「はばかり」といえば、「人目をはばかるところ」という意味が転じ、「トイレ」をさす名称として知られている。ところが、京都でこれに「さん」を付けて「はばかりさん」というと、トイレの丁寧な呼び方ではなく、「ご苦労さん」や「ありがとさん」というまったく違う意味になる。実際に使う場合、「昨日はえらいはばかりさんどしたな」とか、「おおきに、はばかりさん」などといった風である。
身近な間柄の人に対し、日常的な頼みごとをしたり、ちょっとした気遣いをさせたり、世話になったりしたときの感謝の気持ちを含めた挨拶である。また、こうした挨拶とは違うニュアンスを含んで使われることもある。例えば、相手の期待が外れて思うようにならない、というような会話の相づちに使うと、軽い皮肉の混じった「おあいにく様」や「お気の毒に」といった印象を含んだ表現になる。
「はばかりさん」の本来の意味を『日本国語大辞典』で紐解いてみると、「遠慮する」や「気がねする」などの意味のある「憚る」と接尾語「様」を組み合わせた「憚様」(はばかりさま)ということばが語源であった。「はばかりさん」や「はわかりさん」などと、大阪や兵庫でも使われていたことばのようである。
似たような皮肉めいた方言が京都にはいろいろある。例えば、「もっともらしい」という意味の「しかつい」とか、「しょうもない」という意味の「しゃっちもない」など。また、「異(け)なり」から派生した「けなりい」ということばは、「うらやましい」という意味で使われる。ちょっとやっかみ(ねたみ)含みのようにも聞こえる。最近は方言があまり使われなくなっているが、昔の京都人は巧みに微妙な心情を会話に盛り込んで、きっと楽しんでいたことだろう。
身近な間柄の人に対し、日常的な頼みごとをしたり、ちょっとした気遣いをさせたり、世話になったりしたときの感謝の気持ちを含めた挨拶である。また、こうした挨拶とは違うニュアンスを含んで使われることもある。例えば、相手の期待が外れて思うようにならない、というような会話の相づちに使うと、軽い皮肉の混じった「おあいにく様」や「お気の毒に」といった印象を含んだ表現になる。
「はばかりさん」の本来の意味を『日本国語大辞典』で紐解いてみると、「遠慮する」や「気がねする」などの意味のある「憚る」と接尾語「様」を組み合わせた「憚様」(はばかりさま)ということばが語源であった。「はばかりさん」や「はわかりさん」などと、大阪や兵庫でも使われていたことばのようである。
似たような皮肉めいた方言が京都にはいろいろある。例えば、「もっともらしい」という意味の「しかつい」とか、「しょうもない」という意味の「しゃっちもない」など。また、「異(け)なり」から派生した「けなりい」ということばは、「うらやましい」という意味で使われる。ちょっとやっかみ(ねたみ)含みのようにも聞こえる。最近は方言があまり使われなくなっているが、昔の京都人は巧みに微妙な心情を会話に盛り込んで、きっと楽しんでいたことだろう。