《同》暴君竜.爬虫綱の化石動物で,竜盤目(⇒恐竜類)獣脚亜目ティラノサウルス科の一属.百竜の王といわれるが,アフリカ産のスピノサウルス(
北アメリカの白亜紀後期、約7500万年~6550万年前の地層から産出した肉食恐竜。分類学上は竜盤目獣脚類(亜目)テタヌラ類(下目)コエルロサウルス類Coelurosauriaティラノサウルス科Tyrannosauridaeティラノサウルス亜科Tyrannosaurinaeに属する。属名の意味は「暴君竜」で、恐竜のなかでももっとも凶暴であった。全長13メートル、体高6メートル、体重7トン。頭は1.5メートルもあり、長さ15センチメートルの鋭い歯で武装されていた。じょうぶな2本の後肢と巨大な尾をもっていたが、前肢は矮小(わいしょう)な2本指で、頑丈であるが短くて動きが限られていた。しかし1990年ごろからほぼ全身骨格が発掘されるようになり、前肢は想像されていたよりも一回り大きく、十分に餌(えさ)動物を捕まえて食べる筋力はあったと考えられるようになった。戦うときには尾が強力な武器となったと想像される。化石の骨組と、泥底に残されたくぼみ跡から考えると、休息するときは平地に腹ばいになったらしい。この恐竜の足跡が地層面に保存されている例によれば、長さ約67センチメートル、幅約76センチメートル、1歩の間隔約4メートルと計測された。歩行はかなり大股(おおまた)で、しかも速かったと思われるが、それでも時速20キロメートル程度ではなかったかといわれる。近年の研究により、子供は有毛で肢(あし)が長かったと想定されている。子供たちが草食恐竜を追い込んで、待ち伏せしていた親がとどめを刺すというように、家族で狩りを行った可能性があげられている。カナダで大小のアルバートサウルスAlbertosaurusが22体の群れで発見されたことがこの仮説のきっかけとなった。生体力学的検討では、尾を水平に保ち、体の重心を股関節(こかんせつ)よりやや前方に置き、歩行速度は時速約6.4キロメートルといわれる。ワニの骨格などとの比較から、大形で骨太のタイプが雌で、細身できゃしゃなタイプが雄であったらしい。アブミ骨の大きさと形からみると、聴覚が優れていたので、自分の発する声もそれなりの大きさであったろう。脳の研究に基づくと、遠いところからでも、鋭い嗅覚(きゅうかく)により獲物に接近し、立体視により正確な捕獲活動をしたと思われる。死肉食との説もあるが、死肉があればそれも食べ、なければ狩りをしたのであろう。肋骨(ろっこつ)断面で算定される年輪によると、寿命は最大で30歳ほど、13~17歳には成長速度が早かったらしい。
岩波 生物学辞典 第5版
《同》暴君竜.爬虫綱の化石動物で,竜盤目(⇒恐竜類)獣脚亜目ティラノサウルス科の一属.百竜の王といわれるが,アフリカ産のスピノサウルス(
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