宮沢賢治の童話。生前未発表。1924年(大正13)ごろ書かれた『風野又三郎』を土台に『種山ヶ原』『さいかち淵 (ぶち)』などの初期童話を組み込んで32年(昭和7)ごろにほぼまとめられた。9月1日の朝、山奥の小学校分教場にやってきた転校生高田三郎を、村童たちは風の神の子供「風の又三郎」ではないかと疑い恐れる。授業風景や、日曜に上の野原へ遊びに行き、逃げた馬を追って道に迷う冒険、放課後のブドウ取りや水泳と、日を追ってエピソードが進行するうちに、子供たちの気持ちは、高田三郎を又三郎とみる嘉助 (かすけ)と、そうでないとみる一郎の間で揺れ動くが、三郎はまもなく去ってしまう。自然とともに息づくような表現によって地方色豊かに造型された少年文学の傑作。
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