京都市北区の上賀茂特産の京野菜、酢茎菜(すぐきな)を塩漬けにして発酵させた漬け物で、千枚漬けと並び、京都の冬を代表する漬け物である。乳酸発酵特有の上品な酸味と香りがあり、そのままお茶漬けにしても、少し醤油(しょうゆ)を加えてご飯といただいてもよく合い、癖になる風味である。昔は京都の町中まで上賀茂の農家の婦人が直接売りにきていたそうで、このすぐき売りを「きーやさん」と呼んでいたという。
 酢茎菜は蕪(かぶ)の変種で、400年あまりも栽培されてきた品種であるが、その来歴は詳しくわかっていない。賀茂川の中州に自生していたなどという説もある。
 晩夏に種をまき、12月前後に収穫が行なわれると、いたみやすいので手早く漬けこみ作業が行なわれる。葉を付けたまま皮をむき、強く重石をかけながら塩漬けにする。それを食べるしばらく前に取り出し、今度は加温している室(むろ)に入れ、ここで乳酸発酵を一気に進める。すると、淡く黄みがかった色合いに変わり、独特の香りと旨味(うまみ)が漬け物に加わるのである。


すぐきは、菜っ葉を細かく、根部は細かくしすぎないように切ったら、ちりめんじゃこと混ぜ、白ごはんやお茶漬けで食べるのがおいしい。徐々に酸味が強くなるため、好みで醤油を加えると食べやすくなる。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



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 安倍晋三総理の悲願は自主憲法の制定である。同じ憲法改正を掲げる石原慎太郎「日本維新の会」代表と手を組み、今夏の参議院選挙で再び自民党が大勝すれば、改正に動き出すという見方が強くある。
 だが、事はそう簡単ではないと『週刊ポスト』(1/25号、以下『ポスト』)が「誰も知らなかった『憲法改正』の基礎知識」という大特集を組んだ。私は『ポスト』は改正容認派と見ていたから意外な感じはしたが、読んでみてなるほどと納得した。
 まず憲法改正のスタートは、衆議院議員100人、参議院議員50人以上の賛成で発議(提案)される。
 その際重要なのは「関連事項ごとに区分けして行なう」ことで、たとえば第1条の「天皇」に関する条文と、第9条「戦争の放棄」の条文改正は別々に発議されるのである。
 したがって自民党が作っている改正草案をすべて実現しようとすると、100以上の発議が必要になる。
 発議、本会議での趣旨説明の後に、衆参それぞれに設置された憲法審査会で議論される。審査会には各政党・会派の議席数に応じた委員が出席しており、審査(審議)や公聴会を経て、委員の過半数の賛成を得て可決となる。
 ここを通過しても憲法改正発議には議員定数の3分の2(衆院では320、参院では161)以上の賛成が必要。項目ごとの採決となるので「1条改正は可決、9条改正は否決で廃案」というケースもある。
 その後、可決された発議は別の院に送付され、先院(先に審査、採決をした院)と同様に「趣旨説明→審査会採決→本会議採決」という流れをくり返す。後院(発議したところとは別の院)でも同じ数の賛成が要る。
 一方の院で可決、もう一方で否決となった場合はどうするのか? 憲法改正には「両院で3分の2以上の賛成」が憲法96条に規定されているから、衆院の議決優先はない。
 この高いハードルを超えて初めて改正案は両院議長によって国民に提案され、60~180日以内に国民投票にかけられる。
 投票前に「国民への周知期間」があり、国会に設置された広報協議会が新聞やテレビなどで改正案を広報し、各政党や市民団体は「改正は必要」「改正反対」という投票運動を行なうことができる。
 投票日の2週間前から有料広告が禁止され、国が決めた枠での放送・新聞広告だけになる。
 投票方法は印刷された「賛成」「反対」のいずれかに○をつける二択式だが、区分が100以上に分かれた場合、区分ごとの投票箱が必要になり、投票を済ませるまでに数時間かかることもあり得る。
 有効投票の過半数の賛成があれば承認される。仮に投票率が40%であれば、全有権者の20%の賛成でも憲法改正は実現することになるから、「国民投票が成立するための最低投票率を定めるべきだ」という指摘もある。諸外国では最低投票率を50%としているところが多いようだ。
 このように、憲法改正までは「途方もなく長く、煩雑な道程」が待っていると『ポスト』は結んでいる。また、憲法改正といっても自民党と維新、みんなの党の方向性は正反対だから、改憲政党の中でも大きな対立が起きると『ポスト』は読んでいる。
 安倍総理、これでも改正やりますか?

