます。


ポルフィリンの関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 313
※検索結果は本ページの作成時点のものであり、実際の検索結果とは異なる場合があります
検索コンテンツ
1. ポルフィリン画像
日本大百科全書
プロトポルフィリンに鉄が配位したものである。動物や細菌のポルフィリン類は、グリシンとスクシニルCoA(活性コハク酸)が縮合したものからつくられる。一方、植物のク
2. ポルフィリン画像
世界大百科事典
要求する。 ポルフィリンの生合成と分解の代謝過程の異常に由来する遺伝性疾患が種々知られている。その中でポルフィリンまたはその前駆体のALA,PBGなどが尿中に大
3. ポルフィリン画像
岩波 生物学辞典
©Shogakukan
12. ポルフィリン : 表-各種ポルフィリンの側鎖画像
世界大百科事典
 1 2 3 4 5 6 7 8 ウロ(Ⅰ型) A P A P A P A P ウロ(Ⅲ型) A P A P A P P A エチオ(Ⅲ型) M E M E M
13. P450[欧文略語]
イミダス 2018
[cytochrome P450]【化学】【生物】ポルフィリンと二価鉄の配位化合物であるヘム基をもつたんぱく質の一群.シトクロムP450,チトクロムP450と
14. アンフィボリック代謝経路
岩波 生物学辞典
あわせもつ代謝経路.代謝経路の中には解糖系のように主として分解的(catabolic)なものと,アミノ酸やポルフィリンの合成系のように合成的(anabolic)
15. 異常血色素症
日本大百科全書
があり、病的な血色素がつくられる病気。血色素はヘムとグロビンでできており、さらにヘムは鉄とポルフィリンからなるが、グロビンを構成しているアミノ酸に異常があるもの
16. 一酸化炭素ヘモグロビン画像
岩波 生物学辞典
本田良行ヘモグロビン赤血球内に約35%の高濃度で含まれる色素タンパクで、血色素ともいう。鉄を含んだポルフィリン化合物のヘムとグロビンというタンパク質からできてい
36. 光線過敏症
世界大百科事典
また,内因性のものは,慢性多形日光疹,日光蕁麻疹(じんましん),種痘様水疱症,色素性乾皮症,ポルフィリン症,ペラグラ,ブルーム症候群,コケイン症候群,全身性エリ
37. 抗突然変異原
岩波 生物学辞典
量体化し,DNAとの結合部位を消失する.また,クロロフィル,ヘミン,銅フタロシアニンなどのポルフィリンやその類似化合物は3環以上の変異原に対して,吸着によるマス
38. 呼吸色素
日本大百科全書
素の運搬にあり、酸素の代謝的消費(酸化)を行う呼吸酵素とは機能を異にする。血色素はいずれもポルフィリンの金属錯塩とタンパク質の複合体であり、可逆的に酸素と結合す
39. コハク酸
日本大百科全書
A(活性コハク酸)が生成する。これはそのまま、ヘモグロビン、クロロフィル、チトクロムなどのポルフィリン環の合成に使われたり、ほかにエネルギーを与えて自らはコハク
40. コバルト
岩波 生物学辞典
Co.原子量58.93.ほとんどの動物・植物の組織に含まれる微量元素.ビタミンB12はコリン環と呼ばれるポルフィリン類似の環状化合物の中心にコバルトが結合した有
41. 細胞内酸素濃度イメージング[ナノテクノロジー]
イミダス 2018
酸素濃度との相関性があることが知られている。リン光の強度を利用した測定法では、リン光を発する色素の、たとえばポルフィリン化合物などを導入して、共焦点レーザー顕微
42. 錯体[化学]
イミダス 2018
金属錯体は生体系でも重要な働きをしており、赤血球の血色素であるヘモグロビン(hemoglobin)に含まれるポルフィリン鉄錯体(iron porphyrin c
43. 錯体化学
世界大百科事典
象とされるようになってきて,たとえばEDTAをはじめとするコンプレキサン類,あるいは色素,ポルフィリン,ヘム,タンパク質などまで取り扱うようになった。さらに19
44. シアノコバラミン
日本大百科全書
基本的な化学構造は二つの成分からなり、一つはポルフィリン環様の構造、もう一つはα(アルファ)-グリコシド結合をもつヌクレオチドである。このポルフィリン環様の構造
45. 色素
日本大百科全書
植物の葉の緑色の色素として知られるクロロフィルはマグネシウム・ポルフィリン誘導体である。有色真珠には遊離ポルフィリンとメタポルフィリンが含まれるが、その総量、割
46. 色素
世界大百科事典
もつ色素。メラニンは動物の皮膚の色を決定している色素で,褐色ないし黒色を示す。(4)ポルフィリン系色素 ポルフィリン環をもつもので,ヘモグロビン,カタラーゼなど
47. 色素
岩波 生物学辞典
関与する構造部分を発色団(chromophore)と呼ぶ.生物は種々の天然色素(メラニン,ポルフィリン,クロロフィル,カロテノイド,フラボノイド,フィコビリン,
48. 色素タンパク質
日本大百科全書
よって色調や生理的機能が異なり、次のように分類することができる。(1)ヘムタンパク質 鉄‐ポルフィリン錯塩とタンパク質との結合体。タンパク質とヘムとの結合比は1
49. 色素蛋白質
岩波 生物学辞典
質の総称.酸素の運搬,酸化還元反応の触媒などの機能を発揮する蛋白質である.(1)鉄錯体:鉄ポルフィリンを含むヘモグロビン,ミオグロビン,エリトロクルオリン,カタ
50. シトクロム画像
岩波 生物学辞典
類によって,a(ホルミルポルフィリン鉄),b(プロトポルフィリン鉄),c(メソポルフィリン誘導体鉄で蛋白質のシステインのS基と共有結合をもつ),d(ジヒドロポル
「ポルフィリン」の情報だけではなく、「ポルフィリン」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶

