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大根

ジャパンナレッジで閲覧できる『大根』の日本国語大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典のサンプルページ

日本国語大辞典
だい‐こん 【大根

解説・用例

【一】〔名〕

〔一〕(「おおね」に当てた漢字を音読したもの)

(1)アブラナ科の一年草または二年草。中央アジア原産とみられ、重要な蔬菜として古くから広く栽培されている。高さ約一メートル。地下に多汁・多肉質で長大な白い根がある。葉は群がって生え、とげ状の細毛がある。葉身は羽状に分裂、各裂片は卵状楕円形で縁はあらい歯牙(しが)状。春、葉間から花茎がのび、淡紫白色の十字形花が群がって咲く。花後、翼のある長さ四~六センチメートルの長形の果実を結び、中に黒褐色で扁平な球状の種子ができる。根は煮て、または生で食べるほか、切り干し・漬け物などにし、葉も食べられる。漢名、莱〓、蘿蔔(らふく)。すずしろ。おおね。だいこ。学名はRaphanus sativus 《季・冬》

*東寺百合文書‐を・応永二六年〔1419〕七月二日・食器食物等料足注文(大日本古文書六・一二八)「十文 大こん」

*俳諧・陸奥鵆〔1697〕「菊の後大根の外更になし〈芭蕉〉」

*大和本草〔1709〕五「蘿蔔(ダイコン) 又莱〓とも温菘とも云。和名於保根(おほね)」

*日本植物名彙〔1884〕〈松村任三〉「ダイコン 莱〓

(2)技量が乏しく芸のつたない俳優をあざけっていう語。大根役者。

*難波土産〔1738〕「へた役者の大こん」

*雑俳・柳多留‐一〇七〔1829〕「大根が馬で乗込みの村芝居」

*火の柱〔1904〕〈木下尚江〉九「銭取り道具と大目に見て居りゃ、菊三郎なんて大根に逆(のぼ)せ上って」

*桐畑〔1920〕〈里見〓〉二つの心・五「どんな名優の跡を継いだって、大根(ダイコン)は矢っ張り大根なのと同じで」

(3)紋所の一つ。大根をかたどったもの。違い大根、割り大根などがある。

(4)大根のように太くて、ぶかっこうなすねや足。特に女性の足をさしていい、転じて、女性をいう。

*雑俳・卯の花かつら〔1711〕「大根の構男にかこはれて」

(5)「だいこんじめ(大根注連)」の略。

*歌舞伎・芽出柳緑翠松前〔1883〕序幕「古い注連の大根や牛蒡で、御幣ぐるみに梵天国」

(6)男根の大きなもの。

〓〓鈔〔1445~46〕一四「仍天下に勅を下して、大根(だいコン)の者を求め給。押勝其仁に当と云共、道鏡猶を能く是に叶へり」

*評判記・嶋原集〔1655〕序「孝謙帝、求〓大根〓兮、道鏡進〓官位〓

〔二〕仏語。大乗を信ずる根機。また、すぐれた能力。資質。大機。上根。

*兵範記‐保元元年〔1156〕六月四日「伴聖人、近代無双行者、心性大根権者」

*正法眼蔵〔1231~53〕行持下「さしおかざる利機といふべし、大根といふべし」

*十善法語〔1775〕二「大乗法にありては、大根大機もろもろの菩薩を利益す」

【二】

「だいこんばたけ(大根畑)【二】」に同じ。

*雑俳・柳多留‐三七〔1807〕「こひぞつもりて大根が五十本」

発音

〓ザイコ〔大和〕シャーコ・ジャコ〔島原方言〕ジャーコ〔熊本分布相・NHK(熊本)〕ジャーコン・ヂャーコ・ヂャコ・ヂャコン・リャーコン・リャコ〔熊本分布相〕ダーゴ・タイゴ〔岩手〕ダーコン〔島原方言・鹿児島方言〕ダイコ〔茨城・栃木・埼玉方言・東京・石川・福井・福井大飯・山梨・岐阜・飛騨・伊賀・大阪・NHK(兵庫・島根・熊本)・紀州・和歌山県・鳥取・島根・讚岐・愛媛周桑・瀬戸内・福岡〕ダイゴ・ダエゴ〔岩手・山形〕ダイコー・デャコ〔鳥取〕ダイ〓ン・ダェーコ・ダェーゴ・ダェコン〔千葉〕ダェコ〔岡山〕ダエコ〔新潟頸城・富山県・伊賀・鳥取・島根〕チァーコ〔山梨〕ヂャーコン〔佐賀・壱岐〕デァーコ〔埼玉方言〕デァーゴ・デァーゴン〔栃木〕デァゴ〔岩手・秋田〕デーコ〔埼玉・埼玉方言・神奈川・信州読本・岐阜・島根・長崎・島原方言〕デーゴ〔岩手・八丈島〕デコン〔山梨・宮崎(大分実態)・鹿児島方言〕デーコン〔埼玉方言・鹿児島方言〕デャーコ〔広島県〕デャーゴ〔八丈島〕

〓[0]〓[ダ]

辞書

下学・文明・伊京・明応・天正・饅頭・黒本・易林・日葡・書言・ヘボン・言海

正式名称と詳細

表記

大根下学文明明応天正饅頭黒本易林書言ヘボン言海

〓伊京黒本

図版

大根【一】〔一〕(1)
大根【一】〔一〕(3)違い大根
大根【一】〔一〕(3)割り大根



日本大百科全書(ニッポニカ)
ダイコン
だいこん/大根
Japanese radish
[学]Raphanus sativus L.

