[類似語]むっちゃ・めっちゃ。
[使用例]~ヤバい・~イケてる。


 「すごい」といった意に、よりその飛び抜けている雰囲気を加えて伝えたいとき、10年ほど前まで、主に関東地方の若者のあいだで副詞的に使われていた。文章におこす場合は、「チョー」と片仮名で表記したほうが、いっそうカジュアルで間が抜けた感じになる。

 ただし、近年でも多用しがちなのは、「チョー」がいまだ口癖として取れない関東地方の30代後半~40代前半の中年層や、若者文化に寛容な姿勢を見せようとがんばる50代前半層にかぎられてきており、若者のあいだでは、むしろ関西発の「むっちゃ」「めっちゃ」のほうが好んで使われている傾向が強い。

 さらに、そのトレンドを察知した、人と同じことをするのを嫌う、あまのじゃく的な関西の若者たちのあいだでは、過去、局地的に使われていた「めっさ」が復活し、主流に変わりつつある兆しを見せている。

 

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 こじつけに近いようなことば遣いで、調子や感情の微妙な動きを楽しむところには、京ことば独特の面白さがある。例えば、「よくいらっしゃいました」という来客を迎えることばとして、京都では「オコシヤス」と「オイデヤス」という二つのあいさつがよく使われる。漢字で書くと、「御越やす」と「御出やす」となる。どちらも丁寧なことばであり、使い方に上下関係があるわけではない。しかし、久しぶりに訪ねた小料理屋で、「オコシヤス」と出迎えられれば、ほっとするのはなぜか。

 「オコシヤス」は、心待ちにしていた来客や常連客に対して使われることが多いあいさつだからである。一方、「オイデヤス」は、一見(いちげん)の客や思いもよらない来訪に使われることが多い。もし、突然訪ねた所で「オイデヤス」と出迎えられたなら、長居は無用と機転を利かせ、早々と退散すべきかもしれない。

 「オコシヤス」と似た調子で使われるあいさつに、「オシマイヤス」ということばがある。これは「こんばんは」と同じく、帰り道や夜道で交わされるあいさつである。しかし、「オシマイヤス」は通り一遍の実意のこもっていないあいさつではなく、ねぎらいの気持ちをこめた、優しさのある通りすがりのやりとりなのである。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 10月1日、安倍晋三首相は2014年4月から消費税を5%から8%に上げると発表した。デフレからの脱却を目指し、株高・円安、物価上昇率2%を掲げたアベノミクスも道半ばなのに、増税することで経済が腰折れするのではないかという批判もあったが、首相は「大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものにすることで、経済再生と財政健全化は両立し得る。これが熟慮した上での結論だ」と増税への決断を下した背景を説明した。

 だが、消費税を上げることに賛意を示してきた朝日新聞でさえ、増税で予想される景気悪化への対策を理由に5兆円規模の経済対策を打ち出し、その柱に「法人税減税」を据えたことに対して「景気悪化対策とは反する政策」だと疑問を呈している。

 そのうえ、増税分は社会保障に全額使うというのだから、これが本当なら財政再建のためのカネなど、どこを探しても出てくるはずはないのである。

 『週刊ポスト』(10/11号、以下『ポスト』)も〈消費税増税+法人税減税=国民の収入アップ〉というのは真っ赤なウソだと噛みついている。

 「実は、日本の全法人約260万社のうち、75%の約195万社は赤字で法人税を払っていない。それらの企業は減税が実施されても収益は変わらないから、減税で給料を上げることなどできない。仮に、残り25%の企業が減税分で賃上げをしたとしても、『国民全体の収入アップ』になる道理がないではないか。(中略)
 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、今年7月の全産業平均の月給は前年比で約1700円の減少。14か月連続のマイナスである」

