リサイクルショップ、新古書店、古着屋、ネットオークション。いまどきは「見知らぬ他人が使ったモノ」を購入する機会が多くなった。必ずしも「新品が買えないので中古を利用する」のではない。それなりに生活に余裕があっても、手ごろな価格帯に魅力を感じている様子だ。長引く不況と、エコライフブームの影響も考えられるだろう。
 「生産→消費」と、新商品が流通する過程を血管の動脈にたとえるならば、「消費→再利用」という道をたどる中古の品はいわば「静脈」の側にいる。粗大ごみの廃棄にもお金がかかる昨今、「売る側」も積極的(買い取り額がいくら安くとも!)なため、中古市場がうまく流れているといった構図もある。そこで、「静脈」を賢く利用しながら暮らす消費者が注目されてきた。「静脈生活者」の誕生というわけだ。
 ただ、ここで注意すべきは、「動脈」の側が機能不全を起こしていれば、「静脈」も立ち行かなくなるということ。モノのジャンルにもよるが、中古が新商品の売れ行きに影響を与えているのでは、という各業界の心配は昔からある。


 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ロコモティブ・シンドローム(locomotive syndrome/運動器症候群)の略称。
 骨や軟骨、筋肉など身体を動かす「運動器」の障害によって、寝たきりになったり、介護が必要になったりする危険性が高い状態を指す。「メタボ」に対抗し、日本整形外科学会が2007年に提唱し始めたものだ。
 腰痛や肩こり、手足の痛みなどを自覚している人は多いものの、すぐに命に直結する危険は少ないため後回しにされがちだ。しかし、厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2010年)によると、介護が必要になった原因の上位5つは、①脳血管疾患、②認知症、③高齢による衰弱(老衰)、④関節疾患、⑤骨折・転倒で、運動器の疾患が2つも入っている。たとえ内臓が健康でも、骨や筋肉などが衰えると健康寿命を損なう可能性が高くなるのだ。
 ロコモかどうかの目安は、「片足立ちで靴下がはけない」「家の中でつまずいたり滑ったりする」「階段を上るのに手すりが必要」「横断歩道を青信号で渡りきれない」「15分くらい続けて歩けない」「2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難」「家の中のやや重い仕事(掃除機の使用など)が困難」の7項目のうち、1つでも当てはまると疑わしい。
 気になる人は、早めに整形外科を受診して適切な治療を受けるとともに、転倒・骨折予防のトレーニングも心がけたい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 多様な女性アイドルグループがしのぎを削る時代に、個性的なパフォーマンスで一歩抜け出た感のある「ももいろクローバーZ」の熱心なファンのこと。「もののふ」とは、本来「武士」を意味する言葉。アイドル戦国時代を制するべく、共に戦うファンという思いから来ているという。メンバーが甲冑(かっちゅう)の衣装を着て登場したイベントや、ファーストアルバムがリリースされた際のイベントの企画名「選ばれしモノノフの集い」などから名前が定着していった。
 そのほかのアイドルファンに対する呼称もいろいろだ。フジテレビの番組企画発のグループ「アイドリング!!!」なら「リンガー(アイドリンガーの略)」。名前が「パスポート」から来ている「ぱすぽ☆」は、CA(キャビンアテンダント)をモチーフとしたアイドルであることから「パッセン(パッセンジャーの略)」。ちなみに、AKB48では「推しメン」と呼ばれる「イチ推しのメンバー」が重要視されるため、全体としてのファンの呼称はない。全員が好きだというタイプは「DD(誰でも大好き)」と呼ばれ、節操がないと思われる可能性があるとか。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 衆院選で自民党が大勝し、公明党と足して325議席を獲得した。この「325」という数字の意味は大きい。なぜなら、参院で否決された法案を再可決できる衆院定数(480)の3分の2以上を獲得したことになるからだ。
 参院では、現時点で自民、公明は計102人の勢力。その過半数は、欠員や採決に加わらない民主党出身の議長を除くと118人。16人足りない。しかし、衆院で「3分の2」があれば、参院でひっくり返されても衆院で可決しなおせば法案は成立するということだ。
 ただ、そんな強引な国会運営を続ければ夏の参院選に悪影響を及ぼしかねない。
 そこで取り沙汰されているのが、個別の政策・案件ごとに連携する「部分連合」だ。
 自民党が部分連合の相手として念頭に置いているのがみんなの党(参院11人)、日本維新の会(同3人)、新党改革(同2人)という。いずれも党のトップクラスが、かつて自民党に籍を置いた議員である。秋波を送りやすい。この3党(計16人)を加えればちょうど過半数に達する、というのがミソだ。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 餅(もち)や野菜を煮合わせ、熱い汁に仕立てたもの。正月にお雑煮を食べる風習を、日本人は室町時代から守っている。語源の煮雑(にまぜ)ということばは、ごった煮のような料理のことで正月とは関係がない。古くは、年神(としがみ)様へ新年の安全と五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した後、下げた供物と餅を煮合わせて食べたのが始まりという。
 京都のお雑煮は、まったりとした白味噌仕立てである。このお椀(わん)の中に、たくさんの願いが込められている。こぶし大もある大きな頭芋(かしらいも)は、人の頭(かしら)になるようにと、一人ずつに芋が丸のまま入っている。小芋は子孫繁栄の願いを込め、輪切りにした大根は、地にしっかりとした根を張るようにという思いを表している。これらの具とともに、小さな丸餅を入れ、食べる直前に花かつおをふわりとかければできあがる。具がすべて丸いのは、なにごとにも角を立てることなく、丸く収めよという教えからである。ほかの地域のように魚介などは入らないが、白味噌仕立ては精進の食材のほうがよく合い、風味や食感が一層おいしく味わえる。
 それにしても三が日を白味噌雑煮で過ごしていると、すまし汁のお雑煮が食べたくなる。そんなときは水菜とお餅だけのあっさりとしたすまし仕立てが京都らしい。水菜は京菜ともよばれ、寒さが極(きわ)まるころに旬(しゅん)を迎える。ショリショリとした歯ごたえとさっぱりとした後味で、お餅との食感の差がおいしさを引き立てる。


