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徒然草

ジャパンナレッジで閲覧できる『徒然草』の国史大辞典・世界大百科事典のサンプルページ

国史大辞典
徒然草
つれづれぐさ
鎌倉時代末期から南北朝時代の初めにかけて成立した随筆集。兼好(けんこう、俗名卜部兼好(かねよし))著。上下二巻。北村季吟の『徒然草文段抄(もんだんしょう)』以後、序段以下二百四十三段に章段を分けて記すようになった。書名は、「つれづれ」、すなわち、することもない生活の退屈さ・寂しさを紛らわし、慰めるために書いた「草」、すなわち、取るに足らぬ文章の意である。その成立については、(一)序段から第三二段までは、文保三年(元応元、一三一九)に一応執筆され(第一部)、(二)第三三段から末尾の第二四三段までは、橘純一の考証により、元徳二年(一三三〇)から翌元弘元年(一三三一)にかけて書き遺され(第二部)、(三)しばらくして、建武三年(一三三六)以後の数年間に、この第一部と第二部とが一つにまとめられて、上下二巻に編成されたが、その際、第二部中にいくつかの段が挿入・添加されたもののようである。西尾実の指摘しているように、兼好の世界観たる無常観が、第一部では感傷的、詠嘆的であるのに、第二部になると、実相的、諦観的な深さにまで発展していることも、成立の段階の跡を示すものとして注目される。したがって、この随筆は、鎌倉時代末期の、公武関係の異常に緊張した時代の作品であるが、著者兼好は、本書以前の諸文芸作家よりも、その公家・武家のいずれをも批判し得るような、広く高い立場に立っていることにおいて、大きな前進を示し、したがって、本書は、『神皇正統記』『増鏡』『太平記』などの、同じような立場を取る南北朝時代の諸文芸に先駆している点が著しい。また、公家では、日野資朝(第一五二―一五四段)・西園寺実兼(第一一八・二三一段)・久我(こが)通基(第一九五・一九六段)らの、武家では、北条時頼(第二一五・二一六段)・松下禅尼(第一八四段)・安達泰盛(第一八五段)らの、僧家では、源空(第三九段)・明恵(第一四四段)・盛親(じょうしん、第六〇段)らの、他書にはみられぬ逸話・遺語を記しているほかに、和歌・随筆・物語・史書・説話・有職故実・律令格式・本草(ほんぞう)などにわたる、興趣に富む事実を記した章段を混在させて、表現的にも、変化・錯綜の妙味を示す展開を形成しているのも、『枕草子』の影響を受けながら、それを越えた、独創的な随筆性を確立したものといえる。さらに、兼好自身、俗人として宮廷に仕え、中年で出家した遁世者の身であるところから、本書中には、第一に「世俗」、第二に「仏道」、第三に「遁世」という三つの世界を描き出している。その「世俗」の世界については、貴族から庶民にわたる、その種々相を描き出すとともに、その根柢が恩愛(おんない)であり、名利への欲望であることを明らかに見究めているし、「仏道」では、求道心(ぐどうしん)と慈悲こそその中核をなすものであることを確信しながら、高僧の非凡な言行とともに、一般僧侶の醜態や堕落をも見のがすことなく観察している。さらに、「遁世」においては、有宗(ありむね)入道(第二二四段)・西行(第一〇段)・登蓮法師(第一八八段)・頓阿(とんな、第八二段)・具覚房(第八七段)・行長(ゆきなが)入道(第二二六段)らの逸話・事蹟を記し、特に、兼好自身が遁世者であるところから、「老いぬと知らば、何ぞ、閑(しず)かに居て、身を安くせざる」(第一三四段)といい、「未だ、まことの道を知らずとも、縁を離れて身を閑かにし、事にあづからずして心を安くせんこそ、しばらく楽しぶとも言ひつべけれ」(第七五段)といって、生活の閑暇境と身心の安静境に、老境にある者の遁世生活の原理を発見し、確立している。この三つの世界の拡がりとその成立の原理の究明は、文芸史的にも、精神史的にも、大きな意義を持つものであって、公家階級の読者をめざして書かれた本書が、その自由で大胆で振幅の多い表現によって、後代に多くの読者を獲得している根因をなしている。伝本には、流布本の代表としての烏丸(からすまる)光広本(慶長十八年(一六一三)刊)、最古の写本の正徹本(永享三年(一四三一)書写、静嘉堂蔵、重要文化財)や常縁(じょうえん)本(東常縁(とうのつねより)の書写と伝えられる)などがある。『日本古典文学大系』三〇、『日本古典文学全集』二七、『新潮日本古典集成』、『岩波文庫』などに、注解や口訳を付して収載・刊行されている。
[参考文献]
安良岡康作『徒然草全注釈』(『日本古典評釈・全注釈叢書』)、西尾実『つれづれ草文学の世界』、高乗勲『徒然草の研究―校本と解釈的研究―』、永積安明『徒然草を読む』(『岩波新書』黄一八五)
(安良岡 康作)


