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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

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『大運河発展史 長江から黄河へ』(星斌夫訳注)

2016/04/28
アイコン画像    ゴールデンウィーク前に振り返る
中国の“水運”の歴史

 そろそろゴールデンウィークが始まりますが、気になって調べてみると、〈昭和二六年(一九五一)五月初め、映画「自由学校」が正月やお盆興行よりもヒットしたため〉、〈大映専務(当時)の松山英夫〉が、〈この週間を「ゴールデンウィーク」と命名した〉のが最初だそうです(ジャパンナレッジ「日本国語大辞典」)。〈ラジオで夕刻七時から十時までの最も聴取率の高い放送時間〉を「ゴールデンタイム」といいますが、それに倣っての命名だとか。いわば和製英語。これが定着するのですから、日本語というものは面白いものです。

 計画が苦手な私は、GWが近づくと慌てだし、結局どこにも行かなかった、という無作為な休日を毎年のように繰り返していますが、よく考えてみると、GWを支えているのは極度に発達した交通網です。それでは、ということでその交通網のひとつ――水運に絞った本書『大運河発展史 長江から黄河へ』を紐解いてみることにしました。これは、研究者の意地が見られると申しますか、労作と言いますか、中国の元史、明史、清史の河運・海運に関する記録を訳出したものなのです(こういう地道な作業が、知識として共有されていくのです)。


 〈海運は、農民にとっては陸運する労苦がなく、しかも国には富の儲蓄を齎(もたら)すという利があった。これがどうして元一代の良法でないことがあろうか〉(元史巻九三、食貨一、海運)


 という具合に、その始まりから、発展、労苦、問題点、弊害……と水運の記録が訳出されていきます。抜き出しているのでわかりにくい箇所はありますが、そこは注釈でフォローするという丁寧な仕事ぶりです。


 〈大運河は、国内すべての水系の中心、舟運の大幹線としての役割をもち、人と物とを、国内はもちろん、国外とも交流する水路であった〉


 と著者(訳注者)は解説で断言しますが、こうした国家的大事業なくして人と物の“交流”があり得なかったのは事実でしょう。一方で、つくったものは保持・修繕しなければなりません。本書にも船の修理規定などが登場しますが、水運も陸運も、つくるだけでなく維持しなければなりません。わが家の前の道も、先日から工事をしていますが、「不便だ」と思わずに、「維持してくれてありがとう」と言わねばなりませんね。ま、今年のゴールデンウィークも、水運も陸運も空運も利用しませんが……。



本を読む

『大運河発展史 長江から黄河へ』(星斌夫訳注)
今週のカルテ
ジャンル政経/歴史
時代 ・ 舞台元~清・中国
読後に一言次代に知識を繋げていくという姿勢は好きです。
効用元から清の流れを、水運という切り口で見ていく。その面白さをどうぞ。
印象深い一節

名言
海運は元代に始まる。(清史稿巻一二八)
類書アラブ商人の事蹟からみる中国交易史・文化史『蒲寿庚の事蹟』(東洋文庫509)
明代の科学技術『天工開物』(東洋文庫130)
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