アブラナ科の一、二年草。春の七草の一つで、スズシロともいう。歴史の古い野菜で、その発祥地には諸説があるが、一般にはカフカスからパレスチナ地帯原産と考えられている。世界各地で栽培され、形態的にも異なった多くの品種があるが、それらはすべて植物分類学上、単一の種とされている。根生葉は互生で束生し、へら形のものから羽状に深裂したものなどがあり、普通は粗い毛がある。春に地上茎を直立し、枝先に総状花序を出し、白または淡紫色の十字花を多数つける。果実は長さ約5センチメートルの長角果でくびれがあり、膨らんだ部分に1個ずつ1果に数個の種子が入っている。アブラナ属(カブやキャベツ)と異なり、熟しても莢 (さや)は裂開しない。茎の基部とそれに続く主根の肥大したものが大根で、葉とともに食用とする。大根の形は丸型から棒状まで品種によりさまざまである。

[星川清親]

祖先種

日本をはじめ世界各地の海岸にハマダイコンとよぶ植物が野生しているが、これも今日の栽培ダイコンと同一の種とみなされている。しかしハマダイコンと栽培ダイコンとの関係は現在もまだ明確でなく、ハマダイコンは栽培ダイコンの逸出したものであるとする説も根拠が薄い。それは、ハマダイコンは果実の莢はくびれがあるが熟すと折れやすく、花色は紫、根にデンプンが蓄積するなどの特徴があり、栽培ダイコンとは明らかに異なっているからである。逆にハマダイコンは栽培ダイコンの成立に関与した祖先種であるとする説もある。またヨーロッパのダイコンの祖先は東洋のダイコンの祖先とは違ったR. raphanistrum L.であるとする説もある。また、日本には、福島県会津地方や山形県米沢 (よねざわ)地方に、海岸生のハマダイコンとは違った内陸性ダイコンの自生もみられる。これらと海岸性のハマダイコン、栽培ダイコンとの関係もまだ十分解明されていない。

[星川清親]

品種

ダイコンの品種は華南型ダイコン、華北型ダイコン、ハツカダイコン、小ダイコン、クロダイコンに大別される。日本で古くから栽培され、品種が多く分化しているのは、華南型ダイコンである。華北型ダイコンは華南型よりもあとに伝来したと考えられ、日本の品種の主流を占めている。ハツカダイコンは明治以降に導入された。小ダイコンは南ヨーロッパおよび中国北部に栽培される小形の品種群である。

 近年まで日本各地で栽培されたダイコンの品種は100~120ほどに上る。それらは、栽培型や根の大きさ、形、色、また葉形など大きな変異がある。耕土の深い地層の関東地方では、長根型の品種で根全体が地中に潜っている吸い込み型の品種が多く栽培される。耕土の浅い地層の関西地方では、丸大根や根の上部が地上に出る抽根型の品種がおもに栽培される。桜島ダイコンは世界最大の丸型ダイコン品種で、20キログラム以上になる。一方、守口 (もりぐち)ダイコンは世界最長のダイコンで、直径は2~3センチメートルであるが長さは1.5メートルに達する。また、ハツカダイコンはまるごと口に入るほど小形である。根の外皮は純白の品種が多いが、地上に抽出した部分が緑色になる青首 (あおくび)といわれる品種群もある。華北型ダイコンの系統の地方在来品種には赤首のものや、白地で皮目の部分が赤紫色になるもの、紅赤色丸型のものなどがある。最近、中国野菜として華北型の品種がいくつか導入され、品種はますます多様化した。それらには緑皮紅肉で丸型、緑皮緑肉で総太り型、紅皮白肉で丸型、紅皮白肉で長型などがある。クロダイコンは文字どおり外皮が黒色のものである。

 葉の形の変異も多く、葉縁に欠刻のある典型的なダイコン葉型のほか、欠刻のないカブ葉または板葉とよばれるもの、欠刻の著しいニンジン葉とよばれるものがある。

 日本におけるダイコンの品種は、18世紀にすでに各地に数多く発達していた。19世紀初めの記録『成形図説』(1804)には、関東地方に練馬 (ねりま)など、東海地方に守口、宮重 (みやしげ)など、九州地方の桜島など、今日にまで引き継がれ栽培される品種が現れている。これらは今日までの間にさらに多くの品種を分化した。そのほかに昔から広く知られた品種としては、四十日 (しじゅうにち)、亀戸 (かめいど)、美濃早生 (みのわせ)、大蔵 (おおくら)、三浦 (みうら)、理想、高倉、方領 (ほうりょう)、阿波 (あわ)、聖護院 (しょうごいん)、春福 (はるふく)、時無 (ときなし)などがある。しかし最近は、市場に出荷されるダイコンのほとんどが従来の品種を交雑した一代雑種品種で占められていて、往年の純粋な品種の特徴は失われている。

