JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
先端を行くナレッジピープルによる数々のジャパンナレッジ活用術の中に、あなたの知識探索生活をさらに豊かにするヒントが隠されているかも知れません。法人のお客さまの導入事例としても、興味深いエピソードが盛りだくさんです。
2003年07月

JKボイス-私はこう使っています:ジャパンナレッジ 編集時に威力を発揮する“辞書の引き比べ”

デビッド・ダッチャーさん
辞書編集者
 研究社の活用大辞典、英和・和英中辞典などの辞書や事典の編集者として20年以上の経験を持つデビッド・ダッチャーさん。4年前にはJULA出版局から金子みすヾ童謡集の英訳を出版した。そんな知日家のダッチャーさんは、ジャパンナレッジに出合ってご自宅のインターネット環境を常時接続に切り替えたという。辞書作りを通して、英語と日本語の“微妙な違い”あるいは“大違い”を二つの文化の狭間から眺めてもらった。

「challenge」は「挑戦」ではない?

 昨今の辞書編集者にとって大切な作業の一つは、急増する外来語をどのように辞事典に反映させるか、ということです。この作業は、とくに英和や和英といった辞典をつくるときに、私の頭を大いに悩ませます。

 よくこんなことを言う人がいます。「外来語といってもそのほとんどが英語。つまり、英語がそのまま使われているのだから、翻訳の手間が省けるだけではないか」と。しかし、英語がカタカナ語となって日本語に溶け込んだとき、意味が変化することが非常に多いのです。

 たとえば「チャレンジ(challenge)」という言葉があります。日本では、「彼はその問題にチャレンジした」というように使っています。ところが、この状況を英訳すると、英語を母国語とする人はchallengeという言葉は使いません。「He tried to solve the problem.」となります。つまり、「try」に置き換えられる状況で「チャレンジ」が使われるのです。ちなみに、英語のchallengeは「He challenged me to judo bout.」(彼は私に柔道の試合を挑んだ)といったように、スポーツなど勝負事に関連した場面で多く使われます。

 同じようなことは「アピール」にもいえます。「アピール」の場合、「新商品をアピールする」というように、自分から何かを売り込むときに使うのがほとんどではないでしょうか。いわば、能動的な場面で使うわけです。ところが英語の「appeal」は「She appeals to me(彼女は私の好みだ)」といったように、自分が何かに魅力を感じた場合に使う言葉です。つまり、自分にとって受動的な場面で使う言葉なのです。ちなみに、appealを能動的に使うと「懇願する」「控訴する」といった意味になります。

「日の丸」と「旭日旗」を混同する外国人

 英和・和英辞典の編集をやっていると、もう一つやっかいな問題にぶつかることがあります。似て非なる二つのものが、外国では同じ言葉で表現される場合があるということです。

 たとえば日本人なら、国旗である「日の丸」と、かつて軍部が掲げ、現在では海上自衛隊の艦艇において使用されている「旭日旗」をいっしょにすることはないでしょう。ところが、英語では両方とも「the rising-sun flag」と呼ばれています。非常に誤解を生みやすい英語表現の一つです。

 これらの英語と日本語の差異は、普通に考えれば微々たることなのかもしれません。しかし、それが時として大きな誤解を生んでしまうことが多々あるのです。英和辞典や和英辞典は、そんな可能性をはらんだ“微々たること”を寄せ集めた存在だといえます。

 ですから辞事典をつくるには、多くの辞書や資料に当たり、たくさんの情報を得る作業が必要不可欠となります。とくに英和辞典や和英辞典をつくる場合は、日本語と英語の両方の辞書を引き比べなければなりません。そんな作業を行う際、複数の辞事典が一括検索できるジャパンナレッジのワンルックは、実に重宝します。ワンルックに出合ったおかげで、私の家のインターネットも常時接続に変える踏ん切りがつきました(笑)。

 あえて注文をつけるなら、英語の百科事典「Encyclopaedia Britannica」がコンテンツとして入ってほしいですね。それから、動植物や法学の専門書もあったほうがいいでしょう。その地域にしか生息していない動物や植物は、訳語がなかったりします。そんなときに学術名が記載されている専門事典などは、われわれの仕事には非常に便利な存在なのです。

 それから最後にひとつ。英語のトップページがあると助かります。そうすればもっと多くの外国人がジャパンナレッジ体験を享受することができますからね。