改訂新版・世界大百科事典
徒然草
つれづれぐさ

鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。序段〈つれづれなるままに日暮し硯に向かひて,心に映り行くよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば,あやしうこそ物狂ほしけれ〉は,書名の拠る所で,作者の執筆時の状況が示されている。作品の特色をいえば,まず文章表現が卓抜な点で,話題によって漢文訓読体と和文体とを使い分け,厳粛な場面,滑稽な場面等々に応じて,柔軟に語り口を変えている。しかも簡潔を旨とし,冗長に流れることがない。第2に,人間への独自な親近感,信頼感がある。美意識では都人の側に立つが,粗野な田舎人がすべて悪いとはきめつけない。しかも他人の言を多く引き,それに共感することでさりげなく自己主張に代えている。第3に,利己的ともいえるほど人それぞれの生き方の自由を認めている。そしてそこで説かれている生活の知恵は,きわめて現実的である。この随筆は貴族男子の読物として書かれたらしいが,戦乱の時期を通じて歌人,知識人たちにも愛読された。江戸時代には町人の知恵のよりどころとなり,多くの版本が刊行された。〈つれづれ〉の名を付した作品に,井原西鶴の《西鶴俗つれづれ》などがある。
[桑原 博史]

[索引語]
吉田兼好
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5. つれづれぐさ【徒然草】
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6. つれづれぐさ【徒然草】
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鎌倉末期の随筆。二巻。卜部(吉田)兼好著。題名は序段冒頭の語による。主要部分は元弘元年(一三三一)頃の執筆か。全二四四段から成り、作者の随想、見聞などを順不同に ...
7. つれづれぐさ【徒然草】
国史大辞典
[参考文献]安良岡康作『徒然草全注釈』(『日本古典評釈・全注釈叢書』)、西尾実『つれづれ草文学の世界』、高乗勲『徒然草の研究―校本と解釈的研究―』、永積安明『 ...
8. 徒然草(つれづれぐさ)
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9. 徒然草
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12. つれづれぐさしょう【徒然草抄】
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13. つれづれぐさしょう[つれづれぐさセウ]【徒然草抄】
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14. つれづれぐさもんだんしょう【徒然草文段抄】
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16. 『徒然草』[百科マルチメディア]
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22. しゅー【衆】[方言]
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田秋衛)1961 鹿児島県種子島979種子島方言考(井上一男)=鹿児島教育第491号1934徒然草一三四「すべて人に愛楽あいげうせられずして衆に交はるは恥なり」 ...
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26. とよむ【響動】[方言]
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29. ぶん【分】[方言]
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30. ぼろんじ【梵論師】[方言]
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31. まむし(蝮)[方言の地図帳]
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33. わなご【輪―・罠―】[方言]
日本方言大辞典