[星川清親]

栽培

もっとも用途の多い初冬どり漬物用ダイコンは、夏の終わりころに、畑を深く耕して基肥を施す。堆肥の多用は味のよいダイコン生産に不可欠とされる。低いうねをつくってから、約30センチメートルおきに数粒ずつ種子を播 (ま)く。秋口に芽生えを3、4回にわたって間引きして一本立てとする。また土寄せをして根の肥大を促す。この間に3回ほど追肥を行う。全施肥量は10アール当り窒素14キログラム、リン酸3キログラム、カリ13キログラムが標準で、地力に応じて加減する。病害には近年ウイルス病が大被害をおこすことが多く、一代交雑品種の普及もこのウイルス病抵抗性品種をつくることに主目的の一つがあった。そのほか、白斑 (はくはん)病、黒斑 (こくはん)病、黒腐 (くろぐされ)病などがとくに連作畑に出やすい。土壌センチュウの被害も大きい。害虫にはアブラムシがウイルス病を媒介し、幼苗期にはシンクイムシ、ヨトウムシの害があり、ほかにダイコンサルハムシ、キスジノミハムシなどがある。収穫は適期を過ごすと、す入りをおこすので、生育の早いものから抜いて収穫する。

 ダイコンは、現在日本でもっとも作付面積の多い野菜で、野菜全体の作付面積の約1割を占めている。全国各地で栽培されるが、とくに北海道と東京近郊の諸県で多く、品種と作型との組合せで一年中出荷されている。生産量の多いのは秋・冬ダイコンで、夏ダイコンは高冷地で生産され、春ダイコンは都市近郊で栽培が多い。生産量の約6割が野菜料理用に消費され、4割が沢庵 (たくあん)漬けなど加工用である。

[星川清親]

起源と伝播

栽培年代は古く、エジプトでは紀元前2700~前2200年ころ、ピラミッド建造の労働者の食事にダイコンが供された記録がある。発祥地から西へ伝播 (でんぱ)したダイコンは、ヨーロッパでハツカダイコン、クロダイコン、小ダイコンなどに発達して栽培された。しかしヨーロッパでのダイコンの普及は遅く、栽培が始まったのはイギリスでは15世紀、フランス、アメリカでは16世紀である。一方、東に伝えられたダイコンは、中国の北部と南部に分かれて入り、著しく分化・発達し、さらに10世紀以前には日本に伝えられて世界でもっとも多くの品種を分化した。大根と書いて今日のようにダイコンと読むようになったのは室町時代中期ころのことであることが、『節用集 (せつようしゅう)』(15世紀)に「大根 (だいこん)、又蘆菔 (ろふ)、蘿菔 (らふ)、大根 (おほね)」とあることから知られる。江戸前期にはすでにいくつかの品種が成立し、作型も分化していたことが当時の農書からわかる。江戸時代にヨーロッパのクロダイコンが日本に渡来した記録も残っているが、それは定着しなかった。明治時代になってハツカダイコンがヨーロッパから伝来し、栽培利用されるようになった。

[星川清親]

食品

おでん、ふろふき、みそ煮、あら煮などの煮物、漬物、おろし、なますなどに、葉をひたし物、汁の実、漬物などにして食べる。日本のダイコン品種の大部分を占める華南型の品種は、多汁質でとくに煮物に向く。ずんどう形の関東の大蔵 (おおくら)や、丸形の関西の聖護院 (しょうごいん)などは柔らかく煮物に適している。根のほうが細く曲がり、いかにもダイコンの先祖型のような方領 (ほうりょう)はふろふきに最適とされる。おろし用には辛味のないものが好まれるが、薬味用としては辛味の強いダイコンが好まれる。丸形をした辛味大根は、江戸時代にそばの薬味として珍重されたが、現在では京都府と秋田県にわずかに残っている程度である。華北型の品種で、内部まで色のついているものをおろしにすると、淡緑色や淡紅色で料理の彩りが美しい。華北型のダイコンには水蘿蔔 (すいらふく)とよばれる生食用の品種群もあり、中国で好まれている。ダイコンは凶作時の代用食としても重要な作物で、昔は東北地方の御飯の増量材(糧物 (かてもの))の首位を占めていた。根も葉も乾燥して貯蔵し、糧飯 (かてめし)や汁の実とした。切干し大根は18世紀の初めごろから愛知地方で生産された。現在は宮崎県宮崎市田野町が主産地で、全国生産の4割を生産する。また東北地方では、冬に凍結乾燥させた凍 (し)み大根をつくる。

 漬物は調理法であると同時に貯蔵技術ともいえる。江戸前期、沢庵 (たくあん)禅師の考案といわれる沢庵漬けは、練馬 (ねりま)大根の産地で売り出して一般に普及した。一方、東北地方や信州では華北型の在来品種が長期貯蔵漬物用に用いられた。これらの根はデンプン質で硬く、煮物には不向きだが、漬物として古漬けになっても味がよい。