ポルフィリンと同じ細胞・免疫・ウイルス・物質カテゴリの記事
免疫(岩波 生物学辞典)
動物体内の外来性および内因性の異物を生理的に認識・排除し,個体の恒常性を維持するための機構の総称.元来はヒトや動物に病原体が感染してもそれを体内から排除して発病に至らせない状態をいうが,特に,病原体にすでに自然感染していたり,人為的にワクチン接種を
ウイルス(岩波 生物学辞典・世界大百科事典)
《同》濾過性病原体(filterable microorganism).DNAかRNAのどちらかをゲノムとしてもち,細胞内だけで増殖する感染性の微小構造体.ラテン語で毒(virus)を意味し,後に転じて病原体を意味するようになった.D.I.Ivanovski(1892)はタバコモザイク病が細菌濾過器を通した濾液で感染することを観察,F.LoefflerとP.Frosch(1898)は口蹄疫が同じく
樹立細胞株(岩波 生物学辞典)
《同》株細胞(strain cell).細胞寿命を超えて不死化し,培養条件下で安定に増殖し続けるようになった細胞.染色体構成は二倍体(diploid)から異数体(aneuploid)に変化し,表現形質もがん細胞様に変化していることが多い(⇒二倍体細胞).最初の樹立細胞株は,1943年にW.R.Earleにより,C3H系マウス皮下組織から分離されたL細胞(L cell)で
組織培養(岩波 生物学辞典・日本大百科全書)
[tissue culture]多細胞生物の個体から無菌的に組織片・細胞群を取り出し,適当な条件において生かし続ける技術.広義には,組織片培養と細胞培養を包含する.組織培養では,分離された組織片を同一個体または他の生物体のある場所に移して育てる生体内
ポルフィリン(日本大百科全書・岩波 生物学辞典・世界大百科事典)
4個のピロール環が4個の炭素で結合して閉環したポルフィンにメチル基などの側鎖のついた化合物の総称。生体内の酸化還元反応に重要な役割を果たしているヘモグロビン(血色素)、チトクロム類(呼吸色素)、クロロフィル(葉緑素)類などの色素部分を構成する化合物で
細胞・免疫・ウイルス・物質と同じカテゴリの記事をもっと見る


「ポルフィリン」は医療に関連のある記事です。
その他の医療に関連する記事
花粉症(日本大百科全書・世界大百科事典)
花粉に対するアレルギー反応により、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が引き起こされる現象。おもな症状は、鼻ではくしゃみ、鼻水(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)、眼(め)ではかゆみである。花粉が鼻腔(びくう)粘膜、結膜に付着することにより発症するため、原因と
麻酔(世界大百科事典)
薬の作用により体の一部あるいは全身の知覚と運動機能を一時的に消失させ,手術のような体に侵害を加える際の痛みや精神的苦痛を取り除くことをいう。薬の作用が局所に限られるものを局所麻酔と呼び,全身的に作用するものを全身麻酔と呼ぶ。全身麻酔は通常意識消失を
高温障害(日本大百科全書)
高温度下の労働や運動によって体温調節や循環器系の機能が損なわれたり、水分や塩分などの代謝のバランスを失ったりしておこる障害をいい、熱中症ともよばれる。発生機構の相違から次の三つの病型に大別される。[重田定義]▲熱けいれん症ボイラーなどの火を扱う作業者
熱中症(世界大百科事典)
高温下での労働といった職業的原因で起こる熱射病をいう。日本でも,かなり昔から〈よろけ〉という名称で,鉱山等の高温多湿の環境で働く作業者によく起こった熱中症が記載されている。ごく最近まで高熱のもとでの作業は,鉱山,製鉄,紡績工場,ボイラー室等においてよ
メッセンジャーRNA(岩波 生物学辞典)
mRNAと略記.《同》伝令RNA.遺伝子の情報が蛋白質として発現される過程で,情報の担体として合成されるRNA.ゲノム上の遺伝情報は一定の単位でRNAに転写される.その際,DNA依存性RNAポリメラーゼはDNA上のプロモーター部位を認識してこれと結合
医療に関連する記事をもっと見る


ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のインターネット辞書・事典・叢書サイト」です。日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る▶