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34. あい‐あ・う[あひあふ]【相合・相逢】
日本国語大辞典
左府〓」*徒然草〔1331頃〕一六四「世の人あひあふ時、暫くも黙止する事なし。必ず言葉あり」*歌謡・松の葉〔1 ...
35. あい‐・いる[あひゐる]【相居】
日本国語大辞典
四年一一月二二日「つぼね、ひとまを四つにへだてて二三人づつあひいたれば、せばきもわりなし」*徒然草〔1331頃〕三〇「中陰のほど、山里などにうつろひて、便あしく ...
36. あい‐かたら・う[あひかたらふ]【相語】
日本国語大辞典
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37. あい‐ぎょう[:ギャウ]【愛敬】
日本国語大辞典
みちて、向ひたる人人は、物思ひ忘るる心地するあひ敬など、おもりかになし給て、いたう静まり」*徒然草〔1331頃〕一「物うちいひたる、聞きにくからず、愛敬ありて、 ...
38. あい‐ぎょう[:ゲウ]【愛楽】
日本国語大辞典
*霊異記〔810〜824〕中・一九「心経を誦する音、甚だ微妙にして、諸の道俗の為に愛楽せらる」*徒然草〔1331頃〕一三四「すべて、人に愛楽せられずして衆にまじ ...
39. あい‐じゃく[:ヂャク]【愛着・愛著】
日本国語大辞典
愛着 アイチャク」*発心集〔1216頃か〕八・或武士母怨子頓死事「男女に愛著して命を捨て」*徒然草〔1331頃〕九「まことに愛著の道、その根ふかく、源とほし」* ...
40. あい‐・する【愛】
日本国語大辞典
暫く見る程に」*方丈記〔1212〕「今、さびしきすまひ、一間(ひとま)の菴(いほり)、みづからこれを愛す」*徒然草〔1331頃〕三八「つらつら思へば、誉(ほまれ ...
41. あいな‐さ
日本国語大辞典
別〔12C後〕一「かやうのほども、その人きこえぬあなづらはしさもあいなさに、今はなにかは」*徒然草〔1331頃〕二四〇「しられず、しらぬ人をむかへもて来たらんあ ...
42. あい‐らく【愛楽】
日本国語大辞典
くせい)にも忘るべからざるか」(2)「あいぎょう(愛楽)(2)」に同じ。*宝玲文庫旧蔵第二本徒然草〔1331頃〕一三四「すべて人にあいらくせられずして、衆にまじ ...
43. あ・う[あふ]【合・会・逢・遭】
日本国語大辞典
物語〔13C前〕灌頂・大原御幸「庭の若草しげりあひ」*徒然草〔1331頃〕一六二「大雁どもふためきあへる中に」(ロ)互いに…する。*徒然草〔1331頃〕一一五「 ...
44. あえ‐しら・う[あへしらふ]
日本国語大辞典
はかることを原義とする。(2)「蜻蛉日記」など中古の仮名作品では「あへしらふ」の形が優勢であるが、「徒然草」や「平治物語」など鎌倉期以後の作品では「あひしらふ」 ...
45. あえ ず
日本国語大辞典
語〔13C前〕四・鼬之沙汰「此よし申されたりければ、ききもあへず、やがて宮こへはせのぼり」*徒然草〔1331頃〕五六「今日ありつる事とて、息もつぎあへず語り興ず ...
46. あおき 眼(まなこ)
日本国語大辞典
う故事の「青眼(せいがん)」の訓読)気に入った客を喜んで迎える、すずしい気持のよい目つき。*徒然草〔1331頃〕一七〇「阮籍が青き眼、誰もあるべきことなり」*洒 ...
47. あお・ぐ[あふぐ]【仰】
日本国語大辞典
1〜14頃〕若菜上「いとかしこき末の世のまうけの君と天の下のたのみ所にあふぎ聞えさするを」*徒然草〔1331頃〕一五七「しひて不信を云ふべからず、あふぎてこれを ...
48. あおみ‐わた・る[あをみ:]【青渡】
日本国語大辞典
紅葉賀「御前の前栽の何となくあをみわたれる中に、常夏(とこなつ)の花やかに咲きいでたるを」*徒然草〔1331頃〕一〇四「珍しく青みわたりたる卯月ばかりの曙」*日 ...
49. あかざ の 羹(あつもの)
日本国語大辞典
アカザを汁の実にした吸い物。非常に粗末な食物をたとえていう。*徒然草〔1331頃〕五八「紙の衾(ふすま)、麻の衣、一鉢のまうけ、あかざのあつ物、いくばくか人の費 ...
50. あかざ の 杖(つえ)
日本国語大辞典
阜「やどりせむあかざの杖になる日まで〈芭蕉〉」*談義本・当世下手談義〔1752〕四・鵜殿退卜徒然草講談之事「あかざの杖(ツヘ)引ずりて、新道通りをうそうそ歩行( ...
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