 ヨーロッパのダイコンは、東洋に比較すると形が小さく、利用も多くない。クロダイコンは辛味が強くスパイス的に利用され、スライスしてサンドイッチやサラダに用いる。ハツカダイコンはラディッシュとよばれ、サラダやオードブルに丸ごと生食用として利用される。

 ダイコンの栄養価は豊かではないが、繊維質が多いので健康食としての意義が大きい。また多く含まれるジアスターゼが消化を助けるといわれる。一方、葉は可食部100グラム中にカルシウム210ミリグラム、カロチン2600マイクログラム、ビタミンB20.13ミリグラムなどを含み、黄緑色野菜として栄養的に優れている。在来品種のなかには小瀬菜 (こぜな)のように葉とり専用の品種もある。穎割 (かいわ)れ大根はダイコンの芽物 (めもの)ともいえるもので、かつては高級品で吸い物などに使われたが、近ごろでは生野菜としてサラダに、また薬味としての利用も急増し、屋内で工業的に大量生産されて一年中販売される。

 インドなど南方地域にはさや(種子を包む部分)を食用とするための品種がある。また種子からは食用油もとれる。

[星川清親]

文化史

中国ではもっとも古い野菜の一つで、周代の『詩経』「邶風 (はいふう)」の谷風 (こくふう)に名のある菲 (ひ)は、ダイコンと解釈されている。ついで、紀元前2世紀の『爾雅 (じが)』に「〓、蘆〓 (ろうひ)、紫花大根、俗呼 (ぞくによぶ)雹〓 (ほうとつ)」との記述があり、大根の名が初出する。紀元後6世紀の『斉民要術 (せいみんようじゅつ)』には蘆菔 (ろうふく)の名称で、その角 (さや)、根、葉いずれも生食できると書かれている。莢 (さや)を食べるラットテイルラディッシュR. sativus L. var. caudatus L.は、インド、タイなどの山地で発達し、莢が長いのは30センチメートルに達するが、この系統は日本に伝わらなかった。ダイコンは日本でも古い野菜で、『古事記』には、仁徳 (にんとく)天皇が皇后に贈った次の歌に名が出る。「つぎねふ山城女 (やましろめ)の木鍬 (こくわ)持ち打ちし淤富泥 (おほね) 根白の白腕 (しろただむき) 枕 (ま)かずけばこそ 知らずとも言はめ」。大根は白い腕に例えられ、現代の大根足と違い、美しさの対象としてとらえられている。

[湯浅浩史]



改訂新版 世界大百科事典
ダイコン
大根
Raphanus sativus L.

アブラナ科の二年草。古名をオオネ,スズシロ,カガミグサなどともいう。ダイコンの栽培は古くから行われており,エジプトでは古代に普及していた。ピラミッドの碑文にもピラミッド建設のときにタマネギやニンニクとともにハツカダイコンを労働者に食べさせたことが記されている。また,古代ギリシア・ローマ時代にも重んじられ,ローマ人によってヨーロッパに伝えられ,中世以後にゲルマン人やスラブ人によってさらに広範囲の地域に広められた。フランスやイギリスへの伝播(でんぱ)は16世紀以後のこととされている。中国でも栽培は古くから行われ,紀元前に蘆〓(ろひ)の名がある。この名称はダイコンが西方からもたらされたことを暗示している。

 多様なダイコンの品種を大別するとヨーロッパ系とアジア系とに区別される。ヨーロッパ系の代表的なものはハツカダイコン(ラディシュ)であり,アジア系は日本のダイコン(英名Japanese radish)である。しかし中国やインドのダイコンの形質には,ヨーロッパ系と日本系のダイコンの中間をつなぐ形質のものが多くあり,両極端の中間にはっきり区別の線を引くことはできない。

 これらダイコンの栽培品種は普通次の5群に分けられることが多い。すなわち(1)ハツカダイコン群,(2)小ダイコン群,(3)黒ダイコン群,(4)北支ダイコン群,(5)南支ダイコン群である。これらは根の肥大のようすやそのデンプン含量の多少,葉形や毛の有無,果実の形などで区別される。またそれぞれ利用方法にも違いがある。このうち日本のダイコンは,根の肥大性や形態,肉質などで世界に類をみないほどの大分化をしているが,南支ダイコンの影響を大きく受けて成立したと考えられる。しかし北支ダイコンの影響も多少受けている。

起源,来歴

栽培ダイコンが多様な分化をしているため,その起源については諸説があり,多系説も多く主張されてきた。しかし,栽培ダイコンはすべて2n=18の染色体数を有する二倍体で,相互に交雑が可能であり,ゲノムも同一とされている。またヨーロッパからアジアにまで広く野生あるいは野生化しているハマダイコンとも交雑する。それらの点から栽培ダイコンはハマダイコンから東地中海地域で最初に栽培化され,それがヨーロッパ域でハツカダイコン群,小ダイコン群,黒ダイコン群を分化し,インドから南中国へ入ったものが南支ダイコン群に,また中央アジア域を通って中国に入ったものが北支ダイコン群に分化してきたと考えられる。さらにこれら品種群の分化にはハマダイコンや近縁野生種との遺伝子の交流が関与して,現在見られるような複雑な栽培ダイコンの品種群が成立してきたものである。日本へは中国を経て伝来し,文献上の最も古い記録としては《古事記》の中に〈淤富泥(おおね)〉の名がでている。《延喜式》には栽培法や利用法も記されており,春の七草にはスズシロの名で使われている。日本のダイコンは世界で最も変化に富み,ダイコンの品種分化の第2次センターになっている。

