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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアの古典・名著がズラリそろって、その数なんと850点余! 後世にぜひ引き継いでいきたい、まさにアジアの文化遺産なのです。

そんな珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、あなたを面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫
『占術大集成 1、2 古代インドの前兆占い』(ヴァラーハミヒラ著、矢野道雄・杉田瑞枝訳注)

2013/01/17
   この1年、はたしてどうなる?
6世紀のインドの“占術”で占ってみよう

 家族揃って浅草寺に初詣に出向いたが、おみくじを引くと4人中3人が「凶」……。正月早々、出端をくじかれたので、占い直し(?)をすべく、あらためて東洋文庫で占いをしてみることにした。占いと東洋文庫なんて関係なさそうに思えますが、あるんです、『占術大集成』という古代インドの全2巻の大著が!

 これは、500年代に宮廷占星術師によって著されたもの。しかしお馴染みの占星術というよりは、目に見える物事から吉兆を判断するという占いだ。太陽や月、惑星の動きを見るのは占いでは当たり前だが、この本が面白いのは、森羅万象に吉兆を見ることだ。

 一例をあげると、〈虹の相〉、〈身体の相〉、〈神殿の相〉、〈犬の相〉、〈真珠の相〉、〈ベッドと椅子の相〉、〈象の振舞い〉……と、百科事典と見紛うようだ。

 早速、気になるタイトルを繰ってみる。「男の相」というぴったりの占いがあるのでみてみると……。


 〈二筋、三筋、四筋の水流で、右回りの回転をする尿を放つと王になると知るがよい。拡散する尿なら財産を失う〉


 どんなものにも吉兆をみるというのが、この占いの真骨頂だが、まさか「尿」とは……。尿を発するところのカタチ占いなんてぇのもありますが、さすがに自粛。

 ジャパンナレッジ「ニッポニカ」によれば(「占い」の項)、〈占いの目的〉は次の3つだという。

①〈真実の探求〉 ②〈選定・選択〉 ③〈未来の予測〉

 だとすれば尿占いも〈真実の探求〉であり、これによって正しい〈選定・選択〉がなされるということか。

 しかし私が知りたいのは“希望”である。「今年も大丈夫!」という明るい希望だ。探したらありましたよ、“希望”となりえるものが。以下、列挙します。


 〈思いやりのある振舞いこそが人に愛されるもとになる〉

 思いやり……長らく忘れてました。

 〈自惚れを打ち捨てると愛されるようになる〉

 要らぬプライドは捨てろ、ということですな。

 〈枯れ草に覆われていても火は燃え盛るように、美徳は隠れていても大きくなる〉


 何だか説教クサイ文言が並びましたが、「運」というのは「スピリチュアル」ではなく、「行動」に裏打ちされる、ということなんでしょうな。さ、この1年、“枯れ草の下の美徳”で乗り切りますか。

今週のカルテ

ジャンル実用/風俗
時代 ・ 舞台500年代のインド
読後に一言運勢……ようは気の持ちようということで。
効用古代インドの社会が垣間見られます。
印象深い一節

名言
(占星術師にとっての)良い性質とは、清潔さ、器用さ、大胆さ、正しい言葉使い、頭脳の明晰さ、場所と時を知ること、心の清浄さ、人の集まりを恐れないこと、学友によって負かされず、よく勉強し、快楽にふけらず……(占星術師の玉条)
類書同時代の南インドの箴言集『ティルックラル』(東洋文庫660)
本書より前の時代のインド社会規範の書『ヤージュニャヴァルキヤ法典』(東洋文庫698)
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