   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



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 甘辛く煮た身欠き鰊(みがきにしん;鰊の干もの)を入れ、ゆでたそばを載せ、そこに熱いだし汁をかけたそばのこと。鰊そばは京都が発祥地である。東山区の南座の脇(わき)にあるそば店「松葉」の2代目が、1882(明治15)年に発案したというのが定説になっている。その後、「やぐ羅(ら)」(東山区)や「かく谷(たに)」(左京区)など数軒のそば店が、鰊そばで知られるようになる。だが、京名物といわれるほど有名になったわけではなかった。
 名物として定着したきっかけは、贔屓(ひいき)客が手土産にしていた鰊の甘煮であった。徐々に調理や包装方法が発達し、関西一円で販売されるようになったことで、鰊そばの知名度が一気に上がったというわけである。
 東西のそばの違いを「東のつけそば、西のかけそば」と表現することがある。つけそばとはもりそばの類で、一種の軽食や酒のつまみになるそばのことである。西のかけそばとは、ゆでたそばに熱いだし汁をかけたもののことで、要するに、ご飯代わりになるようなそばのことをさしている。
 身欠き鰊は、古くから昆布と一緒に北海道から北前船(きたまえぶね)に載せられ、日本海を経て京都まで運ばれてきた。京都では古くから珍重されてきた海産物である。なかでも、身欠き鰊の甘煮は、鰊昆布(こぶ)や鰊茄子(なす)などとともに、惣菜の代表格。それをかけそばに盛りつけたのが鰊そばであるから、まさにおかずとご飯そのもののような組み合わせなのである。年越しそばのことを京都では「みそかそば」や「つごもりそば」と呼ぶ。暮れに大忙しのそば屋にいくと、年越しそばの定番は、卓袱(しっぽく)、天ぷらそば、鰊そばで、やはり鰊そばが一番人気である。


かく谷老舗(ろうほ、京都市左京区聖護院山王町)の大名物鰊そば。鰊の旨味をいかすため、そば粉自体の味はほどよく抑えた麺はやや太め。甘煮から溶け出た味が麺によく絡むように配慮している。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊ポスト』(1/1・11号)のビートたけしの連載「21世紀毒談」特別版で、歴代のAV(アダルトビデオ)タイトルの中のナンバーワンを決めるという特集。
 リードに「なんだかパッとしない世の中だが、18禁の大人の世界では、思わず赤面&爆笑してしまうAVタイトルが続々誕生」とあるが、なかなかの迷(?)作揃いである。
 たけしの前にAVを山積みして選んでいく。まずは邦画タイトル編。国民的作品へのオマージュとして『オ×コはつらいよ 葛飾区編』があがる。
 次に「『20センチ少年』ってのには笑ったな~。元ネタは『20世紀少年』か。ビッグな股間を武器に、全世界に“ヤリともだち”の輪を広げようってのかね」(たけし) 
 『前戯なき戦い』。スタジオジブリ作品のパロディで『天空の塔ドピュタ』『マゾの宅急便』『しものけ姫』『股の下のポニョ』『事をすませば』 と続く。
 北野武作品のパロディも『この女、淫乱につき』『亀頭市』などと多い。
 洋画編に移って『パイパニック』『今そこにある乳』『不思議の国のアヌス』。巨大なホオジロザメが襲ってくるパニック映画風の『床ジョーズ』など。
 テレビ番組編では『それいけ! パイパンマン』『便器が出るテレビ』。松嶋菜々子主演で視聴率40%超えを記録したお化け番組のパロディで『家政婦の股』。ほかにも『世界の射精から』『女熱大陸』、往年の名作アニメから『あしたのニョー』がノミネートされる。
 ベストセラー本からは『限りなく透明に近いブルセラ』。たけしが「もはや哲学すら感じさせる」と感嘆する。
 『サオだけではなぜ満足しないのか?』は『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のパロディ。
 ヒット曲やCMからは『放尿だよ、おっかさん』。平松愛理(えり)のヒット曲からのパロディ『部屋と猥褻と私』がノミネート。
 ほかにも『ロトセックス』『シコシコジャパン』などあがるが、最新の流行語をパロッた作品が出てこないとたけしは嘆いている。
 映倫審査や許認可を受けた業者が制作するAV数は年間2000本。AVでデビューする女優は900人といわれているようだ。
 タイトル一つで売れ行きが違ってくるから、週刊誌などもそうだがタイトルには作り手の汗と涙が染みついている。
 たけしが選んだ歴代1位に輝いたAVタイトルを発表しよう。
 「『あしたのニョー』に決定! こんな名作が過去にあったんだってことを知らしめて、元気がないニッポンのエロ産業に奮起を促したい」(たけし)
 くだらないとお嘆きになる諸兄にひと言。たかが週刊誌、されど週刊誌である。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


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