形状,品種

根形には丸形,円筒形,紡錘形,くさび形,棒状形およびそれら各種の変形があり,葉形はへら形でほとんど欠刻のないものから,羽状で深く切れ込むものなど多様である。また根の大きさは,桜島ダイコンのような20kgにもなる巨大なものからハツカダイコンのように極小のものまであり,長さも守口ダイコンのように細くて長さが1m以上にもなるものまである。根色は白が一般的であるが,赤,緑,黒などがあり,さらに部分的に色の異なるものや,外皮と内部とで色の異なるものなど変化に富んでいる。品種はかつては特色のある地方独特のものが育成され,15程度の品種群に分けられるが,最近の傾向として,ほとんどが栽培しやすくそろいのよい一代雑種(F1)が用いられている。現在の主要な品種群は,みの早生(わせ),宮重(みやしげ),練馬の3群で,さらに阿波晩生(あわおくて),聖護院(しようごいん),二年子(にねんご),時無(ときなし)の4群を加えた7群が経済的な実用品種群として栽培され,需要の大半をまかなっている。また,生育が速く,サラダなどの生食に適するハツカダイコンの栽培も行われている。最近の品種の動向としては消費者の好みから,青首化と小型化の傾向がみられる。ダイコンの栽培は,収穫時期により,秋ダイコン,冬ダイコン,春ダイコン,初夏ダイコン,夏ダイコン,ハツカダイコンなどの作型に分けることができる。おもに春まき,夏まき,秋まきにするが,暖地や高冷地など立地条件を生かした栽培も多く,漬物用,青果用など用途別にも産地が分かれる。全国的に栽培されるが,面積的には北海道,千葉,青森,宮崎,鹿児島などの道県が多い。
[平岡 達也]

料理

《延喜式》に耕作法の記載があるように,ダイコンは古くから栽培され,食用にされていた。古名を〈おおね〉といい,《和名抄》は〈〓〉〈蘿菔〉の字をあて,〈俗に大根の二字を用う〉としている。ほかに,〈蘿蔔(らふ)〉とも書き,せん切りにした意味の繊蘿蔔がなまって千六本ということばが生じたという。近世以前どんな味付けをして食べていたものか,ほとんど知る手がかりがない。《新猿楽記》には〈食歎愛酒〉の七の御許(おもと)の好物の一つに〈大根舂塩辛〉というのが見えるが,これがダイコンと塩辛をいっしょについたものか,ダイコンをつき砕いて塩味にしたてたものかわからない。《徒然草》には,九州の押領使だった人が万病の薬だとして毎朝ダイコンを2本ずつ焼いて食べたという話がある。あるとき,人が出払って無人の状態でいるところで敵襲をうけた際,見知らぬ兵(つわもの)ふたりが現れて撃退してくれた。不思議に思って尋ねると,そのふたりはダイコンの精だったというのであるが,その焼きダイコンにどんな調味をしたものか,これまた不明である。室町末期の成立と思われる《庖丁聞書》にいたって,魚の上におろしダイコンを置いた〈雪鱠(ゆきなます)〉や,削りダイコンを使う〈ひでり鱠〉という酢を使った料理が姿を見せる。なます以外の料理では,近世初頭の《料理物語》(1643)になって,やっと汁,煮物,香の物などに使うことが記載される。元禄(1688-1704)ころはそばの普及がめざましく,その薬味として辛みダイコンが盛んに栽培,利用されたようである。そして,1785年(天明5)には,いわゆる〈百珍物〉流行の機運に乗じて,《大根一式料理秘密箱》《大根料理秘伝抄》というダイコン料理の専門書2種が刊行されるようになるが,この現象はおそらくダイコンの品種改良の進歩を反映したものだったに違いない。

 ダイコンは,おろしなどにしての生食,おでん,ふろふきなどの煮食,汁の実,漬物と,きわめて利用範囲が広い。また,切干しにしたり,葉を干して干葉(ひば)として米飯の増量材にするなど,日本人の食生活を多面的にささえてきた食品であった。成分上の特徴としては,根部に消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ)とビタミンCを多量に含有し,葉部にはカロチンが豊富である。このアミラーゼとビタミンCは熱に弱いので,ダイコンおろしなどにしての生食がよい。アミラーゼの活性はしょうゆでは阻害されないが,酢では阻害される。なお,へたな役者を〈大根役者〉というが,これはダイコンによる食中毒の例を見ないことから,〈あたったためしがない〉にかけたものだという。
[菅原 龍幸+鈴木 晋一]