 5兆円ものカネは大企業と公共事業への大盤振る舞いで大方が消え、大多数の国民には増税に加えて“値上げ地獄”が待っているのである。

 『ポスト』の10/4号では、家計費が2割増になると報じている。

 なぜならパン、牛乳、ハム・ソーセージからチーズ、冷凍食品など主要食品が10~11月に軒並み値上がりする。

 日本酒やワインも大手メーカーが横並びで1000品目以上の値上げ方針を打ち出し、ごま油などは今年2度目の値上げをするという。食品インフレだけではない。

 「国民生活を背後から脅かすのが公共料金、年金・医療、教育費などの負担増だろう。
 厚生年金保険料は9月から年間約9000円引き上げられ、年金受給額は今後3年間で『6万8700円』減らされる。高齢者(70~74歳)の医療費窓口負担は来年4月から2倍になる」

 経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう指摘している。

 「庶民の家計は食料品値上げで食費が1割近くアップ、電気・ガス・水道の光熱費も1割アップ、その他にも教育費も上がり、マイカーを持っている世帯は自賠責保険も上がります。政府の試算にはこれらが含まれていません。
 それを合わせると消費増税後に年収300万円世帯は年間40万~60万円、500万円世帯なら年間60万~70万円という、年収の2割近くに相当する負担増を迫られることになるはずです。住宅ローンなどが払えなくなる世帯が増えることも考えられます」

 8月からは生活保護を受給できる判断基準を厳しくした。消費税増税は低所得者や年金生活者の懐を直撃する。貧しい者、弱い者は死ねといわんばかりの安倍政権の新自由主義政策は、1%の富裕層のためのものだと断じざるを得ない。

 いくらウソをついても国民は“バカ”だから何もいわないし、マスコミはものをいえないように“飼育”してある。安倍首相の腹の中はこうなのではないか。こういうときこそホンネをいえる週刊誌の出番であるはずだ。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 伝統的なものは、普遍的な「良さ」があるからこそ生き残っている。江戸時代に生まれたこけしは東北地方で作られる木彫りの人形だが、大正を迎えると欧風のおもちゃの流入に押されて、職人が減るという危機を迎えた。だが、そのころから子どもよりも大人にアピールする「工芸品」として見出され、現在に連なる「収集」という楽しみ方が生まれたという。そして現在。こけしの新たなファンは、意外にも30代を中心とする女性たちだ。彼女たちは「こけし女子」、略して「こけ女」と呼ばれている。

 こけしにはシンプルな愛らしさがある。戦略的な「媚び」のあるキャラクターよりも、オトナ女子には魅力的に映るのだろう。一つひとつが手作りという点も、「一点もの」を大事にするいまどきの感性とマッチしている。ブームは数年前からと言われていて、東京など大都市で展覧会も開催。その扱われ方はオシャレというか、まるで「ポップなサブカルチャー」といった趣きだ。先の震災ではからずも東北の文化が見直されており、こけしのブレイクは復興支援につながっている側面もある。実際、東北に足を運び、こけし制作を体験する「こけ女」も少なくない。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 東日本大震災に伴う、東京電力福島第1原子力発電所の事故から2年半。この秋で3回目の米の収穫となる。

 震災当初、福島や北関東の大地には放射能が降り注ぎ、その田畑で育てられた農産物についても深刻な汚染が懸念された。だが、茨城大学の中島紀一(きいち)名誉教授らの分析によって、2011年4月以降に種を播いて育てられた農産物からは、放射性物質がわずかしか検出されないことが明らかになっている。

 これは特別な栽培方法、一部の田畑に見られることではなく、福島の農産物全体にいえることだった。チェルノブイリ原発事故で農産物への強い汚染があったことに比して、この状況を一部の研究者は「福島の奇跡」と呼ぶようになった。

 奇跡を起こしたのは、福島の土だ。有機物が多くカリウムも多く含んでいるため、セシウムを吸着して作物への移行を防いだのだ。そして、その土の力を引き出したのが、農業者たちの耕す力だという。