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読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 とくにモテないというわけではない。つねに彼氏はいるご様子。なのに長続きせず、一年ももたない短期間の恋愛を繰り返してしまう。結婚を鉄道にたとえるならば、どうにも各駅停車ばかりで、まだまだ終着駅は遠そうだ……。このようなタイプの女性を「各停女子」という。命名者は、「離婚式」(離婚を前向きな再スタートと捉えるコンセプトが話題になった)を多く手がける寺井広樹(てらい・ひろき)氏。
 寺井氏がメディアでの取材に答えるところによれば、各停女子は決して浮気性というわけではなく、むしろ一途である。ルックスも派手というわけではない。ただ、素の自分を受け入れている(だからこそ化粧っけが薄いのであろう)ため、飽きっぽい気性を持つようだ。最初は人懐っこさでとりこにされた男性も、だんだんと付き合いきれなくなるとか。現代女性が抱える内面を理解するのは、男性諸氏にはなかなか一筋縄ではいかない。バブル期にもてはやされたようなマニュアル的な恋愛はもはや通用せず、男女とも「納得のいく結婚」までの道のりに苦労しているようだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 日本では誰もがなんらかの公的な健康保険に加入することが法律で義務づけられており、病気やケガをした時はかかった医療費の一部を負担するだけで必要な医療を受けられる。自己負担割合は年齢に応じて1~3割。たとえば70歳未満の人は3割なので、医療費が5000円だった場合は1500円を支払えばよい。
 では、医療費が100万円かかったら30万円支払うのかというと、そんな心配はない。健康保険は患者の負担が過大にならないように配慮されており、1か月に自己負担したお金が一定額を超えると所得に応じた払い戻しを受けられる。それが「高額療養費」という制度で、年齢や所得に応じた限度額がある。
 70歳未満での場合は所得に応じて限度額が3段階に分かれており、一般的な所得の人は【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】。つまり、医療費26万7000円までは3割を負担するが、それ以上は1%だけ負担すればよいということだ。たとえば1か月の医療費が100万円だった場合、最終的に自己負担するのは約9万円になる。
 医療費が高額になった月が1年間に3回以上になると、4回目からはさらに自己負担限度額が引き下げられる「多数回該当」という制度もある。また同じ世帯にいる家族の1か月の負担額を合算して、それが限度額を超えた場合、超過分が高額療養費として支給される「世帯合算」も利用できる。
 医療費が際限なくかかる心配はないのだが、こうした制度があることを知らないために、医療費の不安を抱えている人は多いようだ。生命保険文化センターの「平成19年 生活保障に関する調査」によると、民間の医療保険に加入している人は71.3%もいるのに、健康保険の高額療養費の存在を知っているのは43.8%で半数に満たない。
 健康保険は、民間の保険のようにコストをかけて大々的な宣伝をすることはない。原則的に申請主義で、保障内容について説明を受ける機会もほとんどないので、お金が戻ることを知らずに損をしている人もいる。高額療養費の還付申請の時効は2年。医療費がたくさんかかったのに高額療養費の申請をしていない人は早めに手続きを。
 ほかにも健康保険には充実した保障があるので、民間の保険に入る前に、まずは自分が加入している健康保険にどのような保障があるのか確認してみよう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 スペイン、アラゴン州にあるボルハという街が、2012年にメディアの注目を集めた。現地を訪れる観光客も急増。お目当ては、サントゥアリオ・デ・ミセリコルディアという街(実はボルハから少し離れている)の教会にあるフレスコ画である。イエス・キリストの顔が描かれた作品の題名は、『この人を見よ(エッケ・ホモ)』。新約聖書『ヨハネ福音書』で、イエスの処刑を命じた提督の言葉から来ている。