民俗

大根は,かつて青森県五戸地方で,10人家族でひと冬700本用意したというほど,漬物やかて飯の材料として日常の重要な食糧とされた。一方,大根は種々の形に細工しやすく,婚礼の宴席に男女の性器を模したものが出され,またその色が神聖感を与えるために,古くから正月の歯固めをはじめ,ハレの日の食品や神供として用いられた。また大根は種々の俗信や禁忌を伴っている。種を土用の入りや丑(うし)の日に撒(ま)くと,葬式用や曲り大根になるといって嫌う所が多い。また大根畑に七夕飾りの竹や桃の枝をさしておくと虫がつかないという所も多い。東日本では,十日夜(とおかんや)を〈大根の年取り〉といい,この日に餅をつく音やわら鉄砲の音で大根は太るといい,大根の太る音を聞くと死ぬといって大根畑へ行くことや大根を食べるのを禁じている所もある。西日本では10月の亥子(いのこ)に同様の伝承があり,この日に大根畑へいくと大根が腐る,太らない,裂け目ができる,疫病神がつくといい,また大根の太る音や割れる音を聞くと死ぬともいう。このほか,半夏生(はんげしよう),彼岸,社日,夷講などの季節の折り目や収穫祭にも大根畑にいくのを忌む。これは大根が神祭の重要な食品であり,大根畑は霊界に近い神の出現する神聖な場所と見なされていたことを示している。北九州では,稲の収穫祭である霜月の丑の日の前日に大黒祭が行われ,二股大根を箕(み)にのせ,供物をして祭っている。奥能登のアエノコトでも,二股大根を田の神として丁重に扱う風がある。大黒と大根は語音が近いためか,二股大根を〈大黒の嫁御〉といっている地方は多い。また〈違い大根〉は聖天(歓喜天)の紋とされ,この絵馬を聖天にささげ,大根を絶ち,夫婦和合や福利の祈願を行う。また,大根が聖天の持物とされることもある。
[飯島 吉晴]