 原発事故以降、福島県では収穫されたすべての米について、全袋検査という気の遠くなる測定を行なっている。福島県における平成24年産の全袋検査結果では、1003万4956袋の中で、検出下限値以下(1㎏あたり25ベクレル未満)は1001万2899袋。25~50ベクレルは1万9928袋、51~75ベクレルは1669袋、75~100ベクレルは389袋、基準値の100ベクレルを超過した放射性セシウムを含むものは71袋だった(福島県・農林水産省、平成25年1月検査結果報告)。

 米以外にも、土で育てる野菜類の汚染は少なく、汚染されているものは市場には出回らないようになっている。

 こうした事実が知らされないまま、福島の農産物は敬遠される傾向があるようだ。もちろん低い放射線量だから安全とは言い切ることはできないし、汚染の可能性のあるものは食べたくないという人もいるだろう。

 だが、食品の汚染に関わる問題は放射能だけではない。健康を考えるうえでは、農薬や保存料、遺伝子組み換え食品なども考えなければいけない問題だ。こうした食品汚染の問題をトータルでとらえたうえで、福島の農産物とどのように付き合っていくのか。じっくりと考える秋にしたい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 厨房の冷蔵庫に入る、アイスケースの中で寝そべる、食材を粗末にして遊ぶ……。インターネット上に、バイト中の自分の悪ふざけを軽々にさらしてしまう行為、またはそれによる炎上事件を「バイトテロ」と呼ぶ(おそらく、細菌兵器を用いた「バイオテロ」から来ているのだろう)。清潔を是とする日本では、店舗の休店・閉店といった事態を招き、オーナーにとってはまさに「テロ行為」に近い。

 現在のツイッターのスローガンは、「What's Happening?(何が起きてる?)」だが、かつては「What are you doing?(何してる?)」だった。いつどこにいても状況を発信して、仲間とつながり続けるためのツールゆえに、バイトテロは、もともと想定された使い方に沿ったものである。しかし、スローガンの変更が示す通り、ツイッターは実際にはオープンなネットワークだ。悪ふざけは見出され、アップされた写真をヒントに、名前などの個人情報が興味本位に暴かれる。バイト先を解雇になるだけでは終わらない。損害賠償の請求がありうるし、退学という事態は実際によく起こっている。

 なぜ若者たちは悲劇的な結果を想像できなかったのか? 理由は簡単だ。「つぶやき」が「世の中に向けて開かれている」という認識がないのだ。ネットは見ても、興味のないニュースの見出しはクリックしない、これは別段珍しい人間ではない。見知らぬ世間様が、自分を「クリックする」とは想像できないわけだ。なんとなく友だちに「ウケたい」という意識がなければ、まじめにバイトをしていた可能性すらある。ツイッターは「バカッター」「バカ発見器」とも揶揄(やゆ)されるが、潜在的な「バカ」の表層化を「誘う」装置であるかもしれないのだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 クロマグロの資源管理を話し合う国際機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の小委員会が9月上旬、新たな漁獲規制策で合意した。

 新規制は、幼魚の漁獲高を2002年~04年の平均値から「15%以上削減する」というもの。

 クロマグロの資源量は年々減少している。太平洋の資源量は成魚が推定で約2万3000トン(2010年)。1960年ごろは約13万トンだったというから半世紀で2割以下に落ち込んだわけだ。

 減少の主因は幼魚の乱獲だ。集魚装置を使って一網打尽にする巻き網漁で幼魚を捕獲し、それを太らせて「養殖マグロ」として売り出す「蓄養」が世界各国で広まっているのだ。そして、養殖マグロの最大の消費国がわが日本である。漁獲高も世界一だ。

 マグロは刺し身やすしネタで人気があり、それが食べられなくなると、大切な日本の食文化が失われることになる。一時的な規制は当然だろう。

 ここで、注目すべきはマグロの「完全養殖」である。卵を人口孵化させて成魚に育てる技術が近畿大学などの研究で進み、一部で事業化が始まっている。官民挙げてその完全養殖事業を拡大させてほしい。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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