11月26日に衆議院を通過した特定秘密保護法は、国の安全保障の中でも重要な情報を「特定秘密」に指定し、それを外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりした人を厳罰化することを目的とした法律だ。
特定秘密の対象は、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ活動防止の4分野だが、条文は曖昧で「その他」という文言もある。つまり、国家が決めれば、何でも「特定秘密」になってしまう可能性があるが、その秘密が何なのか、処罰された人に知らされることはない。
最高で懲役10年という罰則がついており、処分対象は公務員だけではなく、ジャーナリストや一般市民も対象だ。秘密指定の期間は最長60年だが、武器や暗号など7項目については例外扱いとなっている。第三者機関の設置は検討されているものの、権限も設置時期も不明確だ。
審議期間も短く、強引に成立を急ぐ与党のやり方には、内外から大きな非難の声が上がっているが、実は特定秘密保護法は安全保障と情報公開に関する国際基準である「ツワネ原則」にも背く内容となっている。
ツワネ原則は、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」の略称で、今年6月に南アフリカのツワネで発表されたことから、この名で呼ばれている。世界70か国以上の安全保障や人権問題の専門家500人以上が、2年間におよぶ会議を行ない、50項目にわたって示されたものだ。
ツワネ原則では、国家の秘密保持の必要性は認めているものの、人権とのバランスに配慮すべきとしており、具体的には次のような内容になっている。
・秘密にする正当な理由を国家は示し、秘密にする範囲は限定にすべき
・国際人権法、国際人道法に反する情報は秘密にしてはならない
・秘密指定の期間は限定すべきである
・第三者機関を設置すべきで、その機関は必要なすべての情報へのアクセスを担保されるべき
・公開された情報による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は守られる
・ジャーナリストや市民は処罰の対象にすべきではない
日本の特定秘密保護法は、ツワネ原則と照らし合わせて世界の潮流に大きく外れている。与党は、今国会で特定秘密保護法の成立を目指しているが、成立すると国民の知る権利は大きく阻害されるため、国連人権理事会も同法への懸念を表明している。
審議は参議院に送られ、12月6日までの会期中に採決が予定されているが、ここでも数の力による暴挙が行なわれるのか。保身に走って、特定秘密保護法の成立に手を貸した国会議員が、後の世でどのような評価を受けるのかは推して知るべしだ。