[索引語]
Raphanus sativus スズシロ カガミグサ ハツカダイコン ラディシュ 桜島ダイコン 守口ダイコン 蘿菔 大根 蘿蔔 繊蘿蔔 千六本 雪鱠 ひでり鱠 大根一式料理秘密箱 大根料理秘伝抄 干葉 アミラーゼ ジアスターゼ 大根役者 十日夜 大根の年取り 二股大根 大黒の嫁御 違い大根
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検索コンテンツ
1. おお‐ね[おほ‥]【大根】
日本国語大辞典
和名於保禰 俗用大根二字〉根正白而可食之」*御湯殿上日記‐文明一六年〔1484〕一一月二日「やわたの田中おほねまいらする」*俳諧・曠野〔1689〕員外「墨ぞめは
2. 大根(おおね)
古事類苑
植物部 洋巻 第2巻 42ページ
3. おほ-ね【大根】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕だいこん。(冬の季語) 「木鍬持ち打ちし大根、根白の白腕」〈古事記・下・仁徳〉木のくわを持って掘りおこした大根、その根が白いように白い腕。[参考]「だい
4. だい‐こ【大根】
日本国語大辞典
アノ役者のことか』〈略〉〈此大根といふ事は、上方にては役者の下手なものを大根といふ〉」*春泥〔1928〕〈久保田万太郎〉向島・五「大根(ダイコ)、大根(ダイコ)
5. ダイコン画像
日本大百科全書
分化した。大根と書いて今日のようにダイコンと読むようになったのは室町時代中期ころのことであることが、『節用集せつようしゅう』(15世紀)に「大根だいこん、又蘆菔
6. だい‐こん【大根】画像
日本国語大辞典
っ張り大根なのと同じで」(3)紋所の一つ。大根をかたどったもの。違い大根、割り大根などがある。(4)大根のように太くて、ぶかっこうなすねや足。特に女性の足をさし
7. だいこん【大根】[頭見出し]
故事俗信ことわざ大辞典
)ると甘(あま)い・大根(だいこん)尻尾(しっぽ)に蕪(かぶ)頭(あたま)・大根(だいこん)と女房(にょうぼう)は盗(ぬす)まるるほどよい・大根(だいこん)の皮
8. だいこん【大根】
数え方の辞典
▲本、●株 植物としては「本」「株」で数えます。食用となる根の部分は「本」で数えます。
9. 大根(だいこん)
古事類苑
植物部 洋巻 第2巻 42ページ
10. だい‐こん【大根】
仏教語大辞典
仏臨終最後説。被小乗根。豈非是則頓為大根、亦非是則為小機漸耶」 2 男性性器の大きなもの。 壒囊鈔 一四・五 「女根広博にして、敢其欲を停者なし。仍天下勅を下し
11. おーね【大根】[方言]
日本方言大辞典
7~59 大阪市「ををねは親切なお方やと思ひますがね」637方言と大阪(猪飼九兵衛)1948「大根がしっかりしてる」638大阪方言事典(牧村史陽)1955 兵庫
12. だいこん【大根】[方言]
日本方言大辞典
言辞典(広戸惇・矢富熊一郎)1963だいこん の年取としとり陰暦十月十日、農家の祝日。大根を食べず、大根畑に入らない風習があり、虫の供養をする習わしもある。 新
13. だいこん【大根】[標準語索引]
日本方言大辞典
鯛とだいこん:大根の汁たい のふくもどきだいこん:大根が凍ってすが入るしどる / すどるだいこん:大根と揚げなどの煮つけびくにごろしだいこん:大根などのすしょー
14. ダイコン画像
世界大百科事典
守口ダイコン 蘿菔 大根 蘿蔔 繊蘿蔔 千六本 雪鱠 ひでり鱠 大根一式料理秘密箱 大根料理秘伝抄 干葉 アミラーゼ ジアスターゼ 大根役者 十日夜 大根の年取
15. おおね‐がわ[おほねがは]【大根川】
日本国語大辞典
〔名〕弘法伝説の一つ。村の女が大根を洗っているところに旅僧(実は弘法大師)が通りかかり、大根がほしいというのに与えなかったため、川の水がなくなったという筋の伝説
16. おおねがわじんじゃ【大根川神社】大分県:宇佐市/旧四日市町地区/佐野村
日本歴史地名大系
また八幡神は修行中に川(五十石川のこと)で大根を召されたので大根川といったともいう。長保五年(一〇〇三)八月一九日の八幡大菩薩宇佐宮司解(宮寺縁事抄)に行幸会豊
17. おおねがわむら【大根川村】山口県:玖珂郡/美和町
日本歴史地名大系
[現]美和町大字大根川 玖珂郡北東部に位置する村で、東は百合谷・長谷の両村、南は日宛村、西は佐坂・滑の両村、北は黒沢村に囲まれ、村内を大根川が北流、川沿いに石州
18. おおねがわむら【大根川村】大分県:宇佐市/旧四日市町地区
日本歴史地名大系
[現]宇佐市大根川 敷田村の南、五十石川の中流域にあり、東と南は赤尾村、西は佐野村。正和二年(一三一三)八月二七日の鎮西下知状写(屋形三郎文書)によると野仲道興
19. おお‐ねぎ[おほ‥]【大根木】
日本国語大辞典
〔名〕正月の門松の根元に立てる割木。年木。袴木(はかまぎ)。
20. おおねこむら【大根子村】青森県:南津軽郡/田舎館村
日本歴史地名大系
い家数一〇とある。大根子は対岸川辺村との関係が深く、延元元年(一三三六)四月二日の結城宗広譲状(白河証古文書)にある「河辺桜葉郷」の一部と考えられ、川辺村の熊野
21. おおねざかむら【大根坂村】長崎県:北松浦郡/大島村
日本歴史地名大系
[現]大島村大根坂 的山大島の北部、西宇土村の北西に位置し、東部は長崎鼻と馬込鼻に挟まれて北に開く広い入江(大根坂湾)に臨む。北方に二神島が浮ぶ。江戸時代は大島
22. おおねじまのまき【大根島牧】
国史大辞典
出雲国島根郡の牧。大根島は現在の島根県八束郡八束町で島根半島東側の中海(なかうみ)に浮かぶ火山島であり、古くはタコ島(〓
23. 大根占
日本大百科全書
きぐんの旧町名(大根占町ちょう)。現在は錦江きんこう町の北部を占める。旧大根占町は1933年(昭和8)町制施行。2005年(平成17)田代たしろ町と合併し錦江町
24. 大根占
世界大百科事典
→錦江[町]
25. おおねじめごう【大根占郷】鹿児島県:肝属郡/大根占町
日本歴史地名大系
初代地頭を寛永一四年(一六三七)死去の桂太郎兵衛忠増としている。地頭仮屋は城元村(旧大根占役場付近、現大根占小学校東側)に設置され、周辺に麓集落が形成されていた
26. おおねじめちょう【大根占町】鹿児島県:肝属郡
日本歴史地名大系
隅郡に分離したため、大根占郷三ヵ村は南大隅郡所属となった。同二二年の町村制施行により大根占村が成立。同二九年の郡区画改正により南大隅郡と肝属郡が合併して肝属郡と