 1910年、画家エリアス・ガルシア・マルティネスが、この地で休日を過ごした縁から筆をとった作品。教会の柱に直接描かれたものであるため、丁重な保存もままならず、近年傷みがひどくなっていた。そこで地元の高齢のご婦人、セシリア・ヒメネスさんが善意から修復を試みたのだが、これが深刻な事態を招く。女性は絵の素人というわけではないものの、高度な技術は持ち合わせていなかった。なんとも素朴な、お猿さんのような絵に仕上げてしまい、もともとの絵の印象は失われてしまったのだ。現在は、再度修復する動きと、話題になったのでこのまま保存すべきという意見がせめぎ合っている状態だ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 竹島は日本海上、隠岐の島北西約157キロメートルに位置し、島根県隠岐の島町に属する。東島、西島の2島とその周辺の岩礁群からなり、総面積は21万平方メートル。広さは東京ドームの5倍ある。周囲は断崖絶壁で覆われている。
 わが国は江戸初期には領有権を確立し、周辺海域で漁業が行われてきた。
 しかし、1952(昭和27)年1月、韓国の李承晩大統領がいわゆる「李承晩ライン」を日本海上に設定、竹島が韓国に取り込まれた。当時の日本は占領統治下で、韓国の不法占拠を指をくわえて見守るしかなかった。以後今日まで韓国は竹島を実効支配し、警備隊が常駐、2005年からは一般人の上陸を認めている。
 これに対し、島根県は竹島が同県に属することを世界に訴えるため、条例で2月22日を「竹島の日」として制定した。
 今年もその日がやってくるが、耳目を集めるのは、自民党が昨年発表した衆院選政策集で、「竹島の日」を政府主催の式典として開催すると明記、しかも、今年は「竹島の日」の3日後、2月25日に韓国大統領就任式が予定されている。タイミングも微妙なわけだ。
 そのためか、安倍晋三首相(自民党総裁)は衆院選後、政府式典を開くことについてトーンダウン。昨年末の記者会見などで「大統領の就任式との関係においては、慎重に考えたい」と、政府式典の開催に慎重な考えを示した。これは事実上の公約修正で、島根県などから失望の声が上がっている。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 1月20日のことで、「二十日正月」や「骨降ろし」ともいう。正月の祝いに用意した塩鰤(しおぶり)や荒巻鮭(あらまきさけ)も、1月半ばになると、残っているのはあらばかりになっている。現代では想像ができないかもしれないが、昔の商店は、注連(しめ)の内(1月15日の小正月までの間)まで休んでいたので、買いだめしてあった食材もすっかり食べ尽くしていた。そこで20日になると、残りのあらを、おだい(大根)と一緒に炊いたり、粕汁(かすじる)にしたりして食べていた。文字通り、これが骨正月と呼ばれる理由である。
 京都らしい残り物の始末であるが、残り物とはいえ、きっとおいしい料理であったろう。一家の人数が多かった戦前まで「暮れの大買い」といい、塩鰤や荒巻鮭が各家の軒先などに何匹もつり下げられていたという。何匹もの上質のあらをふんだんに使って、もっとも甘くおいしい時期の大根を炊くのだから、おいしくないわけがない。
 各家庭では1月15日の小正月に「あずのおかいさん(小豆粥)」を食べた後、元旦から使っていた柳を丸く削った雑煮箸(ばし)を焼き捨てて正月が終わる。翌日から常(つね)の日が戻ってくるわけだが、きっと20日の骨正月は、食材だけでなく、正月気分がもう一度やってくる「おまけの正月」みたいな楽しい一日であったろう。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   


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