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風の又三郎

ジャパンナレッジで閲覧できる『風の又三郎』の日本架空伝承人名事典・日本人名大辞典・日本大百科全書のサンプルページ

新版 日本架空伝承人名事典
風の又三郎
かぜのまたさぶろう
 宮沢賢治の童話『風の又三郎』(生前未発表)の主人公、高田三郎。三郎は、鉱石会社の技師である父の転勤で東北のある谷間の小学校分教場にやってきた。都会育ちらしく洋服を着、赤毛で色白く標準語を話す。三郎が転校してきた日は九月一日、二百十日のこと。三郎が席につき、四囲を見回すと風がどうっと吹いてくる。村の子供たちは、三郎が風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑う嘉助と、そうではないと見る一郎とに分かれ、揺れ動く。現実の三郎は、生意気で理屈っぽい都会の子だが、「風の又三郎」だとあだ名されると、そこに自分の立場を認め、自ら「風の又三郎」を演じ、村の子供たちに同調し一体化する。が、三郎は、村の広い野原や川などで遊ぶうちに次第に自然への畏怖感を募らせる。「どっどど、どどうど、どどうど、どどう/青いくるみも吹きとばせ……」。一郎は夢の中で三郎の歌を聞き、あわてて学校に行くと、三郎は父親と共に村を去っていた。この日も風が強く、子供たちは「やっぱりあいづは風の又三郎だったな」と不思議な感じになる。
 「風の又三郎」は、新潟から東北一帯にかけて広まる風の神(妖精)「風の三郎」伝承から生み出されたと見られる。また定住生活者の現実の枠組みを、移動生活者がゆるがして去る主想(モティーフ)は、現代思想の達成の一つ「遊牧民的生活(ノマディスム)」に通底していよう。
[安宅 夏夫]
 変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけきちんと腰掛けてゐます。
 そのとき風がどうと吹いて来て教室のガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萓や栗の木はみんな変に青じろくなってゆれ、教室のなかのこどもは何だかにやっとわらってすこしうごいたやうでした。すると嘉助がすぐ叫びました。「あゝわかったあいつは風の又三郎だぞ。」
風の又三郎


日本人名大辞典
風の又三郎
かぜの-またさぶろう
宮沢賢治の童話「風の又三郎」の主人公。
山奥の小学校に9月1日(二百十日)に転校してきた高田三郎は,嘉助や一郎ら村の子どもたちから風の神の子「風の又三郎」ではないかとうたがわれ,おそれられる。子どもたちの謎はとけないまま,ある日,三郎は風のようにさっていってしまう。


日本大百科全書(ニッポニカ)
風の又三郎
かぜのまたさぶろう

宮沢賢治の童話。生前未発表。1924年(大正13)ごろ書かれた『風野又三郎』を土台に『種山ヶ原』『さいかち淵 (ぶち)』などの初期童話を組み込んで32年(昭和7)ごろにほぼまとめられた。9月1日の朝、山奥の小学校分教場にやってきた転校生高田三郎を、村童たちは風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑い恐れる。授業風景や、日曜に上の野原へ遊びに行き、逃げた馬を追って道に迷う冒険、放課後のブドウ取りや水泳と、日を追ってエピソードが進行するうちに、子供たちの気持ちは、高田三郎を又三郎とみる嘉助 (かすけ)と、そうでないとみる一郎の間で揺れ動くが、三郎はまもなく去ってしまう。自然とともに息づくような表現によって地方色豊かに造型された少年文学の傑作。

[天沢退二郎]

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1. 風の又三郎
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た。9月1日の朝、山奥の小学校分教場にやってきた転校生高田三郎を、村童たちは風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑い恐れる。授業風景や、日曜に上の野原へ遊びに
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4. かぜのまたさぶろう【風の又三郎】
日本架空伝承人名事典
村の子供たちは、三郎が風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑う嘉助と、そうではないと見る一郎とに分かれ、揺れ動く。現実の三郎は、生意気で理屈っぽい都会の子だが
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「風の又三郎」の情報だけではなく、「風の又三郎」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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