日本の国際取引に関する基本法。略称は「外為法(がいためほう)」。国際取引に対して為替(金融)の側面と貿易(物)の側面の両方からの規律を定めている。1949年(昭和24)制定。昭和24年法律第228号。かつては「外国為替及び外国貿易管理法」と称していたが、1997年(平成9)改正により「管理」の語が削除された(施行は1998年4月)。
国際取引が縮小すると国内産業は保護されるが、国内需要は満たされない。他方、国際取引が拡大すると国内需要は満たされるが、国内産業は衰退し、さらに禁輸品の輸出入のおそれが増大する。それゆえ、国際取引に対する規制はその経済的背景事情に多く依存し、外為法も時代背景に応じてさまざまな改正がなされてきた。
外為法が制定された1949年当時は、日本は経済基盤が脆弱(ぜいじゃく)であり、国際収支は赤字に悩んでいた。そこで国内産業を保護するため、為替管理を厳重な国家管理に服させることとした。同時期に「外資に関する法律」(昭和25年法律第163号)も制定され、対内直接投資に認可制度を導入した。その後日本は1964年にOECD(経済協力開発機構)へ加盟し、高度経済成長も相まって、諸外国からの為替自由化の要請が高まるなど、外為法の厳重な為替管理が日本の実情にあわなくなってきた。それを踏まえてなされたのが1980年改正であり、為替管理および投資管理の自由化に舵(かじ)をきったのである。同改正により「外資に関する法律」は廃止され、外為法に統合された。
その後、冷戦構造下において設けられていた対共産圏輸出禁止措置に国内企業が違反して禁輸品の輸出を行った事件(ココム違反事件)が発生したことを踏まえ、1987年には、「国際的な平和及び安全の維持」を妨げる地域への特定の種類の貨物の輸出については、通商産業大臣(当時。現在は経済産業大臣)の許可を必要とするとの法改正がなされた。1989年から1990年にかけて日米において非公式折衝がもたれ、そこではよりいっそうの自由化・市場開放が求められた(日米構造問題協議)。これを踏まえ、1991年改正により、対内直接投資について、大蔵大臣(当時。現在は財務大臣、以下同様)および事業所管大臣への事前届出が必要であったところを、事後報告制に改めた。さらに、金融・資本取引のグローバル化を背景に、日本の市場を国際的に魅力あるものとするためには、よりいっそうの自由化・規制緩和が必要であった。それを視野に入れてなされた1997年改正では、外国為替管理の抜本的見直しがなされ、対外直接投資について大蔵大臣への事前届出制から事後報告制へと改めたことを中心に、対外取引の完全な自由化が目ざされた。また、「外国為替及び外国貿易管理法」という名称の「管理」という語は、「統制」に近い意味を有することから、自由化が進んだ改正法にはそぐわないとの理由により削除された。
2001年(平成13)9月のアメリカ同時多発テロ発生を機に、国際的テロ対策が課題となり、このような状況を踏まえ、2002年改正では、外国為替取引においてテロリスト等の資産凍結を実施するための規定が導入された。その後も、日本の平和・安全の維持のために規定の整備が続き、2004年改正では、閣議決定に基づき、支払い、資本取引、役務取引、貨物の輸出入取引などにつき規制を加える規定が導入された。さらに、国家安全保障の観点から、以前より規制対象であった、日本の居住者から外国投資家が株式を購入する場合である「対内直接投資等」のみならず、2017年改正では、外国投資家が他の外国投資家から国内の非上場の会社の株式を取得した場合につき「特定取得」という類型を新たに設け、無届けで対内直接投資等または特定取得を行った外国投資家等に対し、国の安全を損なうおそれがある場合には、株式の売却命令等の措置命令を行うことができる規定が導入された。また、2019年(令和1)11月改正では、対内直接投資のうちポートフォリオ投資(会社経営に参加する意図がない投資)については、事前届出を免除するとの規定が導入された。このように、国内外の状況に応じた法改正は今後も続いていくものと思われる。
2020年4月17日
外為(がいため)法と略称。日本の外国為替と外国貿易の規制に関する基本法である。外為法は,〈外国為替及び外国貿易管理法〉として1949年に公布されたが,当時は,私人の外国為替取引を原則として禁止し,政令で解除した場合にのみこれを認めるという立法政策をとっていた。その後,外為法は,原則自由,そして有事にのみ規制するという方向に改められた。すなわち,79年に全面的に改正され,87年および91年に大改正がなされ,さらに97年には法律名から〈管理〉が外されるなどの大幅改正(98年4月施行)を経て現在に至っている。
同法は,私人の行う外国為替取引は原則として自由とし,緊急事態の発生など,特殊な場合にのみこれを規制できるものとしている。すなわち,外為法1条は,(1)外国為替および外国貿易などの対外取引は原則として自由であること,(2)対外取引に対して規制を行う際には,必要最小限の管理または調整にとどめるべきこと,を明文化した。
以上の趣旨から,資本取引は原則として自由とされ,例外的に,有事規制が定められている。これらの例外的規制を発動するには,(1)日本の国際収支の均衡維持が困難である,(2)外国為替相場が急激に変動する,または,(3)大量の資金移動により日本の金融市場または資本市場に悪影響がある,という要件が必要とされている(第21条)。このほか,役務取引も原則として自由とされ,さらに,外国投資家の対内直接投資も原則として自由とされている。
97年改正の現行法下では,従来外国為替公認銀行などに限られていた外貨取引が,原則的には自由とされている。
外為法のもうひとつの側面は,貿易管理である。これには輸出管理と輸入管理の両面がある。これらの詳細は,輸出貿易管理令および輸入貿易管理令に規定されているが,ここでは,外為法に規定されている輸出および輸入管理の大綱についてのみ述べる。輸出については,外為法47条以下に規定されているが,これらによると,輸出は原則としては自由とされており,その制限は例外的にのみなされる。輸出の制限は,国際収支の均衡の維持,ならびに外国貿易および国民経済の健全な発展に必要な場合にのみ行われ,かつ,それに必要な範囲を超えてはならないとされている。輸出の制限は,輸出承認制という形で実施される。すなわち,通産大臣は,国際収支の均衡の維持ならびに外国貿易および国民経済の健全な発展に必要と認める場合には,ある特定品目のある特定仕向地への輸出について,輸出承認制を実施することができる。これが実施されると,当該商品を当該仕向地へ輸出しようとする者は,通産大臣の承認を受けなければならず,通産大臣はその承認に際して条件(たとえば,最低輸出価格,最大輸出数量等)を付することができる。
外為法52条は,輸入管理について規定しているが,それによると,外国貿易および国民経済の健全な発展を図るため,貨物を輸入しようとする者は,輸入貿易管理令の定めるところにより,輸入の承認を受ける義務を課せられることがあるとされている。いわゆる輸入割当制はこの規定に基づいて行われているものである。
なお,外為法の規定による処分に対しては,処分の名宛人は不服申立てをすることができ,申立てがあったときには,主務大臣は公開の聴聞を行わなければならない。当該処分に対する行政訴訟は,この不服申立てに関する決定または裁決の後においてのみ提起できる。
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