廿箇年
一度新宮遷奉」とあり、さらに『延喜式』伊勢大神宮にも「凡大神宮、廿年一度、造
替正殿・宝殿及外幣殿(度会宮、及別宮、余社、造
神殿
之年限准
此)
、皆採
新材
構造、自外諸院新旧通用」と述べられている。なお式年遷宮は、神宮において最も重要な祭儀であるので、式月式日といってその月日次も一定され、豊受大神宮は九月十五日、皇大神宮は同十六日を以て遷宮が行われたのであった。そしてこの式月式日の制は、康永二年十二月二十八日の皇大神宮遷宮以降、変動をみたが、明治二十二年(一八八九)の第五十六回式年遷宮に皇大神宮は十月二日、豊受大神宮は同五日とされ、爾来第五十七回の明治四十二年、第五十八回の昭和四年(一九二九)、第五十九回の同二十八年、そして第六十回の同四十八年はいずれも内宮が十月二日、外宮が同五日と定められている。次に造営工事には、その進捗に伴って山口祭・木本祭・御杣山木本祭・御樋代木奉曳式・御木曳初式・木造始祭・鎮地祭・仮御樋代木伐採式・立柱祭・御形祭・上棟祭・檐付祭・甍祭・御戸祭・御船代祭・洗清・心御柱奉建・杵築祭・後鎮祭・御装束神宝読合・川原大祓・御飾などの数多くの祭典が斎行され、そしていよいよ遷宮の大儀が行われるのである。もちろん新しく作り替えられるのは殿舎ばかりでなく、御霊代以外のすべての神宝・調度品に及ぶことは、『続日本後紀』嘉祥二年(八四九)九月丁巳(七日)条に「遣
左少弁従五位上文室朝臣助雄等
、奉
神宝於伊勢大神宮
、是廿年一度所
奉例也」とあるによって明らかである。これはすべてを新しくすることによって神威の一層の更新(若がえり)を乞い奉る義と解されるのである。なおまた、式年遷宮が行われる理由については、古来種々の説がなされている。いまその代表的なものを列挙すると、(一)社殿の多くは木造建築であるため、一定の期間を経ると耐久力を失うから、二十年、三十年、五十年などの式年を以て改築・修理を行う要があるため、(二)それが神宮のごとく二十年が一周期とされたのは、工匠その他造替に従事する技術者の都合上からで、すなわち一世代を三十年として、その前期十年は父親の手助けとして働き、後期十年は年を取り息子の時代としてみずからは監督の時期とすれば、実際に働き得る期間は前・中期の二十年間とみる考えからとするもの、(三)わが国の神の道は清浄を以て根元とするから、時期を定めて社殿を新しく造替し、清々しいところに神を遷すためとするもの、(四)神が新しい御殿に遷ることによって若返り、より強く大きい力で加護してくれることを信じ祈るため、(五)神の降臨を仰ぐ場合は必ず真新しい住まいに招くという伝統的習俗によるとするもの、(六)原始時代の物の数え方によれば、片手片手で十、そしてそれを裏返すと二十となり、その二十という最大数をもってきたものとする説、等々。おそらくはこれらの諸説が統合された思考のもとで式年造営が行われてきたものと思われる。なお式年遷宮については神宮の例が最も古くから史書にみえるが、その他の古社にあってもこの制は立てられている。貫前神社(十三年目)・賀茂御祖神社(下鴨神社、二十一年目)・春日大社(同)・住吉大社(二十年目)・香取神宮(同)・鹿島神宮(同)などはその一例である。このうち賀茂御祖神社・貫前神社などは今日もその制を厳守、祭儀が存続している。→伊勢神宮(いせじんぐう)神殿の改修造営に際して,神霊を移すこと。この場合,遷宮は伊勢神宮にのみ用い,一般神社では遷座といい,その祭儀を遷宮祭,遷座祭という。伊勢神宮では,7世紀後半の天武朝以来20年に1度〈式年遷宮〉が行われ,中世戦乱期に一時遅延したが,現在まで続いて行われている。古くは式日を外宮は9月15日,内宮は9月16日と定められ,これが例年の神嘗祭(かんなめさい)に当たることから,神殿を新たにして行われる大神嘗祭としての性格を有している。神宮無双の重大儀とされている。神宮では,まったく同一の敷地が並列しておかれ,旧殿から新殿へと20年ごとに神座の位置が変わり,神体を移し終わった旧殿は取り除かれ,その敷地は古殿地(こでんち)と呼ばれる。また,火災や異常のことがあって行う遷宮を〈臨時遷宮〉と呼び,仮殿を設けるので〈仮殿遷宮〉ともいう。
一般神社の遷座祭には,定期と臨時の二つがあり,定期の場合は〈式年遷座祭〉といい,7年,13年,20年,30年,50年等の周期をもって祭儀を執行する。この場合,改修や造営を行おうとするときに神霊を本殿から仮殿(権殿)へ,竣工時に再び本殿に移すが,前者を仮殿遷座祭(外遷宮),後者を本殿遷座祭(正遷宮)と呼ぶ。いずれも神霊の動座を伴うので最も重要な祭儀とされる。このほか,諏訪大社の下社などのように毎年春秋の2回遷座祭が行われる場合もあり,筑波山神社では,これを御座替り祭という。
→式年造替
也」*長秋記‐保延元年〔1135〕八月二二日「九月伊勢遷宮間、畿内国々可
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