27. おおねだいらいせき【大根平遺跡】愛知県:北設楽郡/津具村/上津具山方村
日本歴史地名大系
[現]津具村中口 通称大根平とよばれる山陵上平坦地に位置する。標高約七五〇メートル。縄文時代早期から弥生時代中期にわたる遺跡。主体は縄文中期にあり、径四―五メー
28. おおねだむら【大根田村】栃木県:芳賀郡/二宮町
日本歴史地名大系
[現]二宮町大根田 五行川を挟み石島村の東方左岸(一部右岸)に位置し、北は沖村。延徳四年(一四九二)一〇月二日の宇都宮成綱等寄進状写(小田部庄右衛門氏所蔵文書)
29. おおね‐ば[おほね‥]【大根葉】
日本国語大辞典
五・二「さねかづらを大坂にてはびじん草といふ。京にては大根(だいこん)ばといふ。大坂にては、おほねばといへり」大根の葉。《おおねば》大阪†002 沖縄†039
30. おおね‐ひき[おほね‥]【大根引】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんひき(大根引)」に同じ。*俳諧・俳諧古今抄〔1730〕上・再撰貞享式・三「大根引 此詞は冬の当用なり。大根(たいこ)と略して音語に読むべし。京家
31. おおね-ふとき【大根太木】
日本人名大辞典
?−? 江戸時代中期-後期の狂歌師。安永-天明(1772-89)ごろの人。江戸飯田町にすみ辻番請負を業とした。唐衣橘洲(からころも-きっしゅう)らと狂歌会をひら
32. おおねぶむら【大根布村】石川県:河北郡/内灘町
日本歴史地名大系
[現]内灘町大根布・大根布一―八丁目・大学一―二丁目・大清台 河北潟南部、同潟と日本海に挟まれ、砂丘を背に潟に面して細長く集落を形成する。南は本根布村、北は宮坂
33. おおね‐ほぞ[おほね‥]【大根〓
日本国語大辞典
〔名〕断面がたてに長い長方形の〓(ほぞ)。おおねぼそ。ひらほぞ。おおね。〔日本建築辞彙{1906}〕
34. おおねむら【大根村】群馬県:新田郡/新田町
日本歴史地名大系
[現]新田町大根 北は大村、東は金井村、南は上田中村。村域は大間々扇状地藪塚面の扇端部とその南方の沖積地を占め、矢太神・みのがいと・団蔵坊などの自然湧水がみられ
35. おおねむら【大根村】千葉県:佐原市地図
日本歴史地名大系
[現]佐原市大根 下総台地北部に位置し、北は牧野村、西は大崎村・長山村。集落は台地上に形成され、水田は北流する香西川の谷に広がる。中世の香取社領相根村に比定され
36. おも‐ば【大根葉】
日本国語大辞典
〔名〕大根の間引菜(まびきな)。おねば。*雑俳・五色墨〔1809〕「肝出して・大根葉(オモバ)一文直切る嫁」
37. だいこ‐おろし【大根卸】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんおろし(大根卸)」の変化した語。*滑稽本・浮世風呂〔1809~13〕四・下「かんじんの大根(ダイコ)おろしといふ所が大根がない」*人情本・閑情末
38. だいこ‐じめ【大根注連】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんじめ(大根注連)」の変化した語。*合巻・正本製〔1815~31〕九「をを、さいはひの此だいこじめ中へ短刀つっこんで」*東京年中行事〔1911〕〈
39. だいこ‐づけ【大根漬】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんづけ(大根漬)」の変化した語。《季・冬》(1)たくあん漬け。《だいこづけ》秋田県雄勝郡130 山形県139 三重県志摩郡585 《でえこづけ》長
40. だいこ‐ばたけ【大根畑】
日本国語大辞典
【一】〔名〕「だいこんばたけ(大根畑)【一】」の変化した語。*俳諧・五老文集〔1693か〕「木曾やしき大根畑のしぐれかな」*咄本・座笑産〔1773〕占「うば、な
41. だいこ‐ひき【大根引】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんひき(大根引)」の変化した語。《季・冬》*俳諧・毛吹草〔1638〕二「九月 〈略〉大根引同干」*雑俳・辻談義〔1703〕「ひき抜て・尻もちをつく
42. だいこ‐まま【大根飯】
日本国語大辞典
〔名〕(1)大根の細切りを炊き込んだ飯。《だいこまま》兵庫県加古郡664 《だいこかて〔大根糅〕》青森県三戸郡083 (2)大根と稗(ひえ)を混ぜた飯。《だいこ
43. だいこ‐やくしゃ【大根役者】
日本国語大辞典
〔名〕「だいこんやくしゃ(大根役者)」の変化した語。〓[ヤ]
44. だいころし【大根卸】
日本国語大辞典
〔名〕(「だいこんおろし」が「だいこおろし」と変化し、それがさらに変化した語)「だいこんおろし(大根卸)」に同じ。
45. だいこん‐あし【大根足】
日本国語大辞典
〔名〕大根のように太くて、ぶかっこうな足。特に、女性の足についていう。*彼女とゴミ箱〔1931〕〈一瀬直行〉浅草の生んだ話・机に凭かかった十二階「幕の外へ出てき
46. ダイコンアブラムシ
日本大百科全書
昆虫綱半翅はんし目同翅亜目アブラムシ科に属する昆虫。無翅の雌成虫で体長約1.8ミリメートル。体は暗黄緑色ないし濃緑色で、ろう質の白粉で覆われる。触角は短い。体の
47. だいこん 洗(あら)う
日本国語大辞典
取り入れた大根を漬け物にするため、川の水などで洗う。《季・冬》*寒山落木〈正岡子規〉明治二六年〔1893〕冬「夕月に大根洗ふ流かな」
48. だいこん‐いも【大根芋】
日本国語大辞典
〔名〕(芋の形が大根に似ているところから)植物、ながいも(長芋)。《だいこんいも》山形県西置賜郡・南置賜郡139 新潟県佐渡348 《だいこいも》秋田県鹿角郡1
49. だいこん 祝(いわ)う
日本国語大辞典
大根を飾りものとして正月を祝う。《季・新年》*俳諧・増山の井〔1663〕正月「歯固 もちゐかかみ、鏡餠、大根いはふ」*俳諧・をだまき(元祿四年本)〔1691〕四
50. だいこん‐うり【大根売】
日本国語大辞典
〔名〕大根を売り歩くこと。また、その人。*浮世草子・傾城禁短気〔1711〕三・一「大根売(ダイコンウリ)・駕籠舁・日雇取の娘」
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