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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

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『漢書五行志』(班固著、冨谷至・吉川忠夫訳注)

2017/02/09
アイコン画像    なぜ世界は乱れるのか――
五行が警鐘を鳴らすトップの振るまい

 2017年1月20日――この日は、しかるのちに「あの日からだった」と歴史に刻まれるかも知れません。そう、ドナルド・トランプが第45代米国大統領に就任した日です。

 氏は就任演説で、〈保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながる〉、〈自分たちの利益を最優先にする権利がある〉と口を尖らせ、〈アメリカを再び偉大にします〉と胸を張りました(NHK NEWS WEB「トランプ大統領就任演説 日本語訳全文」/1月21日)。

 いったいこれから、どんな世界になるのでしょうか。

 「漢書」は、〈前漢の歴史を紀伝体で記した〉(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」)正史のひとつですが、その中の1冊、『漢書五行志』によれば、世界は、〈「木」「火」「土」「金」「水」〉の5つから成り立っている(五行)そうです。で、災害などをこのように定義づけます。


 〈災害や怪異の現象は、人間の悪徳や悪行が五行のバランスを乱し、世界なり自然なりの秩序を混乱させるために発生する〉


 つまり国のトップがダメだと国がおかしくなる、というんですね。本書は、いってみれば、そういう事例をこれでもかと掲載している本なのです。

 はっと辺りを見回すと、世界各国のトップは、「暴君」と呼びたいような人ばかりです(暗愚と呼びたい人もいます)。すると世はどうなるか。

 『漢書五行志』は次のように言います。


 〈上に立つものが聡明でなく、暗愚で心がおおわれていると、善悪を見わけることができず、近習を親愛し、同類の輩を増長させる〉


 まさに隣国・韓国で起こっていることですし、米国ではすでにトランプ大統領の「政治の私物化」が批判されています(そういう日本だって、首相の実弟が外務副大臣を務め、内閣にも「お友達」が何人もいます)。『漢書五行志』の立場に立てば、この世界はますます荒れます。

 救いがあるとするなら、すでに各国で声が挙がり始めていることです。トランプ抗議デモ主催団体によれば、反トランプデモに、〈世界約80カ国の670カ所で、約480万人(日本時間23日午前1時現在)が参加した〉そうです(朝日新聞デジタル/2017年1月23日)。さらに言うなら、『漢書五行志』が紹介する愚者のリーダーの末路は、皆、悲惨です。天が許さないのです。天が罰するはず……と考えるのは、あまりにも能天気でしょうか。



本を読む

『漢書五行志』(班固著、冨谷至・吉川忠夫訳注)
今週のカルテ
ジャンル思想/歴史
時代 ・ 舞台紀元前の中国
読後に一言「読み物」としてみるならば、頻出する〝怪異現象〟の記述にそそられました。
効用五行の考え方が、意外と日本にも根付いていることに気づかされます。
印象深い一節

名言
五行とは、一に水、二に火、三に木、四に金、五に土。(「五行」)
類書古代中国の思想『古代中国研究』(東洋文庫493)
中国の宗教観『中国人の宗教』(東洋文庫661)
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