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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアの古典・名著がズラリそろって、その数なんと850点余! 後世にぜひ引き継いでいきたい、まさにアジアの文化遺産なのです。

そんな珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、あなたを面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫
『抱朴子 内篇』(葛洪著、本田濟訳注)

2014/07/31
   学んだら仙人になれる!?
4世紀中国の仙道の集大成本

 あぁ、仙人になりたい……。


 前回の続き、というわけではありませんが、「仙人になるためにはどうしたらよいか」が書かれた『抱朴子 内篇』が東洋文庫にラインナップされているので、今回はこれを元にとことん、仙人への道を探ってみたい(本気です)。だって仙人になったら、こんな感じですよ!


 〈仙道を会得した人は、雲の上に飛び上がることもできれば、川や海の底にもぐることもできる〉


 著者の葛洪(かっこう)は、4世紀に活躍した〈中国、東晋の思想家〉で、〈早くから神仙導養の術を好み、従祖の葛玄(葛仙公と号した)の弟子鄭隠(ていいん)から煉丹(れんたん)の秘術を学んだ〉(ジャパンナレッジ「世界文学大事典」)人物だ。

 で、この『抱朴子 内篇』を貫いているのは、「仙道・仙人は実在する!」という強い信念だ。たいていは、それが知識人であっても、〈世渡りの才と当世向きの小技の持ち主で、啓蒙的な書物を一渡り見て、それでもって手近な常識を料理し……〉、仙人の存在を認めない。このことを葛洪は強く批判するわけです。で、ここがポイント。


 〈神仙道は学ぶことができる!〉


 解説によれば、〈仙人学んで至るべしという理論は、ほとんど抱朴子の独創的な理論〉だそうだ。どうです? 仙人への道が見えてきましたね。

 さあ核心です。仙人になるには、どうしたらいいか。


(1)〈精を惜しむこと(房中術)〉

(2)〈気をめぐらすこと(呼吸法)〉

(3)〈一種の偉大な薬(金丹)を飲むこと〉


 〈すぐれた師匠に会わず、努力を重ねなければ、急には知り尽くすことはできない〉との但し書きはありますが、この3つ、〈それだけで事足る〉のだそうです。

 (1)は男女の交合です。しすぎてもいけないが、しないのもいけない。達人になると、交合しても精を出さず、逆に相手の精を取り込むことができるんだそうな。(2)は呼吸法。これも無駄に吐き散らしちゃいけない。(3)は錬金術の世界ですからねぇ。うむ……。

 〈それだけで事足る〉といっても、さすがにこれは難しい。しかし葛洪、こう断言しています。


 〈求めても得られぬことはあっても、求めないで得られることは絶対にない〉


 〈求めても得られぬこと〉を恐れては前に進めない。ならば求めよ。真理ですな。……はい、身に染みます。

今週のカルテ

ジャンル実用/宗教
時代 ・ 舞台4世紀の中国
読後に一言望んでいるだけでは何も手に入らない、ということなのでしょう。
効用これ以上の仙人本はありません。
印象深い一節

名言
太陽のように明らかな事でも、人は伏せた甕の下につっこんでおく。これではどうして真理をつかめよう?(「巻二 論仙」)
類書本書の姉妹編ともいえる儒書『抱朴子 外篇(全2巻)』(東洋文庫525、526)
仙人も多く登場する同時代の怪異小説集『捜神記』(東洋文庫10)
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